お寿司といえば伝統的な日本食の一つでミシュランガイドにも寿司屋が入っています、ちなみにミシュランガイドに選定されたお店の数都市別ランキング1位は東京で2位が本拠地パリです、次いで3位が京都で4位が大阪、5位がニューヨークとなんとトップ5に日本の都市が3つも入っており、国別ランキングでも日本が堂々の1位です。
ミシュランガイド国別1位の日本のレストランの多くはフレンチやイタリアンですが、寿司屋などの和食レストランも数多く入っています。
そんな世界に誇るお寿司は今や日本食を代表する料理として世界中で人気があります、そんな時代を反映してなのか外国人観光客用なのか最近の寿司屋にはウイスキーが多数用意されているのには驚きます。
ちょっと前までは寿司屋での飲酒といえば定番がビールで次いで日本酒や焼酎でありウイスキーはジャパニーズウイスキーが3種類ほどしか置いていませんでした、ところが最近ではシーバスミズナラに始まりボウモアなどのアイラモルトやブッシュミルズなどのアイリッシュウイスキーまで置いてある店もあります。
ちなみに「ミズナラ」というのは英語ではジャパニーズオークと表現されてきましたが、ジャパニーズウイスキーが世界ウイスキー品評会で最優秀賞を受賞した頃からジャパニーズオークという表現が日本語そのままの「ミズナラ」で表現されるようになっています。
話が横道にそれましたが、今の寿司屋でのウイスキー状況をみて気になるのがお寿司とウイスキーは合うのかということです、そこで実際に各種試してみました。
結論から言うとこれが実に合うのです、特に脂の乗った赤身系の魚にはピートの効いたドライなシングルモルトが気持ちよいくらいに味と香りが口の中でミックスします、またあっさり系の白身や貝・イカ・タコなどはノンピートでマイルドなブレンデッドがよく合います、酢飯の甘酸っぱさがウイスキーとの相性がよいのだと思います。
技術業界では「疑問はノウハウに変わる」とはいいますが疑問を持ったら考えるより体験するに限ります、「お寿司にはビール」という私の中での50年にも及ぶ常識が一瞬で崩壊し今や「お寿司にはウイスキー」と変わってしまいました、ちなみに飲み方はロックか水割りがよろしいようで。
私の趣味の一つに将棋があるのですが、応援している藤井聡太棋士に関しては全てのタイトル戦と棋戦を将棋チャンネルで見るくらいです。
藤井聡太棋士に関しては勝負士としてだけではなく人間としても興味があり何を考えているのかと気になったりします、その藤井聡太棋士に対してのマスコミの質疑応答で面白いものがありました。
「好きなことは何ですか?」の質問の回答が「将棋を指すこと」で、まあこれはプロ棋士なので想像通りですが、2番めに「詰め将棋」、3番めに「詰将棋を作ること」と回答したのにはちょっと驚きました、つまり起きているときはほぼ将棋のことを考えているということです。
差し詰め、最近の私のプライベートでの好きなことは「ウイスキーを飲むこと」で2番めに「謎のアイラモルトの謎解き」、3番めは「オリジナルのブレンデッドウイスキー作り」ということになるかと思います。
謎のアイラモルトの謎解き中
謎のアイラモルトとはボトラーの銘柄で蒸留所も熟成年数もカスクも全てが謎となっているアイラモルトを指しており、どこの蒸留所の何年熟成かを当てるのが愉しいのです、ましてはカスクまで当てられたらプロのブレンダーになれるでしょう。
これを行うためにはアイラの蒸留所の幾つかのオフィシャルボトルをブラインドで当てられるくらいに飲んで記憶していかなくてはいけません、また次から次へと新しいオフィシャルボトルを出す蒸留所もあるので特徴的なアイラモルトだけでも常に最低でも50種は記憶する必要があります。
私の場合は試飲しながら味と香りの特徴をマトリックスにして頭に記憶していくようにしています、こうすることで蒸留所の味と香りの傾向が見えてきます、一時期は気を失うくらいに飲むこともありますがこのストイックな時間が愉しいのです、そしてストレスはまったくありません。
