ハイランドに存在する14の蒸留所で造られたシングルモルトだけをブレンドしたウイスキーがあります、それがザ・グラッドストンアクスのアメリカンオークです、ヴァッティング後にバーボンカスクで再熟成しています。
モルトブレンデッドウイスキー自体が数少なくアイラモルトだけというのは割と人気があるのですが、あえてハイランドモルトだけというのが非常に興味深いです。
私はショットバーで一度飲んですっかり虜になってしまいました、なんといってもエッセンスが多いのです、スモーキー以外と限定するとウイスキーの持つ全てのエッセンスが詰まっているのではないでしょうか。
香りはモルティでバニラのような甘い香りがします、飲み始めは甘みの中にスパイシーさも加わりフィニッシュにほのかにビターを感じます、またグラスに注いで時間が経つとフルーティな香りに変化します、さらにちょっと水を足してトゥアイスアップにするといきなりマイルドでスムースな味に変化します。
よくできたウイスキーなのですが価格が4,000ほどで買えるというリーズナブルな価格も嬉しいです、姉妹品にブラックアクスがありこちらはアイラモルトとハイランドモルトのモルトブレンデッドになりスモーキーでスパイシーな風味に仕上がっています、アイラモルトが好きな人にはブラックアクスがお薦めです。
横道ですが、ボトルの向かって左側だけにえくぼのような凹みがあります、注ぐ時にちょうど親指がすっぽり入ってしっくりします、飲み手の配慮が嬉しいボトルでもあります。
昨年8月に国産ウイスキーが店頭から消え在庫のある多くの国産ウイスキーが値上げしていると伝えましたが、来月4月にまた平均で30%程度の値上げが行われることが解りました。
ショットバーや居酒屋にお酒を卸している業者の告知書を先日行きつけのショットバーで見せてもらいましたが、この2年間で都合3度目の値上げとなり1年前の価格に対して倍以上になっている銘柄さえあります。
現在では既に多くの国産ウイスキーメーカーではシングルモルトのカスク原酒が枯渇しています、更にはシングルグレーンのカスク原酒も枯渇しているという情報があります、つまり何をしても国産のウイスキーが作れない状況になっているのです。
オークションサイトでも信じられない価格で売買されています、ショットバーやクラブでは業者から手に入らないのでオークションサイトで高額でも何とか手に入れているといいます。
私のように手に入らなければ別のもので代用しようということはお酒をビジネスにしている人には通じません、お客さんからの要望で何としても手に入れなければ売り上げにならないからです、国産が無いからスコッチやアイリッシュで代用というわけにはいかないのです。
何に使うのでしょうか、オークションサイトには国産シングルモルトの空瓶が大挙して出展されています、いったいこの状況はいつまで続くのでしょうか、手軽に本物の国産シングルモルトが飲める日が早く戻ってくることを願うばかりです。
昔から疑問に思っていることがあります、それはウイスキーは瓶の中でも熟成が進むのかということです。
行きつけのショットバーでも結構な話題になるようなので疑問に思うのは私だけではないようです、でも事実はどうなのでしょう?
そこで昔実際に実験してみたことがあります、常飲のボトルを5年ほど放置して新しいボトルを買ってきて飲み比べてみたのです。
結論から言うと封を開けていなければ5年程度だと「同じ味がした」です、つまり瓶の中では確かに樽から染み出した若干の有機物が入っているので熟成が進むとは思うのですが数年では味が変わるほどの変化は無いようです。
ただし20年とか置いておいたら味や香りは若干ながらも変化すると思います、熟成が進むのですから角が取れてマイルドになると思います。
でも逆の考え方もあります、それは瓶の中でアルコールの連鎖結合が進み辛く感じるようになるというものです、しかしこれも理論は合っていますが実際にどうなるかは解りません。
ただウイスキーなどのスピリッツ(蒸留酒)は醸造酒と違い温度や年数による変化が少ないので保存が楽なので助かります、ワインや日本酒では保管方法が悪いと確実に味が変わります。
ここで瓶に詰めた状態で海底熟成という貯蔵法を売り物にしている焼酎があるのですが、これは本当に美味しく熟成するのでしょうか、こればっかりは自分では実験できないので何とも言えません。
もう一つはっきり経験で言えるのですが、ブレンデッドウイスキーは確実に20年以上経つと味に変化が起きるようです、おそらくブレンデッドウイスキーでは当たり前のように品質保持の目的で使われるカラメル着色剤にその原因があるように思います。
アイラモルトファンは私に限らずほとんどの人の飲み方は60度近くのカスクストレングス(樽出し原酒)でもストレートかロックです、勿論アルコール度数の高いものはチェイサーとコンビで頂きます。
