2015年ごろから再び日本ではウイスキーブームが沸き起こっているようですが、そんな時代を反映してか一部のファンの間では70年代から90年代に多種多量に製造販売されたアンティークウイスキーのニーズが高まっているようです。
70年後半から90年前半には大手メーカーやボトラーを中心にファッションブランドや陶器を使った限定ボトル、またユニークでお洒落な形をしたガラス細工のようなボトルのウイスキーが多品種誕生し日本中に出回っていました。
現在のウイスキーブームは蒸留所オリジナルのシングルモルトですからどのウイスキーも同じような形状のボトルです、ところが当時のブームはブレンデッドウイスキーが主で味とか香り云々よりも他者差別化を意識した個性的でド派手なボトルが多かったのです。
まさに80年代後期は同じものなら高いものほど飛ぶように売れた超が付くほどのバブリーな時代です、世界中のウイスキーメーカーが凝ったものを作れば高く買ってくれる日本向けに次々と限定品を作っては日本のデパートや酒類商社が大量に輸入したのです。
そして主に贈答用として買われ、貰った方は高価な記念品だからと飲むこともなくそのまま押入れで長い期間眠っていたというわけです。
そんな個性的でユニークなボトルのコレクションや懐かしいバブリーな昭和気分を味わいたいというニーズが近年急速に高まり、現在のようなアンティークウイスキーブームとなったのだと思います。
ということでざっとネットで調べてみました、有名どころのリサイクルショップやリカーショップでは「古酒高値買取り」の表示がしっかり出ています、会社の倉庫や家に眠っていた遺品を取りに来てくれてその場で現金一括購入してくれるのですから処分に困っていた会社や家では大助かりでしょう。
ブレンデッドウイスキーは良品でも当時の販売価格の20~30%程度の買取り額です、私もそうですが海外出張や海外旅行のたびにいつかは飲むだろうと高価で珍しいウイスキーを免税店で見つけては買ってきても結局飲まずに放置されているものが多いです。
方やシングルモルトはどの年代のものでも恐ろしく高額で買い取ってくれます、シングルモルトはそもそも製造数が限られており、更にはクラブやショットバーで仕入れられ次々に消費されていったので基本的に現存数が極めて限られており世界的にみても希少価値があるからです。
ところで私はこのアンティークウイスキーブームは非常に好ましく思っています、何故なら飲まれることもなく自然蒸発で液減して古くなったと捨てられていくような古ウイスキーが、30年以上も経ってのブームのおかげで世に出回り人に飲まれることによってウイスキーとして生まれた使命をまっとうさせてあげられるからです。
ショットバーでもアンティークウイスキーブームを反映してか70年代から90年代の懐かしいボトルを数本置いている店も出始めました、当時のブレンデッドウイスキーは押しなべてハニートーストのような香りがするマイルド系で、どれを飲んでも今のウイスキーではけっして味わえないトロンとしたスコッチケーキのような甘い風味を感じます。
このトロンとした風味の原因の一つにはブレンデッドウイスキーは品質維持の目的で必ずカラメル着色が施されています、同じブランドのウイスキーで買った時期によって色が異なっていては偽物かと疑われてしまうからです。
ブレンデッドはその性格上、製造の都度手に入る蒸留所の原酒をブレンドしますので製造時期によって色も味も若干異なるのです。
このカラメル着色剤の原材料は砂糖で色の濃さによって5種類に分類されています、このカラメル着色剤が長い期間をかけて瓶の中で熟成し何ともいえないトロンとした甘い風味が生まれるのだと思います。
私がよく通う一番古い30年以上も営業しているショットバーのマスターは私よりも2歳上の先輩です、私同様に自宅に何本もストックしていたアンティークウイスキーを1年ほど前から順次出すようにしています。
驚くことに1ショットでどれも1,000円ほどです、当時の購入価格の相対価格は現在相場で換算すると5倍以上にもなりますが、相対価格ではなく当時の購入価格をそのままベースに価格設定しているそうです、なんとも太っ腹なサービスに感謝の気持ちしかありません。
私も何本かストックしているものがありますので順次記録として本ブログでアップしていこうと整理を始めました、アンティークウイスキーブームのおかげでクローゼットの手付かずだったダンボール箱がやっと整理できます、スタッフと一緒に狂乱乱舞のバブリーだった昭和の味を楽しむことにしましょう。
ちなみに近年の日本におけるアンティークウイスキーブームの火付け役は中国人バイヤーだという噂を耳にしました、つまり本国の裕福層がバブリーだった頃の日本で売られていた超高級ウイスキーを手に入れて飲んでみたいというニーズが広がったことに端を発しているといいます。
その巨大な需要を満たす目的で中国人バイヤーが日本でアンティークウイスキー買取専用のビジネスを始めたのです、このビジネスの大成功を受けて日本の他のリサイクルショップでも買取販売を手がけるようになり急速に広がっていったということのようです。
幾つかの買取業者では空瓶や箱だけでも引き取ってくれるようですが、何か怪しさを感じざるを得ないのは私だけでしょうか、そしていつかは日本の会社や家庭に眠っていたアンティークウイスキーが枯渇します、そのときにいったい何が起きるのでしょうか。
少なくてもアンティークウイスキーを飲んでみたい人は信頼できる酒専門店で買いましょう、ブレンデッドのスタンダードボトルであれば概ね6,000円からハイエンドの特級品でも3万円ほどです。
シングルモルトであればどんな銘柄でも概ね1万円以上で人気銘柄は5万円から50万円です、更には閉鎖蒸留所ものやマッカランなどのプレミアムウイスキーは100万円を超えるものも普通に存在しています。
アンティークウイスキーが飲めるのは今のうちだけです、飲みたいときには枯渇して恐ろしい価格になっているかもしれません、「アンティークウイスキー、飲みたいときには既に無し」ということをお忘れなく。