「大名たる我はあの鶴の身持ちと変わらぬ。 我らが昼夜の心遣いを察せよ、汝ら家臣は鶴を羨まず雀の楽しみを楽しめ」
織田信長の家臣で、文武共に優れ織田四天王の一角と周辺諸国の武将に言わしめた滝川一益の一言。
滝川一益は武勇伝の数々を残すも、出生に始まり謎が多い人物としても知られています。
鶴は大きくて美しい鳥かもしれませんが目立つので常に敵の標的となり、何時も周囲に気を配り昼夜問わず周囲を警戒していなければなりません。
それに対して、雀は小さくかよわい鳥であるが周囲を気にすることなく常に自由な振る舞いをしています。
「鶴は鶴の雀は雀の特徴がある、他者を羨むことなく与えられし立場を全うせよ」ということです。
例えば鉄は鉄としての、アルミはアルミとしての特徴を持っています。
メッキを施し、その特徴を消してしまえば本来の良さが出ないばかりか間違った登用をされてしまいます。
成功する人は「人はそれぞれに役割を持って生まれてくるもの、他者を真似たり他者の行動に踊らされることなく、自らの使命を知って自分に相応しく自然に従うが最も幸福である」ことを常に念頭に置いて思考しているのです。
「いにしえの道を聞きても唱えても、我が行いせずば甲斐なし」
日新斎(じっしんさい)の号で知られる島津忠良の、「日新公いろは歌」より学びの姿勢を示したこの一言。
忠良は幼少のころ「朱子新註四書」を教えられ、また禅を修め神道の奥儀を究め、儒・神・仏の三教を融合して新たに学問を開きました、これを日学と称されます。
戦国の世に在りながら、学びに学び抜いた智将の根拠ある一言は実に深いものがあります。
多くの優れた教訓や学びを聞いても、また唱えたとしても、自分自身が経験してみなければ何も身に付きません。
孔子も「一つを学んだら機会を得て試してみる」と学びの姿勢を示しています。
知識を得ても体得したことにはなりません、知識は経験によって知恵と代わり自身のものと成り得るのです。
失敗も一つの学びです、どんな事も経験を積めば何れは徳となります。
失敗など恐るに足りません、人生で恐れるべきことは辛いことや嫌なことから逃げ出す自身の弱さに失望することです。
「主将たる者が人を登用する際には十分に注意しなければならない事がある。 善柔な性格の者は人に逆らわない、だから同じ仲間から贔屓(ひいき)される者が多い。 そこで主将がその者を良いと思い用いれば国を治めがたくなる。 なぜならば、その者は悪をこらしめ善を勤めることができないからだ。 家中は一応無難であろうが乱の発端となる、主将は自らの目を開かねばならない」
「名将言行録」に載せられている三本の矢の教えで知られる毛利元就の深い一言は、経営者には耳が痛いだろう。
従順な者が参謀にいると経営者は憂いなく過ごせます、ところがこの従順な者が時として内乱の火種となることがあるのです。
考えてみれば解ります、従順な者とはどのような性格の人なのでしょうか。
要は「事なかれ主義」で経営者の意思を自分の都合に置き換えては下に伝え、下の意見や言い分もまた自己の都合に置き換えては経営者に伝えます。
つまりは、知らぬうちに経営者はこの従順な者に暗黙のうちにコントロールされるようになるのです、このようになった組織はあっという間に内部分裂が起こり崩壊の道を辿ることになります。
私は幾度となくこのような組織を見てきました、参謀にYESマンを就けることは自ら経営者失格を周知させることと変わらぬことだということです。
成功する人は従順な良い子だけでは組織が成長しないことを知っています、異種な思考を持つ参謀を得てはじめてアクセルとブレーキが備わるのです。
大事を成すには、まずは全ての関わる人の本質を見極めることが肝要です。
経営者の最大の仕事は人事です、それから事業を組み立て利益活動を行うのです、これを「経営」というのです。
誤った人材登用は最大の経営失策となり、遅かれ早かれ必ず結果に表れます。
「我、兵を持って雌雄(しゆう)を戦いで決せん。 塩をもって苦しめることはせぬ」
雌雄とは白黒、もしくは勝ち負けなど陰陽の意味を表しています。
戦国の名将上杉謙信の実に情を感じる言葉です、是非とも心に刻んでいただきたいと思います。
この一言は、ご存知「敵に塩を送る」という諺の起源です。
武田信玄が3国同盟を破り今川に攻め入ったとき、それに激怒した今川が北条と手を組み武田領の周囲を閉鎖し物資の道を絶ちました。
これを聞き及んだ謙信は宿敵であるにも関わらず、武田軍に今の長野県松本市で塩を送ったのです。
この美談は、今もなお「塩の市」改め「飴の市」として松本市の中心街に受け継がれています。
この一件の後、信玄は謙信に命よりも大事にしていた伝家の宝刀を贈ったのです。
ちなみに上杉謙信は戦国武将一の名刀コレクターとして知られており、28もの名刀を残し国宝に指定されているものもあります、その多くは現在各地の博物館などに保管されています。
どんな時もどんな相手に対しても正々堂々と渡り合うこと、それが人の正しい道ということです。
そういう人には、何も言わなくも周囲は自然についていくものです。
言葉や外見で幾ら飾ろうとも、生き方やビジネスへの姿勢が醜くては人を心から魅了することはできません、周囲にいる人の立場を重んじて義を通すことが肝要です。
「兵が多いか少ないかで決まるのではなく、一つにまとまっているかどうかである」
大友一族である立花宗茂の組織を作る者への金言であり、経済誌でもよく出現する名言でもあります。
立花宗茂は、島津忠長・伊集院忠棟の率いる5万を超す島津軍を相手に数百という僅かな兵で立花城に籠城し、兵法の計を次から次へと繰り出しては島津軍を大いに手こずらせた文武に優れた策士です。
その策士である宗茂が、島津軍を退けた後に放ったこの言葉は流石に重い一言です。
ビジネスの世界でも同様に、組織力とは数の勝負ではなく目標を一つにしてまとまることにより少人数でも大きな事を成し得ることができるのです。
ビジネス勝者に必須なのは、資金力や組織力の数の勝負ではなくあくまでも経営テクニックと戦略戦術です。
的確な戦略戦術は、資金や労力を数倍にも高めることが可能となります。
ベンチャー企業は無いもの尽くしです、無いことを嘆くより有るものに大いに感謝すべきです。
社員や事業パートナーは量よりも質が重要になります、そして社員が10人しかいないと嘆くのではなく一緒に未来を築く社員が10人もいると奮起することが肝要なのです。