
スコッチウイスキーファンにとってバーなどで何かと話題に上がるUD社(ユナイテッド・ディステラリーズ=現ディアジオ社)の「花と動物シリーズ」ですが、現在では継続的にリリースしている11銘柄意外は手に入らない幻のスコッチとしてあまりにも有名です。
当時UD社はハイランドやスペイサイドを中心に多くの蒸留所を手中に収めていた最大規模を誇るウイスキーメーカーですが、そのほとんどの蒸留所はブレンデッド用に作られるウイスキーでありオフィシャルシングルモルトとしては販売していませんでした。
そこで、それぞれの蒸留所で作られたシングルモルトを世界中の人に届けようとシリーズ化し、これがスコッチファンの心をくすぐるには充分で大当たりをしたのです。
「花と動物シリーズ」は1991年に22種、2001年に4種と全26種類発売されましたが、現在でも11種だけは継続的に毎年リリースされており入手可能ですので是非とも特徴的な各蒸留所の味を楽しんでほしいと思います。
1991年発売の「花と動物シリーズ」は以下になります。
・アバフェルディ15年
・インチガワー14年 ○
・オルトモア12年
・カリラ15年
・クライゲラキ14年
・クライヌリッシュ14年
・グレンダラン12年
・グレンロッシー10年 ○
・スぺイバーン12年
・ダフタウン15年
・ダルユーイン16年 ○
・ティーニニック10年 ○
・バルメナック12年
・ピティヴァイク12年(1993年に操業停止)
・ブラッドノック10年
・ブレアアソール12年 ○
・ベンリネス15年 ○
・マノックモア12年 ○
・モートラック16年
・リンクウッド12年 ○
・ロイヤルブラックラ10年
・ローズバンク12年(1993年に操業停止)
また、2001年発売の「花と動物シリーズ」は以下になります。
・オスロスク10年 ○
・ストラスミル12年 ○
・グレンエルギン12年
・グレンスぺイ12年 ○
※銘柄の最後にある○印は現在でもリリースが継続されている銘柄で通常購入が可能です、ただしリリース年度により価格が大幅に異なるので最近リリースしたリーズナブルなものを購入することをお勧めします、目安として9,000円前後ならほぼ最近のリリース年度だと思いますのでお買い得です。
尚、「花と動物シリーズ」はその名のとおりで各蒸留所にちなんだ花か動物がラベルに描かれており、ずらっと並べると何とも言えない雰囲気があります。
当時私はショットバーの経営に参画しており、この「花と動物シリーズ」全種を並べる為に壁に穴を開けて専用のラックを作ってもらったほどです。
尚、リリースが終了した銘柄や閉鎖した蒸留所のものもプレミアムリカーショップやオークションなどでも手に入りますので、元気のある人は是非全26種をコレクションしてみるのは如何でしょうか。
私は閉鎖蒸留所銘柄や昔親しんでいた銘柄を探しては購入しています、価格は最低でも当時の10倍以上ですが、何とか無理の無い範囲で入手できて最も元気だった頃に親しんだ味を再度堪能できるのであれば幸福なことだと考えています。
ちなみに閉鎖蒸留所のローズバンクとピティヴァイクはプレミアムリカーショップで現在20万円以上です、オークションだと10万円以下で落とせるとは思いますが保存状態は保障されません。
現存のリリースが継続している銘柄もいつ終了するか解りません、終了と同時に一気に値上がりしてしまいますので、買える時に買って飲んでおくことをお薦めします、ボトルが空になっても記憶の中に味と香りはしっかりと生き続けます。

閉鎖蒸留所のローズバンクの幻のローズバンク12年

閉鎖蒸留所のピティヴァイクのピティヴァイク12年

昔から食事の際には必ずビールを味噌汁やスープ代わりに飲んでいる私は完全にビール党です、同じ醸造酒でもワイン(シャンパン含め)や日本酒(紹興酒含め)はどうも身体に合わないようで勧められれば抵抗も無く飲みますが自ら進んで飲むことはあまりありません。
