2025年3月 7日 08:00
大麦麦芽を原料としたモルトウイスキーですが、スコッチウイスキーにみられるピートによる麦芽乾燥を施しての蒸留したての原酒はどの蒸留所でもほぼ同じ味と香りがします。
では何故同じ原料と製法を行った同一地区のアイラ島に在る蒸留所であるにも関らず、蒸留所によってすぐ解るような味と香りに仕上がるのでしょうか、ずばりその答えは貯蔵による熟成に在ります。
熟成期間も大きな要因ですが、もっとも解りやすい味と香りが付くのはカスク(貯蔵樽)に秘密が在るのです。
ウイスキーのカスクの多くはオークで日本名では楢(ナラ)です、ただ同じオークでも採れる地域によって繊維の密度や香りがかなり違います、そんな違いから木材としての呼び名もホワイトオーク・スパニッシュオーク・コモンオーク・セシルオーク・ミズナラなどと区分けされています、したがってカスクにどんな木材を使っているかで味と香りが変わってきます。
サントリーでも輸入のホワイトオークなどを使ったカスクと、数量限定販売での品質にこだわった逸品では国産のミズナラを使ったカスクで熟成したものがあります。
もう一つ味に色付けされる要因としてはカスク作りの過程における乾燥の方法です、窯を使って乾燥するキルン方式と野ざらしにして自然乾燥させる天日方式では乾燥による水分の抜け具合や隙間によって味に微妙な変化が起きるとされています。
ちなみに窯を使っての乾燥でもひび割れしないようにじっくりと半年をかけ、天日の場合は最低でも2年かかるということですから本当にウイスキーは丁寧に作られたお酒だと思います。
そんなにも時間がかかるためウイスキー蒸留所ではバーボンやシェリーを熟成するために使われていた使い古したカスクを使うのが一般的です、スコッチウイスキーファンはこれらのカスクによる違いを大いに愉しんでいるのです、飲み慣れた同じ銘柄でもカスクが違えば味が変わり気分も変わるということかもしれません。
このカスクからアルコールによって長い期間をかけてゆっくりとタンニンや微量有機物が溶けだして独特の味と香りとなります、リンゴや梨の香り・アーモンドの香り・薔薇の香り・蜂蜜のような甘味とエグ味などと表現されますが、同じ蒸留所の同じ材質のカスクでもカスクによって若干のばらつきがでる為に同じ年に仕込んだカスクが異なるウイスキーをヴァッティングしてアルコール度の調整後に瓶詰されます。