
ショットバーでジンなどのスピッツやカクテルから卒業しウイスキーをストレートで頼むようになって、マスターや常連客とウイスキーのウンチクを語り合うようになったら間違いなくウイスキーフリークの仲間入りです。
こうなったときにちょっと考えて欲しいのが飲むウイスキーの選び方です、これまでのように好みの特定の銘柄から同じ地区の蒸留所のシングルモルトを飲んで比較してみたり、そのシングルモルトがキーモルトとなっているブレンデッドウイスキーを飲んでみるようにしてほしいのです。
これを行うっているうちにウイスキーに対する舌と鼻がこれまでの数十倍も鍛えられます、そして最後に行き着くところまで極めてほしいと思います。
最後に行き着くところはカスクです、つまりそのウイスキーはどんな樽で熟成されたのかというところに感覚を磨いてほしいのです。
同じ蒸留所のシングルモルトのカスク違いを味わってカスクの特徴を舌と鼻で記憶して欲しいのです、こうなるとウイスキーのソムリエのように舌と鼻が研ぎ澄まされます。
同じ蒸留原液(スピリッツ)なのにカスクによって味と香りはまったく違います、同じ蒸留所のウイスキーとは思えないほどに違います、また次にカスク別の味と香りを記憶したらダブルカスクやトリプルカスクといったカスクヴァッティングものでそれぞれのカスクのエッセンスを感じてほしいと思います。
ここまでくると自分で好みのモルトブレンデッドが作れるようになります、これが本当にウイスキーフリークの極みです、まるでウイスキーメーカーに必ずいるマスターブレンダーの如しです、これが本当に愉しいしウイスキーが人生に彩を与えてくれるようになるのです。

アイラ島のブルイックラディ蒸留所からボタニスト(植物博士の意味)というジンが発売されたときには驚きましたが、その後世界中のウイスキー蒸留所からも新たなジンが製造販売されるようになりました、日本でもこの数年で新たなジンが多数誕生しています。
そしてこの裏にある事情を知れば納得できます、その理由は大きく2つあります、一つは世界的なジンブームの到来です、世界の消費量は5年ほど前から上昇しており近年では女性の人気が急上昇しているようです。
また近年ではジンの高級版へのニーズが高まり、これまでは2,000円以下のジンが消費の中心だったのが現在では3,000円となり年々ジンの高級化へシフトしているという調査結果があります。
2つめの理由は世界的なウイスキーブームの煽りで全世界の蒸留所のカスク原酒が枯渇してニーズがあってもウイスキーが出荷できないのです、そこで熟成が不要で蒸留してすぐ出荷できるジンに製造をシフトしている蒸留所が増えてきたのです。
これらの理由からウイスキーメーカが所有蒸留所でウイスキーを生産する傍らでジンの製造を並行して行うようになり、製造したものを売るためのマーケティングを実施しているのです。
日本のウイスキーメーカーも新たなジンを開発して発売しだしています、私もウイスキー蒸留所のジンを何度か飲みましたが確かに美味しいです、安価なジンに比べてアルコール度数が高いのにピリピリ感がなくマイルドな風味です、多種のスパイスエッセンスが豊富に入っている証拠です。
ウイスキーのように数年間樽で熟成したジンも出始めました、長期熟成のウイスキーがカスク原酒の枯渇で造れないので若熟成の新たなウイスキーが近年どんどん発売されています、そんなウイスキー事情の中でジンも気にしなくてはいけない状況となりました、まあジンも大好きなので大いに時代の波に乗ることにしましょう。

アンティークウイスキーがブームになっていますが高値でも買う人はどんな価値をアンティークウイスキーに見出しているのでしょうか、そこには各種の価値観が存在しているように思います。
例えばショットバーのバーテンダーでは同じ蒸留所のシングルモルトでも年代によって若干味と香りの傾向が変わってきます、その意味で昔の味や香りと今のものとの比較をして知識を増やすという価値を見出していると思います。
またボトルコレクターにとっては80年代は黄金時代です、多くのファッションブランドやスポーツグッズブランドは特徴的なボトルデザインを創出していましたし、今では吸収や廃止になった蒸留所やメーカーものも数多く存在しています。
更には豪華なボトルや陶器ボトルなど今では味わえないようなコレクターズアイテムが80年代には数多く存在しています、また同じ銘柄の歴史を遡るように年代別のボトルをコレクションしている人にも70年代と80年代は酒税法の改正がありラベル違いや表記違いなどコレクター心を擽る材料がたくさんあります。
私の年代の人は血気盛んだったバブルの頃に毎日朝まで浴びるように飲んでいた頃の懐かしい味を再度味わってみたいという願望があります、私はきっと未来に必ずやそんな時がくると思い常に複数本買っては1本を保管しておいたのです、今になってその無駄と思える行為がやっと意味を持つように感じるようになりました。
いずれにしてもアンティークウイスキーを買えるのは今のうちです、70年代のウイスキーはほぼ枯渇し始めています、そのうち今では苦労せずに買える80年代のウイスキーも枯渇するでしょう、アンティークウイスキーは絶対数があるのですから買われて飲まれる都度に現存数が減っていくわけです、失って初めて重要さに気付くのは人だけではなくウイスキーも同様だと思う昨今の私です。

