近年のカスハラ(カスタマーハラスメント)被害の拡大を受けて東京都は全国に先駆けて「カスハラ防止条例」を今年度内にも施行する動きをとっています、これまで多くの被害相談を受けての動きですが思った以上に素早い動きに近年の社会情勢を見て取れます。
このカスハラ(カスタマーハラスメント)とはショップ販売員などに対する顧客の行き過ぎた行為や要求を指し、コンビニエンスストアや飲食店、また銀行や証券会社の窓口担当者に対して執拗な苦情や土下座の要求などを行う行為をいいます。
これらの行為により心身的苦痛から退社したり酷い場合は入院に至るケースもあり、そうでなくても人手不足で悩むコンビニエンスストアや飲食店などでは重大な営業妨害であり当然利益も失われることになります、つまり東京都はこうした経済に負の効果を齎す行為を阻止しようということなのです。
東京都が先駆けて施行すれば全国に広がるのは必至で都道府県別の条例ではなく国の新法として国会で論議することになると思います、条例では罰則は設けずに既存の刑法の範囲で対応できるとしていますが他のハラスメントと合わせ技での新法が必要な時期に来ているのだと思います、それにしても中央政治は地方政治に比べて動きが常に鈍いと感じる昨今です。
一言で世界に影響を与える経済人となったイーロン・マスク氏は自身のSNSで「日本は滅亡するだろう」と投稿しました、この発言の裏にあるのが2024年1月22日に発表された日本の人口統計であることは経済ニュースに敏感な人は即理解しただろうと推測します、補足しておきますと世界中のニュースとして流れたのは統計発表の2週間後でした。
その日本の人口統計の発表した数字は多くの知識人が予想していた数字を10年先取りした驚異的な数字でした、総人口は66万人の減少ですが日本国籍の人だけでの減少は83万人です、更に問題は15歳未満の人口が32万人減少しており出生数は戦後最低を記録していることです、つまり日本は少子高齢化が予想以上に進んでいるという結果が明らかになったのです。
もっとも3年に渡る新型コロナウイルスの影響もあるのでしょうが、先日のニュースで民間企業が実施した未婚の人へのアンケート結果で「子供は欲しくない」という人が60%近くに上ったというのは更に衝撃的でした、日本は物理的にもそして意識も確実に人口減少に急速に向かっているのは事実です。
ただ本当に人口減は国を衰退させていくのでしょうか、多くの経済人が口にする衰退とは総生産力(GDP)を指し国民の豊かさを指しているのではありません、ヨーロッパの多くの国では人口こそ少ないが豊かな暮らしをしている国は少なくありません、「日本は確実にアメリカが台頭する前に繁栄を誇っていたヨーロッパの国と同じ道を辿っている」、少なくても私はそう考えています。
2024年2月22日、日経平均株価はついに終値で3万9,000円を超え1989年12月29日というバブル経済絶頂期につけた3万8,915円を34年ぶりに高値更新しました、個人投資家の多くは「失われた30年」の終焉を口にしていますが本当に「失われた30年」は終焉し強い日本経済が復活するのだろうか。
そのニュースが流れた1週間後、今度は大手製造業の大幅なリストラのニュースが相次いで流れました、不思議なことに業績不振でのリストラに混じって最高益を叩き出した企業も大幅なリストラをこの段階で実施しようとしています、このアンマッチな状況をどう分析したらいいのだろうか、いったい日本経済は今後どっちの方向に向かおうとしているのでしょうか。
こういう状況の時には表面的な状況だけを見て判断していると取り返しの付かない事態に陥ります、表面には見えていない事実を正確に掴む必要があります、例えばこの時期での好業績企業の大幅なリストラの裏にはDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入が進んでいるという事実があります。
DXとはこれまで人間が行っていた業務をAIや全自動化無人システム(ロボット)に行わせようとする施策であり、これらは24時間265日休み無く稼動できるため多くの余剰人員が発生します、つまりその結果においての早期退職制度の導入ということが解ります、早期退職制度には莫大な費用がかかります、つまり好業績で得た多くの余剰資金を使って企業のスリム化を前倒しに進めているということです。
ではその結果において今後日本の景気は上向いていくのでしょうか、私は二極分化が極まり部分好調&全体不調のシナリオに向かうのではないかと考えています、その分かれ目となるキーポイントは少子高齢化と為替の変動にあります。