さて、そんなビールですがアメリカでは「リキッドミール(液体食)」、日本では「飲むご飯」と称する人たちがいます、勿論私もその一人で本当にご飯代わりになると考えています。
蒸した麦を醗酵して作るビールには炭水化物(糖質)とタンパク質が含まれており脂質や食物繊維はゼロです、またカリウムやマグネシウムなどのミネラル分も含まれており成分だけでいえば量はかなり水増しされてはいるものの食物繊維抜きのバケット(小麦と塩だけで作るフランスパンの一種)やクラッカーだと言っても過言ではありません。
つまりバケットで摂れる栄養素をビールで補えるわけです、勿論それなりの量を飲んだ場合となりますがビール党の人は食べるよりも飲んでお腹を満たすほうが好きなのですから都合がいいのです。
飲みながら腹が膨れるご飯やパンを避け、おつまみに足りない食物繊維やビタミン類を合わせれば主食を摂らずに食事と同様の栄養素が摂取することができるのです、まさに「食べるご飯」だと思います。
更にビールに含まれているホップはアンチエイジングや免疫力増強に効果があり更には利尿効果のある薬効成分が含まれていますので、ご飯に加えて抗酸化サプリメントを同時に飲んでいるようなものです、ビール党の人は皆さん肌つやがすごく良いのは頷けます。
成人後ほぼ毎日ビールを飲んでいる私は風邪もひかないし夏ばてもありません、そして還暦過ぎて久しくも歩くのは早いし筋力もほとんど衰えず健康そのものです。
食事の際だけではなくウイスキーのチェイサー代わりにまでビールを飲むビール党の呑兵衛の言葉では説得力もありませんが、自身の身体に合うものを好きなように飲んで食べて大いに健康なのだから一つの根拠としての戯言だと聞いていただければそれでいいのです。

ウイスキーのボトルの形状もいろいろありますが、スコッチウイスキーのボトルの多くのネックは真ん中が膨らんでいるものが多く見られます。
この膨らみを巡って人それぞれに想像をするわけですが、よくあるのが「昔はガラス球が入っていた」、「注ぐときにいい音がするため」、「ガラス球を入れて1ショット分を測るため」などが主な結論です。
正解を先に言ってしまうと確かに「ガラス球を入れていた」ですが、問題はその理由です。
その理由は「瓶の口から混ぜ物を入れさせなくさせるため」なのです、昔はシングルモルトのスコッチウイスキーは非常に高価なお酒でした、そこで出始めの頃に安いグレーンウイスキーを混ぜて売っていたバーが多発しました。
そこで上から混ぜ物ができないようにボトルの真ん中に膨らみをつけてガラス球を入れていたのです、つまりスコッチウイスキーのボトルの膨らみはその頃の瓶のスタイルの名残ということです、どんなことにも意味と理由があるのです。
現在でも「玉付き」と表示されたオールドパーなどの高級ブレンデッドウイスキーが存在しますが、これはガラス球が入っているのではなくプラスチックでできた逆流防止の蓋が付いています、実際にボトルにウイスキーを移そうとしても1滴も入りません、実によくできた構造となっています。

シングルモルトウイスキービギナーに多いのがブレンデッドはウイスキーとして格下だという偏見です、でもこの記事を読んだら明日から少しはブレンデッドウイスキーを見直すようになるでしょう。
まずシングルモルトに比べてブレンデッドの価格が押しなべて低価格に設定できるのはシングルモルトに対して比べ物にならないほど大量生産しているからです、この理由はカスク原酒の在庫数などに応じて調合バランスを調整できるからに他なりません。
決してウイスキー種的に格下ということではありません、事実カスクの変更によって味も香りもガラッと変わるシングルモルトよりも長期間安定した味と香りの維持に努力していながらリーズナブルな価格であるブレンデッドの方を好むウイスキーファンも多いのです。