アイラモルトの面々(他の区域のボトルも若干含まれています)
還暦を迎える前まではショットバーに行けば必ず最低でも1銘柄はアイラシングルモルトを飲んだものですが最近では3回に一度くらいに減ってきました、アイラシングルモルトよりもアイラエッセンスを感じながらも複雑な味や香りのするアイラシングルモルトブレンデッドやアイラモルトをメインにしたブレンデッドを楽しむようになりました。
アイラシングルモルトの最大の魅力はピートの香りの強烈なスモーキー感とスパイシーな味にあると思います、解りやすい味というか口にドスントと感じる男気のある味が何ともいえない感覚を覚えます、特に若い人ほどアイラシングルモルトが好きな人が多いと思います。
でもアイラモルトにも上品でフィニッシュはローランドのウイスキーのようなドライフルーツを思わせる風味が残るラガヴーリンやまったくピートの香りを付けてないノンピートのブナハーブンやブルイックラディのクラシックアイラなどもあります。
アイラシングルモルトを好む人は解りやすいラフロイグやアードベックの味と香りを好むようで、同じアイラシングルモルトでもブナハーブンやブリックラディには見向きもしない人が多のも事実です。
ただブナハーブンやブルイックラディのクラシックラディを何度も飲むうちにピートの香りは無いにしろやはり力強いアイラシングルモルトなんだなというエッセンスを感じるようになります、そのエッセンスはほのかな潮の香りや口に含んだときの独特のスパイシーさです、これを感じるとやはりアイラシングルモルトだと思えるようになります。
これを感じるようになるとハイランドやスペイサイドのウイスキーが突然のように美味しく感じられるようになります、更にピートの香りのスモーキー感やスパイシーさが邪魔に感じるようになるとフルーティで優しい味のローランドやキャンベルタウンが美味しく感じられるようになります。
ウイスキーの飲み始めがアイラシングルモルトで虜になってしまった人はなかなかアイラシングルモルトから抜け出せないものですが、スコッチウイスキーの一部のエッセンスしか味わえないのは非常にもったいないことだと思います。
その点でいうとバブルの頃にブレンデッドをさんざん飲んできた年配の人はどの地域のウイスキーでもそれぞれの個性を受け入れられるようです、一旦アイラシングルモルトから離れて各種のウイスキーを楽しんでみるのがよろしいかと思います。
そのうえで再度アイラシングルモルトを飲み直すとこれまでに感じられなかった複雑な味と香りが明確に解るようになります、各種のウイスキーの味と香りを見極められるようになって初めてアイラシングルモルトの本当の美味しさが感じられるようになると思うのです。

私がアイラモルトウイスキーを初めて飲んだのは26歳の時で、なんとロンドンのヒースロー国際空港内にあったスコッチバーでした。
学生の頃からお酒は何でも大好きで、ほぼ毎日のようにバーボン(ジャックダニエルなど)やブレンデッドウイスキー(ジョニーウォーカーなど)を飲んで未来の自分の姿を想像しては大学に通う以外何もできない現状とのギャップに悶々としていました。
ヒースロー空港での話しに戻りますが、当時私はパリに本社がある外資系のIT企業でフリーランスのSEをしており年に数回パリに出張がありました、そしてその時はたまたま直行便が取れずにロンドン経由になったわけです。
トランジットの為空港外には出られないのですが、せっかくロンドンにいるのだからということで当時日本では1本1万円以上もした本場のシングルモルトウイスキーを飲もうと空港内をぐるぐる回ってやっと探し当てたのがカウンターだけの小さなスコッチバーというわけです。
おつまみはクラッカーとポケットサイズの袋に入ったピーナッツだけしか置いてなかったのですが、その時に飲んだウイスキーが初めて飲んだアイラモルトの「ボウモア」というウイスキーだったのです。
飲み慣れていたバーボンやブレンデッドウイスキーとはまったく似ても似つかない強烈な刺激臭とスパイシーな味で口の中がピリピリします、しかしチェイサーと交互にゆっくりと飲むと口の中にフルーツのような香りや燻製のようなスモーキーな香りが広がり何とも言えない複雑な香りとピリッとした味に包まれ一発ではまってしまったのです。
気が付いたらバーテンダーに薦められるままに、「アードベック」や「ラフロイグ」など小一時間に5~6杯飲んで至福の時を過ごしていました。
日本に帰ってから調べてみるとアイラモルトだけで日本酒まではいかないまでも物凄い種類が在ることが解りました、そして当時でも15種類くらいは輸入されていて「ボウモア」と「ラフロイグ」はすぐ手に入れナイトキャップの座をバーボンウイスキーから奪い取ってしまいました。
それ以来、毎日のように仕事帰りに地元のショットバーでビール(コロナやハイネケン)をチェイサー代わりにアイラモルトを飲むのがルーティン化してしまったのです。