国連開発計画が先月発表した最新の「豊かさランキング」(HDI値による)で日本は24位と順位を下げ先進諸国で最低の順位となりました、ちなみに1位から3位はスイス、ノルウェー、アイスランドでアジアで最高位は香港の4位です。
この豊かさを測るHDI値とは健康・知識・生活水準の3つの指標を数値化して最終的に人間開発指数(HDI)を割り出しています、健康は平均余命を基に計算され、知識は予測就学年数などを基に計算され、生活水準は国民総所得を基に計算されています。
ここで推察できるのは日本の数値が上がらない理由は生活水準の基となっている所得の低さだけです、国民一人当たりのGDPが日本は現在32位なのですから当然といえば当然の結果です。
ただ所得が低いから困窮しているのかというと物価自体が先進国では最低ラインであり平均所得だけで豊かさを測れないとは思いますが、現在の指標の計算方式があくまでも米ドル換算での数値なのですから致し方ない結果となっています。
また日本国内での豊かさアンケートの結果は実情をより正確に反映しています、最新の結果では「ゆとりがなく希望が持てない」という人が始めて60%を超えました、2008年のリーマンショック以来の調査で最低の結果となりました、別の調査では20代の70%の人が「未来に希望が持てない」という結果もあります。
各種の数字だけを拾えば30年前までの経済大国だった日本は今や発展途上国並みの生活水準に落ちてしまっています、そして貧富の格差は広がるばかりです、生活に困窮している人が増える一方で個人の金融資産総額が過去最高値を記録しました、日本は豊かなのか貧しいのか解らなくなる結果が両極端に出ています。
どのような状況であれ希望だけは捨てるべきではありません、戦後まもなく生まれた私の子供の頃は日本総極貧時代でした、でも国民の全員が未来に希望を持っていました、その10年後の日本は世界を震撼させたほどの復興の速さと経済力の復活を遂げたのです。
「ゆとりがない」と言いながらも自助努力せずじっと我慢だけしているうちは生活向上は遠のくばかりです、そして未来志向で新たなことに挑戦し続けている人との経済格差は広がる一方となるのは至極当然の結果だと思います。
今3月13日、日銀は2016年1月に導入したマイナス金利政策を8年ぶりに終了させ金利を引き上げることを決定し21日より実施しました、これによって各金融機関もローン等の金利を引き上げました。
ちなみにマイナス金利政策とは金融機関が国庫に預ける場合に手数料を取られますが、この手数料が貸付金利を上回ることにより実質的に貸し付ければ損を出すことにより生まれた言葉で、貸付金利自体がマイナスになることではありません。
このマイナス金利政策の終焉によって経済シンクタンクでは、この先の市民への影響として住宅ローンをはじめ各種ローンの金利が上がり、また段階的に金利が引き上げられる見通しであり返済が困難になる法人個人が増えると警鐘を鳴らしています。
マイナス金利政策時代に多くの人は固定金利ではなく当面の金利が低い変動金利を選択しています、これが金利上昇によって返済額が高くなってきます、加えて物価上昇も今4月から更に進む状況から所得上昇が追い付かずに多くの人が破綻状況になると予測しているのです。
残ローンがある持ち家を売ってローンを清算し賃貸に移るという具体的な相談も不動産業者に増えているようですが、ほとんどがオーバーローンであり家を売ってもローンを清算することはできません、更には新型コロナでの緊急融資の返済も63%の人が遅延している状況が追い打ちをかけます。
いつの時代もこういった状況の際にはみんなと同じことをしないことが重要です、金利上昇を逆手にとって実質的に返済額を減らすよう思考するのが結果的に勝者になるのです、世の中がどのような状況になっても選択を間違えなければ勝者になり間違えれば敗者になるということです。
近年のカスハラ(カスタマーハラスメント)被害の拡大を受けて東京都は全国に先駆けて「カスハラ防止条例」を今年度内にも施行する動きをとっています、これまで多くの被害相談を受けての動きですが思った以上に素早い動きに近年の社会情勢を見て取れます。