シングルモルトファンは逆に蒸留所によってカスクや製法が変わることでの味と香りの個性を楽しんでいるのです、つまり同じウイスキーファンでもそれぞれの趣向に合わせて楽しめばよいということです。
ブレンデッドを楽しむ上で重要なポイントは味と香りのベースとなるキーモルトです、これはシングルモルトの原酒をカスク単位で買ってブレンドしています、そしてそのブレンデッド銘柄はどの蒸留所のモルト原酒をキーモルトにしているかということが大きなポイントです。
例えばシーバス・リーガルはストラスアイラ・グレンリベット・ロングモーン・ベンリアックというスペイサイドの一流蒸留所です、これらの蒸留所のシングルモルトの価値はシングルモルトファンならすぐ解るでしょう。
さらにデュワーズのキーモルトはハイランドのアバフェルディとロイヤルブラックラ、スペイサイドのクライゲラヒ・オルトモア・デヴェロンという知る人ぞ知る超が付くほどの豪華すぎる蒸留所メンバーです。
安価で有名なホワイトホースはもっと驚きます、なんとアイラの上品なシングルモルトであるラガヴーリンです、加えてスペイサイドのオルトモア・クライゲラヒ・グレンエルギンとアイラモルトの個性と花と動物シリーズでの価値を理解しているシングルモルトファンなら一発でそのスペックの凄さが理解できると思います。
それぞれの蒸留所の個性を引き出しながらも調和のとれた味と香りに仕上げたブレンデッドはシングルモルトでは決して味うことができないバランスの取れた味と香りを楽しめます、またキーモルトのそれぞれのエッセンスを探りながら楽しむのが本来のシングルモルトファンの姿だと思います。
ブレンデッドウイスキーのキーモルトに興味を持って、そのキーモルトとなっているシングルモルト単独のエッセンスを実体感により記憶し、そのうえでブレンデッドウイスキーを楽しめるようになるとウイスキーファンとして一皮向けたと言えるかもしれません。
最後にウンチクですがブレンデッドウイスキーで熟成年数(エイジ)表示している場合、例えば12年であればブレンドするキーモルトはすべて12年以上熟成した原酒です、これを知ると更にブレンデッドのエイジもののスペックに対して如何にリーズナブルな価格であるかが解ります。
ちなみに例外はあるもののブレンデッドでノンエイジのものはおおよそ12年に比べて半額であり同じキーモルトを使った若熟成ブレンデッドの場合が多いです、スパイシーでドライなウイスキーを好む人はこちらをお勧めします、極めてコストパフォーマンスが高いウイスキーです、例外的に10年から20年というような熟成年数がバラついたカスク原酒を意図的にブレンドするためにノンエイジにしているブレンデッドウイスキーも存在しています。
ウイスキーファンは「ブレンデッドに始まりブレンデッドに終わる」と思います、私はバブル期にさんざんブレンデッドを飲んできました、その後シングルモルトの個性豊かな味と香りに惹かれてシングルモルトファンになりました、最近になって再びブレンデッドを見直すようになってきたのです、ウイスキーも人と同様に「個性を出すのもいいけどボトル(組織)としての調和はもっと大事」、遅すぎた大きな気付きでした。
ウイスキーはブランドとか価格とかルッキニズムよろしく外形的な尺度で測っていたら本物を見抜く能力は絶対に培われません、人もウイスキーも同じことで正確に理解するには狭い範囲での見える外見や他者からもたらされた情報からくる思い込みや偏見を捨て真っ白な状態で真摯に向き合うことです、もしかして自分に最も必要な人や物と出会っているのに染み込んだルッキニズムや思い込みという偏見によって気付かずに終わってしまっているのかもしれません。

オーディオでも音楽を楽しむよりも好みのオーディオ機器をコレクションするオーディオコレクターが存在するようにウイスキーファンにもプレミアムボトルコレクターが存在しています、勿論飲んでも楽しむのですがシリーズものや限定リリースものなどを中心にコレクションしているのです。