ビジネスではないのです、道楽なのですから辛くなったらいつでも止められるのです、その意味では道楽ごとは本当に気持ちが楽で愉しいのです。
ウイスキーといえばスコットランド産のスコッチとかアイルランド産のアイリッシュ、そして日本産のジャパニーズが世界ウイスキーコンテストで各賞を独占しています。
そんな事実からスコッチやアイリッシュは世界中で親しまれているウイスキーだという印象を受けてもおかしくありません、ところが世界のウイスキー販売量ランキングを見るとそれは儚い幻想だということを思い知らされます。
最新の2022年版世界ウイスキー販売数ランキングによると1位はなんとインド産のインディアンウイスキーのマックダウェルズです、2位は同じくインディアンウイスキーのロイヤルスタッグ、3位もインディアンウイスキーのオフィサーズチョイス、4位もインディアンウイスキーのインペリアルブルーと1位から4位までインディアンウイスキーが占めています。
5位になってようやくスコッチウイスキーのジョニーウォーカーが入り、6位はアメリカンウイスキーのジャックダニエル、7位はアイリッシュのジェムソン、8位に再度インディアンウイスキーのブレンダーズブライドが入ります、9位はスコッチのバランタイン、10位もインディアンのエイトピーエム、同率11位にカナディアンのロイヤルクラウンという結果です。
なんとインディアンウイスキーは世界市場の70%を誇る世界一の流通量を誇るウイスキーなのです、次いでスコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアンと続きジャパニーズはウイスキー市場で最も少ない販売数なのです。
ただしランキングはあくまでも販売数であって総売り上げや品質を問うものではない性格のものであるという認識が重要です、世界のウイスキー流通量からみると98%がブレンデッドであり味や香りの品質を問われるシングルモルトは僅か2%でしかありません。
その2%の流通量の中でスコッチやジャパニーズの数百在る蒸留所銘柄が味と香りを競い合い最高級ウイスキーを製造しているのです、こういう事実はウイスキーだけではなくオーディオなどの家電品や衣料品にも当てはまります、薄利多売で勝負するのか厚利小売で勝負するのかという国民性やメーカーのスタンスの違いが色濃く反映されているということです。
食事の際にはウイスキーを飲みながら何を食べても構わないと思うのですが、ウイスキーの味と香りを壊さず更に美味しく飲めるおつまみはそう多くはないと思います。
私がショットバーで必ず頼むのが無塩のクラッカーです、ウイスキーの癖がより解り易くなる気がします、更にはクラッカーを食べてから飲むと味がリセットして別の銘柄に変えるときにはベストなおつまみだと思います。
癖が強いウイスキーにはチーズやドライフルーツが合います、また塩味を付けずにベーキングしたナッツ類も合います、癖を壊さず美味しく感じるのでこれらもときどき無塩クラッカーと合わせて頼んだりしています。
逆に熟成もののトロンと甘口のブレンデッドやグレーンウイスキーには若干スパイシーなビーフジャーキーや酸味と甘みのバランスがとれたピクルスも大変美味しく感じます。
またちょっと小腹が空いたときに食べても嫌味がないのは卵料理です、オムレツでもスクランブルエッグでもOKです、薄味のハムや干し魚の焼き物も最高に合います、同様に薄味であれば食べやすくステーキをスライスしたタリアータなどもよく合います。
逆にウイスキーの味や香りを壊してしまう食材ナンバーワンは生野菜です、小松菜やホウレンソウなどの葉野菜は特にエグ味が増してせっかくの高級ウイスキーが台無しになってしまいます、推測ですが鉄やマグネシウムなどのミネラル成分が関係しているのでしょうか野菜もウイスキーも双方の味が悪くなります。