アイラモルトをハイボールや水割りで飲む人もたまに見受けますが、この人はアイラモルト独特の味と香りを楽しんでいるアイラファンではなく、押しなべていうところのウイスキー好きな人ではないかと思います。
さてそんな私も食事の際などにビールでお腹が張ってくるとウイスキーや焼酎の水割りに切り替えます、そんなときのウイスキーはブレンデッドかもしくはバーボンです。
私個人的な嗜好ですが、水割りで飲む際にはピーティでドライな辛口ウイスキーよりもまろやかな口当たりのマイルド系のウイスキーのほうが断然合うと思います。
その意味でいうとシーバスリーガルやデュワーズなどはグレードが高い割には価格もリーズナブルで口当たりもよく最適なウイスキーではないかと思います、逆にジャパニーズウイスキーはドライ系なのでストレートかロックで飲むほうが美味しいのではないかと思います。
和食が好みの人はドライ系のジャパニーズウイスキーのハイボールや水割りが好きな人が多いのですが、私は外食する場合には味や香りが強いイタリアンかエスニック系が多いのでマイルドな方が食事もお酒もどちらの味も壊さなくて合うと思うのです。
まあ好みは人それぞれですから何でもいいのですが、いろいろ試してより美味しいものを探す楽しみは人生をより充実したものにするのではないかと思います、何故なら何をしても人生は一度きりで天から与えられた時間という限りがあるのですから。
スコッチウイスキーファンにとってバーなどで何かと話題に上がるUD社(ユナイテッド・ディステラリーズ=現ディアジオ社)の「花と動物シリーズ」ですが、現在では継続的にリリースしている11銘柄意外は手に入らない幻のスコッチとしてあまりにも有名です。
当時UD社はハイランドやスペイサイドを中心に多くの蒸留所を手中に収めていた最大規模を誇るウイスキーメーカーですが、そのほとんどの蒸留所はブレンデッド用に作られるウイスキーでありオフィシャルシングルモルトとしては販売していませんでした。
そこで、それぞれの蒸留所で作られたシングルモルトを世界中の人に届けようとシリーズ化し、これがスコッチファンの心をくすぐるには充分で大当たりをしたのです。
「花と動物シリーズ」は1991年に22種、2001年に4種と全26種類発売されましたが、現在でも11種だけは継続的に毎年リリースされており入手可能ですので是非とも特徴的な各蒸留所の味を楽しんでほしいと思います。
1991年発売の「花と動物シリーズ」は以下になります。
・アバフェルディ15年
・インチガワー14年 ○
・オルトモア12年
・カリラ15年
・クライゲラキ14年
・クライヌリッシュ14年
・グレンダラン12年
・グレンロッシー10年 ○
・スぺイバーン12年
・ダフタウン15年
・ダルユーイン16年 ○
・ティーニニック10年 ○
・バルメナック12年
・ピティヴァイク12年(1993年に操業停止)
・ブラッドノック10年
・ブレアアソール12年 ○
・ベンリネス15年 ○
・マノックモア12年 ○
・モートラック16年
・リンクウッド12年 ○
・ロイヤルブラックラ10年
・ローズバンク12年(1993年に操業停止)
また、2001年発売の「花と動物シリーズ」は以下になります。
・オスロスク10年 ○
・ストラスミル12年 ○
・グレンエルギン12年
・グレンスぺイ12年 ○
※銘柄の最後にある○印は現在でもリリースが継続されている銘柄で通常購入が可能です、ただしリリース年度により価格が大幅に異なるので最近リリースしたリーズナブルなものを購入することをお勧めします、目安として9,000円前後ならほぼ最近のリリース年度だと思いますのでお買い得です。
尚、「花と動物シリーズ」はその名のとおりで各蒸留所にちなんだ花か動物がラベルに描かれており、ずらっと並べると何とも言えない雰囲気があります。
当時私はショットバーの経営に参画しており、この「花と動物シリーズ」全種を並べる為に壁に穴を開けて専用のラックを作ってもらったほどです。
尚、リリースが終了した銘柄や閉鎖した蒸留所のものもプレミアムリカーショップやオークションなどでも手に入りますので、元気のある人は是非全26種をコレクションしてみるのは如何でしょうか。
私は閉鎖蒸留所銘柄や昔親しんでいた銘柄を探しては購入しています、価格は最低でも当時の10倍以上ですが、何とか無理の無い範囲で入手できて最も元気だった頃に親しんだ味を再度堪能できるのであれば幸福なことだと考えています。
ちなみに閉鎖蒸留所のローズバンクとピティヴァイクはプレミアムリカーショップで現在20万円以上です、オークションだと10万円以下で落とせるとは思いますが保存状態は保障されません。
現存のリリースが継続している銘柄もいつ終了するか解りません、終了と同時に一気に値上がりしてしまいますので、買える時に買って飲んでおくことをお薦めします、ボトルが空になっても記憶の中に味と香りはしっかりと生き続けます。
閉鎖蒸留所のローズバンクの幻のローズバンク12年
閉鎖蒸留所のピティヴァイクのピティヴァイク12年