これが一つの投資になるのではないかと思えるほどで、既に閉鎖となった蒸留所のものなどは空瓶でも数万円で取引されています、高額で取引されているボトルではバブル期に発売されていたボウモア・マリナーなどの限定リリースなど多種あります、私もマリナーは何本も買っては飲んでいたので最近のブームには妙な気分になります。
また中身の入ったものでは今や伝説となったUD社(ユナイテッド・ディステラーズ:現ディアジオ社)の「花と動物シリーズ」の中でローズバンクやピティバイクという閉鎖となった蒸留所の銘柄です、同じようにアイラモルトでは閉鎖となったポートエレンの40年ものなどは欲しい人は100万円を超えようが買うでしょう。
私はよく「ほしい物は買えるときに買っておくのが賢い」と言いますが、本当にウイスキーにもこれがずばりと当てはまります。
ちなみに私は閉鎖蒸留所のシングルモルトや限定リリースものを手に入れても飲まずに保存しておくというコレクション癖はなく、味の確認のほうに気持ちがいってしまうため手に入ればすぐ開けてしまいます、例えプレミアム品であろうが空瓶をコレクションすることもなく捨ててしまいます。
スコッチウイスキーブログをはじめた今となって思えばボトルだけでも記念に取っておけばよかったと思うことも多々ありますが、味と香りはしっかり頭に記憶しているので悔しがることもありません。
スコッチウイスキーは銘柄によってはこの数年で倍以上の価格になっています、ちょっと前までは手ごろ感のあったウイスキーでも現在は4倍以上の高級酒となった銘柄も存在しています、しかもこれが限定リリースものなら更にプレミアムがついて10倍以上にもなっています。
ワインも然りでスコッチウイスキー投資は銘柄さえ間違えなければ楽勝ではないかと思うほどです、とはいえ例え限定リリースものでも何でもいいというわけではなく、そこには正確な目利きができる知識とノウハウが必須です。
ちなみにスコッチウイスキー投資を始めたいと思う人に一つだけアドバイスするとしたら、今買うなら閉鎖した蒸留所ものではなく2000年以降に創設された蒸留所の希少カスクストレングス版です、稼動初期の味は時が経てば味わうことができないし発売数も当然少なく時が経てば経つほど現存数が減り希少性が更に増すからです。
ただしどこかの販売店が抱えていたボトルをリリースしたとたんに価格が暴落してしまうので株式投資と同様で買いと売りのタイミングを間違えたら大きな投資をしたのに大損することになります、ちなみに購入価格が100万円のものを買い取りやオークションに出すとせいぜい手に入るお金は多くて40万円ほどとなります、ハイリターンにはハイリスクが伴うことを忘れてはいけません。
最近では2年前に456本というスーパー限定リリースものがアードベックから発売され2年で1本200万円という市場価格がつきました、サントリー山崎のプレミアムボトルはオークションで1億円近い価格で落札された例もあります、こういったプレミアムウイスキーは更に上昇することは間違いないでしょう。
そんなプレミアムボトルや保管してある30年以上も前のワインを毎年正月に集まってはみんなで家飲みで楽しむのですが、「そんな高額なボトルを開けちゃっていいんですか?」と口をそろえて言われます、でも買った時点ではそこそこの価格だったわけです、手元に保管している酒を売る気もないし今こうしてそれをみんなで飲めるなんて最高に幸せなことだと思うのです。
ちなみに今年の新年ホームパーティで開けたプレミアムボトルは、1986年に終売となったグレンフォレス12年・80年代のベル20年陶器ボトル・80年代のロイヤルサルート21年、ワインはロマネコンティと同じブドウ品種で作られたシャンベルタン1993年(30年もの)でした、本当にみんなで美味しくいただきました。