
シングルモルトウイスキービギナーに多いのがブレンデッドはウイスキーとして格下だという偏見です、でもこの記事を読んだら明日から少しはブレンデッドウイスキーを見直すようになるでしょう。
まずシングルモルトに比べてブレンデッドの価格が押しなべて低価格に設定できるのはシングルモルトに対して比べ物にならないほど大量生産しているからです、この理由はカスク原酒の在庫数などに応じて調合バランスを調整できるからに他なりません。
決してウイスキー種的に格下ということではありません、事実カスクの変更によって味も香りもガラッと変わるシングルモルトよりも長期間安定した味と香りの維持に努力していながらリーズナブルな価格であるブレンデッドの方を好むウイスキーファンも多いのです。
シングルモルトファンは逆に蒸留所によってカスクや製法が変わることでの味と香りの個性を楽しんでいるのです、つまり同じウイスキーファンでもそれぞれの趣向に合わせて楽しめばよいということです。
ブレンデッドを楽しむ上で重要なポイントは味と香りのベースとなるキーモルトです、これはシングルモルトの原酒をカスク単位で買ってブレンドしています、そしてそのブレンデッド銘柄はどの蒸留所のモルト原酒をキーモルトにしているかということが大きなポイントです。
例えばシーバス・リーガルはストラスアイラ・グレンリベット・ロングモーン・ベンリアックというスペイサイドの一流蒸留所です、これらの蒸留所のシングルモルトの価値はシングルモルトファンならすぐ解るでしょう。
さらにデュワーズのキーモルトはハイランドのアバフェルディとロイヤルブラックラ、スペイサイドのクライゲラヒ・オルトモア・デヴェロンという知る人ぞ知る超が付くほどの豪華すぎる蒸留所メンバーです。
安価で有名なホワイトホースはもっと驚きます、なんとアイラの上品なシングルモルトであるラガヴーリンです、加えてスペイサイドのオルトモア・クライゲラヒ・グレンエルギンとアイラモルトの個性と花と動物シリーズでの価値を理解しているシングルモルトファンなら一発でそのスペックの凄さが理解できると思います。
それぞれの蒸留所の個性を引き出しながらも調和のとれた味と香りに仕上げたブレンデッドはシングルモルトでは決して味うことができないバランスの取れた味と香りを楽しめます、またキーモルトのそれぞれのエッセンスを探りながら楽しむのが本来のシングルモルトファンの姿だと思います。
ブレンデッドウイスキーのキーモルトに興味を持って、そのキーモルトとなっているシングルモルト単独のエッセンスを実体感により記憶し、そのうえでブレンデッドウイスキーを楽しめるようになるとウイスキーファンとして一皮向けたと言えるかもしれません。
最後にウンチクですがブレンデッドウイスキーで熟成年数(エイジ)表示している場合、例えば12年であればブレンドするキーモルトはすべて12年以上熟成した原酒です、これを知ると更にブレンデッドのエイジもののスペックに対して如何にリーズナブルな価格であるかが解ります。
ちなみに例外はあるもののブレンデッドでノンエイジのものはおおよそ12年に比べて半額であり同じキーモルトを使った若熟成ブレンデッドの場合が多いです、スパイシーでドライなウイスキーを好む人はこちらをお勧めします、極めてコストパフォーマンスが高いウイスキーです、例外的に10年から20年というような熟成年数がバラついたカスク原酒を意図的にブレンドするためにノンエイジにしているブレンデッドウイスキーも存在しています。
ウイスキーファンは「ブレンデッドに始まりブレンデッドに終わる」と思います、私はバブル期にさんざんブレンデッドを飲んできました、その後シングルモルトの個性豊かな味と香りに惹かれてシングルモルトファンになりました、最近になって再びブレンデッドを見直すようになってきたのです、ウイスキーも人と同様に「個性を出すのもいいけどボトル(組織)としての調和はもっと大事」、遅すぎた大きな気付きでした。
ウイスキーはブランドとか価格とかルッキニズムよろしく外形的な尺度で測っていたら本物を見抜く能力は絶対に培われません、人もウイスキーも同じことで正確に理解するには狭い範囲での見える外見や他者からもたらされた情報からくる思い込みや偏見を捨て真っ白な状態で真摯に向き合うことです、もしかして自分に最も必要な人や物と出会っているのに染み込んだルッキニズムや思い込みという偏見によって気付かずに終わってしまっているのかもしれません。

2000年も前に中国で書き記された「漢書」によると酒は万病に効くとされています、それが日本に伝わり「酒は百薬の長」と言い換えられ今に伝えられています。
西洋でもアスピリンを発見した西洋医学の父であるヒポクラテスが「ワインは万病に効く」と自書に書き記しています、では本当にアルコール摂取で健康になるのでしょうか?