またエグ味とは異なりシソやラッキョウなどの香草類や強い味と香りのスパイス類は言わずもがでウイスキーの味と香りそのものが変化してしまいます、同じスピリッツでもブランデーではこういった現象は少ないので不思議です、特にモルトウイスキーと生野菜との相性は悪いように感じます、個人的にウイスキーと相性がよいと思う生野菜はトマト(プチトマト)とキュウリです。
またフルーツは生野菜ほど味や香りを壊さないのですが柑橘類は先の生野菜のようにエグ味に変わってしまいアウトです、リンゴ・梨・桃・柿・ブドウなどは逆に美味しく感じるようになります。
ただしブレンデッドやアメリカンウイスキーで作るウイスキーカクテルはジンジャーエールやリキュールなどの甘み成分が入るのでどんな柑橘系でも合います、まあウイスキーカクテルはシングルモルトウイスキーとは別次元に存在するアルコール飲料だと思ったほうがよいでしょう。
とはいえ味や香りの感性は人によっても異なりますので自分なりにいろいろ試してみるのがよろしいかと思います、あくまでもシングルモルトウイスキーをストレートで飲む際の相性の話であり他のスピリッツ系アルコールやカクテルには適用されません。
数年間をかけてウイスキーに合うおつまみを各種研究しましたので、これに関しては別のカテゴリで徐々に記事にしていきましょう。
ファッションに音楽のジャンルといい価値観と同様に時代と共に大きく変化していきます、スコッチウイスキーも例外ではなく大きく変化していきました。
私がスコッチウイスキーを飲み始めた70年代では今のようにシングルモルトは日本にはほとんど入ってきていませんでした、そもそもですがスコットランドでも蒸留所の多くがオフィシャルのシングルモルトはほとんど出してなく多くの蒸留所がブレンデッド用に造っていました。
当時でスコッチウイスキーといえばブレンデッドを指していました、特に日本で早くから人気があったのはジュニーウォーカー、ホワイトホース、ディンプル(ピンチ)、オールドパーなどです、今でこそシーバスリーガルの日本市場開拓作戦が成功して日本で最も売れているスコッチブレンデッドになっていますが当時はジョニーウォーカーがダントツの人気でした。
そして80年代に入るとブレンデッドの新ブランドの誕生ブームと高級化に火がつきますが、同時にアイラではボウモアとスペイサイドではグレンフィディックが海外の免税店で大々的に売られるようになったのをきっかけにしてなのか徐々にシングルモルトの価値が認められるようになってきます、また街の小さな酒屋でもシングルモルトが買えるようになりました。
90年代に入りバブル景気が落ち着き出した頃にUD社(現ディアジオ社)から花と動物シリーズが売り出されるや否や一転してシングルモルトブームが巻き起こります、この頃にスコッチウイスキーをショットバーなどで飲み始めた人の多くは現在も尚ブレンデッドウイスキーには目もくれない傾向があるのは面白い事実です。
そして時が流れて現在では再度スコッチウイスキーブームが巻き起こり、ありとあらゆる蒸留所からオフィシャルのシングルモルトが売り出されています、またブレンデッドも負けず劣らずで次々と新しいブランドが誕生し日本で買えるスコッチウイスキーの種類は数えたことはないのですが500種以上はゆうに超えているのではないでしょうか。
今の時代はいろいろなスコッチウイスキーが飲めるのはいいのですが逆に自分の好みを探すのに苦労するのではないでしょうか、私の時代は数種類しかないので選べないけど好みがはっきり解ります、そして同じウイスキーを飲み続けたことによって味のリファレンスができているので新しいウイスキーの味を評価しやすいと思います。
これはオーディオや健康などにも通じる事項です、情報過多で選択肢が多いだけが幸福ではないと思うのです、いつの時代においても在りものに感謝し自分流で生きることに満足できる人が一番幸せだと思います。