一部の企業は円安を追い風に現在は最高益を叩き出せています、しかし2年前の110円前後に対ドル価格が戻ったら輸出企業は一気に大赤字に転落します、少なくても景気予想は一部を見て全体を論じたところで意味が無いということを理解すべきです。
「ついに日本はドイツに抜かれ名目GDP世界ランキング4位に転落」という報道がされています、でもこれは既に10年以上も前に予測されていたことなので大きな話題でもないように感じるのは私だけでしょうか、ちなみに大方の有識者の予想では2030年までにインドにも抜かれて5位に転落すると言われています。
基本的に言いますと名目GDPは確かに国の総生産を現していますが米ドルに換算した数字でしかありません、超円安の現在ではドル建てで計算すれば4位となるのは当然でしょう。
この名目GDPよりも重要なデータは一人当たりのGDPです、名目GDPは人口が多ければ多くなる傾向になりますが一人当たりのGDPは国民一人当たりの生産性を表すので指標としては現実的な数字だと思います、その一人当たりのGDPでいうと日本は31位という悲観的な順位となります、でもこれが現実の日本の経済力の姿だと思います、つまりけっして裕福な国ではないということです。
一人当たりのGDPが高い国は中東の地下資源を有する原油国や国を挙げての国家事業として漁業・林業・農業を推進している国です、国家事業で国益を上げている国はヨーロッパによく見られます、オランダは面積辺りの収益性は世界一位であり少ない国土を有効活用して少ない労働力でも最大限の収穫を上がられるように巨大な工場のようにシステム化しています。
日本は世界有数の海洋国家であり海底資源としてのハイドロメタン(固体ガス)など期待の海底資源を有しているものの、それを具体的に海底から引き上げて収益化するには気の遠くなるほどの年月と資金が必要であり現時点では期待薄でしょう。
更に海洋資源でいえば高度成長期を影で牽引したクジラ漁も今では各国の非難を浴びて禁止され壊滅状態です、ノルウェーのような国家事業としてマグロやサバ漁をシステム化すれば期待はできますが大きな既得権などの障害が存在していますので簡単にはいきません。
少子高齢化が進む日本では今後総人口と就労人口の急激な減少は避けられず、一人当たりのGDP向上を国を挙げて推進しなければ先進国とは名ばかりの極貧国に転落していくのは目に見えています、未来志向で本当のイノベーションを起こせる強いリーダーが求められる日本ですが真に国の未来を考えイノベーションを起こせる人材がいるかどうかが最大の課題でしょう。
新型コロナパンデミックの終焉により海外からの観光客が日本に大挙して戻ってきました、入国規制撤廃から半年後の日本では至るところで小バブルが発祥しています、特に飲食業界では80年代のバブル景気をも凌ぐ強気の姿勢が見て取れます。
先日オープンした東京湾に面する豊洲の巨大商業施設のフードコートでは外国人観光客向けの高額メニューがニュースにもなっていました、なかでも6,980円の海鮮丼は飛ぶように売れているといいます、ニュースなどで「インバウン丼」と銘打たれたこの海鮮丼は本国の日本料理店で食べるのと同じ価格で具が多く新鮮で美味しいと好評です。
地方の観光地でも同様で4,000円のカツカレーや5,000円のてんぷら定食などがランチメニューに誕生しています、ハンバーガーショップで食事を済ませている日本人観光客を脇目に外国人観光客は大いに円安を堪能しているようです。
都内のレストランでもこれまで多くの店で上限が1万円程度だったコースメニューが最近では2万円や3万円というコースも続々と誕生しています、またクラブやラウンジで10万円を超えるシャンパンやワインを複数本注文する人が私の周辺にも徐々に増えてきました。
飲食業界だけを見るとバブル前夜を思い起こします、景気回復のきっかけは常に飲食業界に始まります、その意味では他の業界の値上げラッシュもしばらくの間は段階的に進んでくるでしょう。
この間の生活は一時的には苦しいのですが各業界で大幅な賃上げのニュースも出始めています、これが一巡すれば30年前までの強い日本経済が形成されてきます、そこまでしばらくは消費者物価と所得水準に目が離せません。
こういうバブル前夜こそ自身にお金の流れを作るのは自身が先にお金を回すしかないことを忘れないことです、次代の成功者は既にこのチャンスを逃さずお金を市中にどんどん回し始めています、不思議なのですがお金はお金を回した人にしか戻ってこないのです。