結論から申し上げますと世界中で約10年間にわたるアルコール摂取における疫学調査が行われ調査対象者は10万人を越えています、これらの調査報告書は1981年にイギリスの医療機関によってまとめられました。
この報告書の総論として、「アルコールを毎日適量飲んでいる人はあらゆる病気に対して耐性があり、まったく飲まない人や過度に飲んでいる人に比べて心身ともに活力があり健康である」、ということが結論付けられています。
この適量というのはどれほどかというと人によっても異なるようですが日本人の場合では概ね1日20gだそうです、ビールで500cc、ウイスキーで2ショット(60cc)程度に相当します。
更に報告書では100歳以上で健康の人の60%の人が毎日お酒を飲んでいるという事例もあります、結論として「酒は百薬の長」というのはまんざら嘘ではないということです。
これは50年間ほぼ毎日アルコール摂取している私自身が感じていることですが、アルコールは楽しく飲んでこその薬であり気持ち悪くなるほど飲んだら確実に毒になると思います。
また仕事が忙しくて1ヶ月以上ほとんどお酒を飲めない時期が過去数度ありますが、いずれも不眠症に悩まされたり精神的にも活力が減退しました、まあ理由はそれだけではないのでしょうがお酒を毎日楽しく飲めるというストレスフリーな状況そのものが心身が健康だということなのでしょう。
適量のアルコールはドーパミンに始まり最終的にセロトニンの分泌を促しストレスを解消してくれます、気持ちよくなってきたらそこで止めておくのがよろしいようです、みんなで飲む際には互いの健康に気遣い食事という場を楽しみながら飲むようにしたいものです。
砂糖がボトルの中で結晶化している怪しいリキュールがあります、カクテルやお菓子作りに利用されるグヨ・クリスタルキャンメルというリキュールですが買ったばかりの状態ではボトルの下部5分の1は砂糖の結晶で白くなっています。
キャラウェイ・クミン・コリアンダーなどのスパイスエキスの超甘いリキュールなのですがアルコール度数は45度と恐ろしく高く、リキュールだと思って軽く考えてゴクゴク飲んだら完全に記憶が飛びます。
それにしてもアルコールにどんなに砂糖を加えても自然に結晶化するまでにはかなりの時間がかかります、それをあえて意図して製造しているとしたらなんて手の込んだことをするものだと感心します。
また名前のとおりで液体は無色透明です、アルコールにスパイスを漬け込むと有機物で確実に茶色になるはずですので、スパイスをアルコールで漬け込んだ後再度蒸留してエキス分だけ取り出しているのだと思います、アルコール度数が高いのはそれを暗に示しているのかもしれません。
再蒸留とはいえ一応スパイスエキス入りの薬膳酒ですので、風邪を引いたときや疲れているときにレモン果汁を加えてお湯割で飲んでも美味しいし若干なりとも効果が期待できます。



飲み干しても砂糖の結晶がこんなにも残る
幻の焼酎と言われて久しい百年の孤独、常に品薄状態で定価で売る店は皆無で飲食店では倍額でも買えるならありがたいと言います、ちなみに私は3年ほど前に普通に定価にちょっとプラスした程度の金額で買えました。
百年の孤独は麦焼酎でしかもアルコール度数は40度で3年間熟成しているのです、つまり日本産のシングルグレーンウイスキーと言ってもおかしくないのです。
ちょっと雑っぽい口当たりですが味は焼酎というよりほんのりですがウイスキーらしい味と香りがします、ちなみに海外ではホワイトウイスキーとネットで紹介しているブロガーもいます。
正月の定例家飲み会でみんなで他の珍しいアルコール類やアイラモルトなどと合わせて試飲して楽しみました、たまにはこういう味も超若熟成のドライ系のグレーンウイスキーのようで新鮮に感じます、個人的にはこういう味は大好きです、ウイスキーも焼酎も蒸留酒であり私好みの酒類です。


