下戸とはアルコールが飲めない人や飲んでもすぐに酔ってしまう人を指して言いますが、アルコールに強い人でも飲み過ぎると起こる二日酔いも実は同じアルコールの科学で証明できるのです。
アルコールは肝臓でアセトアルデヒドに分解され、更にアセトアルデヒドは同じく肝臓で酢酸に分解されます、そして酢酸も最終形の水分と二酸化炭素に分解され体外に排出されます。
ここで重要になるのが、アルコール分解酵素(アルコール脱水素酵素)とアセトアルデヒド分解酵素(アセトアルデヒド脱水素酵素)です、この2つの分解酵素は生まれ持っての遺伝や経験による獲得により総量が決まってしまい人によって正常値を100とした欠損率が異なるのです。
世界的にみてアジア系人種はどちらの酵素も欠損率が高いという研究結果が出ていますが、タイ人やカンボジア人は欠損率0というドイツ人やロシア人並みの酵素保有率を持っています。
さて、この2つの分解酵素ですが人によって保有率が異なるということが下戸や二日酔いになりやすい人を生んでいます。
アルコール分解酵素がゼロもしくは少ない人は下戸となってしまい身体がアルコールを受け付けません、またアルコール分解酵素は正常でもアセトアルデヒド分解酵素が少ない人は酔いやすく二日酔いにもなりやすい人となります。
実は二日酔いの原因はアルコール自体ではなく分解後に生じるアセトアルデヒドにあるのです、このアセトアルデヒドは人によっては有害な猛毒でもあり頭痛や吐き気を引き起こします、またタンパク質と結び付きやすいので癌の発祥原因とも言われる有害物質です。
横道にそれますが北欧系産のヨーグルトにはフルーティな味付けとしてアセトアルデヒドが添加物として含まれる場合があります、北欧系の人にとってはアセトアルデヒドはすぐに分解され身体にはほぼ無害なのですがアジア系の人にとっては有害になる人もいるので注意が必要です。
さて、ではかなり飲んでもケロっとしている人はどんな身体構造をしているのでしょうか、それはアルコール分解酵素が弱いか正常でアセトアルデヒド分解酵素が正常か強力な人です。
つまりゆっくりとアルコールが分解され、分解された瞬間にトコロテン式にアセトアルデヒトが分解されるので身体の血中にはアルコールと酢酸が増えるだけでアセトアルデヒドが少量しか存在しません、だから幾ら飲んでも楽しくなるばかりで頭痛や吐き気もないのです。
ただしアルコールに強い人も飲み過ぎには要注意です、どんなに強い人でも肝機能には限界というものがあるのですから。
最後に横道ですが、最新のゲノム分析で日本人のアルコール分解酵素の遺伝子であるADH1Bは約2万年前に変異し、アセトアルデヒト分解酵素であるALDH2は7500万年前に変異し変異遺伝子が増えてきたことが解りました、これらから下戸は確実に遺伝によるものだということが結論付けられたのです。
昔から食事の際には必ずビールを味噌汁やスープ代わりに飲んでいる私は完全にビール党です、同じ醸造酒でもワイン(シャンパン含め)や日本酒(紹興酒含め)はどうも身体に合わないようで勧められれば抵抗も無く飲みますが自ら進んで飲むことはあまりありません。
さて、そんなビールですがアメリカでは「リキッドミール(液体食)」、日本では「飲むご飯」と称する人たちがいます、勿論私もその一人で本当にご飯代わりになると考えています。
蒸した麦を醗酵して作るビールには炭水化物(糖質)とタンパク質が含まれており脂質や食物繊維はゼロです、またカリウムやマグネシウムなどのミネラル分も含まれており成分だけでいえば量はかなり水増しされてはいるものの食物繊維抜きのバケット(小麦と塩だけで作るフランスパンの一種)やクラッカーだと言っても過言ではありません。
つまりバケットで摂れる栄養素をビールで補えるわけです、勿論それなりの量を飲んだ場合となりますがビール党の人は食べるよりも飲んでお腹を満たすほうが好きなのですから都合がいいのです。
飲みながら腹が膨れるご飯やパンを避け、おつまみに足りない食物繊維やビタミン類を合わせれば主食を摂らずに食事と同様の栄養素が摂取することができるのです、まさに「食べるご飯」だと思います。
更にビールに含まれているホップはアンチエイジングや免疫力増強に効果があり更には利尿効果のある薬効成分が含まれていますので、ご飯に加えて抗酸化サプリメントを同時に飲んでいるようなものです、ビール党の人は皆さん肌つやがすごく良いのは頷けます。
成人後ほぼ毎日ビールを飲んでいる私は風邪もひかないし夏ばてもありません、そして還暦過ぎて久しくも歩くのは早いし筋力もほとんど衰えず健康そのものです。
食事の際だけではなくウイスキーのチェイサー代わりにまでビールを飲むビール党の呑兵衛の言葉では説得力もありませんが、自身の身体に合うものを好きなように飲んで食べて大いに健康なのだから一つの根拠としての戯言だと聞いていただければそれでいいのです。
2000年も前に中国で書き記された「漢書」によると酒は万病に効くとされています、それが日本に伝わり「酒は百薬の長」と言い換えられ今に伝えられています。
西洋でもアスピリンを発見した西洋医学の父であるヒポクラテスが「ワインは万病に効く」と自書に書き記しています、では本当にアルコール摂取で健康になるのでしょうか?
結論から申し上げますと世界中で約10年間にわたるアルコール摂取における疫学調査が行われ調査対象者は10万人を越えています、これらの調査報告書は1981年にイギリスの医療機関によってまとめられました。
この報告書の総論として、「アルコールを毎日適量飲んでいる人はあらゆる病気に対して耐性があり、まったく飲まない人や過度に飲んでいる人に比べて心身ともに活力があり健康である」、ということが結論付けられています。
この適量というのはどれほどかというと人によっても異なるようですが日本人の場合では概ね1日20gだそうです、ビールで500cc、ウイスキーで2ショット(60cc)程度に相当します。
更に報告書では100歳以上で健康の人の60%の人が毎日お酒を飲んでいるという事例もあります、結論として「酒は百薬の長」というのはまんざら嘘ではないということです。
これは50年間ほぼ毎日アルコール摂取している私自身が感じていることですが、アルコールは楽しく飲んでこその薬であり気持ち悪くなるほど飲んだら確実に毒になると思います。
また仕事が忙しくて1ヶ月以上ほとんどお酒を飲めない時期が過去数度ありますが、いずれも不眠症に悩まされたり精神的にも活力が減退しました、まあ理由はそれだけではないのでしょうがお酒を毎日楽しく飲めるというストレスフリーな状況そのものが心身が健康だということなのでしょう。
適量のアルコールはドーパミンに始まり最終的にセロトニンの分泌を促しストレスを解消してくれます、気持ちよくなってきたらそこで止めておくのがよろしいようです、みんなで飲む際には互いの健康に気遣い食事という場を楽しみながら飲むようにしたいものです。