近年誕生してきたスコッチウイスキーのなかでとりわけアイラモルトには俗にいう「謎のアイラモルト」という存在があります、例えばピーツビースト・スカラバス・As we get it・アイリーク(イーラッハ)・フィンラガンなどです。
ピーツビーストはサブタイトルそのものが「謎のアイラモルト」と謳っておりラベルは有名なイラストレーターによるもので怪物が吐いた炎によってラベルの左隅が焼かれたように焦げ落ちています。
この謎のアイラモルトの何が謎かというと蒸留所も熟成年数もカスクもほぼ全てが非公開となっているからです、蒸留所の多くはブレンデッドウイスキー用にディステラりーオフィシャル版とは別に製造してボトラー各社に販売しています。
こうしたブレンデッド用に作られたシングルモルトの中で、特に優れた品質のものをボトラー各社が樽ごと買い取ってボトリングして製品化しているのです。
近年数多く誕生してきたボトラーズとは、自らの蒸留所を持たず蒸留所から樽ごと買取りそのままボトリングしたり、幾つかの蒸留所の原酒を独自のレシピでブレンドしたりと蒸留所の純正ボトルにはない味と風味を楽しめるので過去からボトラーズブランドには多くのファンが形成されています。
こうしたボトラーズブランドの製品の中には蒸留所の純正品では非常に高価になる長期熟成ものや、逆にアイラモルトの熱烈ファンが多い若熟成ものなど蒸留所のオフィシャル版では味わいたくても味わえないものを世に出してくれるので、これらをいつでもリーズナブルな価格で満喫できる時代に生まれてきたことは大変幸福なことだと思います。
そこでアイラモルトファンは謎のアイラモルト銘柄の蒸留所や熟年数を味と香りを頼りに当て合うのが一つの楽しみとしています、私もショットバーでこういった話をよく常連やマスターと話し合いますがそれぞれの考えがなるほどと思わせるものも多く大変勉強にもなるし非常に楽しい時間を過ごさせてもらえます。
ネットにも予想を示した記事も散見されますが、これは絶対違うだろうと思うものもあったり自分と同じ考えもあったりで、これはこれで非常に楽しく読まさせてもらうことができます。
難しいのはアードベック蒸留所とキルホーマン蒸留所だと思います、何故ならあらゆる味と香りのオフィシャル版を出しており熟年数によって解りやすい色の違いもなくカスクによってさまざまな色をしているので一概に色が薄いから熟年数が若いとも言えないからです。
押しなべて言えることはたった一つ、謎のアイラモルトは極めてコストパフォーマンスが高いということです、訳あり商品ではないのですが味も香りも蒸留所の純正品と比べて価格から考えたら非常に得した気分になります。
「謎のアイラモルト」の中で私の一押しはアイリーク(イーラッハ)です、おそらくラガヴーリン蒸留所の若い熟年数のシングルモルトではないかと頑なに信じています、ネットでは香りの刺激感などからラフロイグを想像している人も見受けますが私個人的な意見ではラフロイグではなくラガヴーリンだと思います。
ラガヴーリンが値上がりした今では、ラガヴーリンライクな上品さがありながらも若熟成のガツンとくるアイラモルトらしさを気軽に飲めるアイリーク(イーラッハ)は本当にありがたい存在の一つです。
尚、この「謎のアイラモルト」ブームを受けてか「謎のスペイサイド」や「謎のハイランド」などもブームになりつつありますが人気はイマイチです、やはりアイラモルトはスコッチのなかでも特別な存在なのではないでしょうか。
私も「アイラモルト」のカテゴリの一つに蒸留所名と同じレイヤーに「謎のアイラモルト」を作りました、現在手持ち銘柄は昔からメジャーなものばかりですが近年では非常に種類が多くなっています、したがって全ての銘柄を網羅することは不可能に近いのですが可能な限り探し出しては購入して謎を解いていきたいとと思います。