このカスハラ(カスタマーハラスメント)とはショップ販売員などに対する顧客の行き過ぎた行為や要求を指し、コンビニエンスストアや飲食店、また銀行や証券会社の窓口担当者に対して執拗な苦情や土下座の要求などを行う行為をいいます。
これらの行為により心身的苦痛から退社したり酷い場合は入院に至るケースもあり、そうでなくても人手不足で悩むコンビニエンスストアや飲食店などでは重大な営業妨害であり当然利益も失われることになります、つまり東京都はこうした経済に負の効果を齎す行為を阻止しようということなのです。
東京都が先駆けて施行すれば全国に広がるのは必至で都道府県別の条例ではなく国の新法として国会で論議することになると思います、条例では罰則は設けずに既存の刑法の範囲で対応できるとしていますが他のハラスメントと合わせ技での新法が必要な時期に来ているのだと思います、それにしても中央政治は地方政治に比べて動きが常に鈍いと感じる昨今です。
一言で世界に影響を与える経済人となったイーロン・マスク氏は自身のSNSで「日本は滅亡するだろう」と投稿しました、この発言の裏にあるのが2024年1月22日に発表された日本の人口統計であることは経済ニュースに敏感な人は即理解しただろうと推測します、補足しておきますと世界中のニュースとして流れたのは統計発表の2週間後でした。
その日本の人口統計の発表した数字は多くの知識人が予想していた数字を10年先取りした驚異的な数字でした、総人口は66万人の減少ですが日本国籍の人だけでの減少は83万人です、更に問題は15歳未満の人口が32万人減少しており出生数は戦後最低を記録していることです、つまり日本は少子高齢化が予想以上に進んでいるという結果が明らかになったのです。
もっとも3年に渡る新型コロナウイルスの影響もあるのでしょうが、先日のニュースで民間企業が実施した未婚の人へのアンケート結果で「子供は欲しくない」という人が60%近くに上ったというのは更に衝撃的でした、日本は物理的にもそして意識も確実に人口減少に急速に向かっているのは事実です。
ただ本当に人口減は国を衰退させていくのでしょうか、多くの経済人が口にする衰退とは総生産力(GDP)を指し国民の豊かさを指しているのではありません、ヨーロッパの多くの国では人口こそ少ないが豊かな暮らしをしている国は少なくありません、「日本は確実にアメリカが台頭する前に繁栄を誇っていたヨーロッパの国と同じ道を辿っている」、少なくても私はそう考えています。
2024年2月22日、日経平均株価はついに終値で3万9,000円を超え1989年12月29日というバブル経済絶頂期につけた3万8,915円を34年ぶりに高値更新しました、個人投資家の多くは「失われた30年」の終焉を口にしていますが本当に「失われた30年」は終焉し強い日本経済が復活するのだろうか。
そのニュースが流れた1週間後、今度は大手製造業の大幅なリストラのニュースが相次いで流れました、不思議なことに業績不振でのリストラに混じって最高益を叩き出した企業も大幅なリストラをこの段階で実施しようとしています、このアンマッチな状況をどう分析したらいいのだろうか、いったい日本経済は今後どっちの方向に向かおうとしているのでしょうか。
こういう状況の時には表面的な状況だけを見て判断していると取り返しの付かない事態に陥ります、表面には見えていない事実を正確に掴む必要があります、例えばこの時期での好業績企業の大幅なリストラの裏にはDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入が進んでいるという事実があります。
DXとはこれまで人間が行っていた業務をAIや全自動化無人システム(ロボット)に行わせようとする施策であり、これらは24時間265日休み無く稼動できるため多くの余剰人員が発生します、つまりその結果においての早期退職制度の導入ということが解ります、早期退職制度には莫大な費用がかかります、つまり好業績で得た多くの余剰資金を使って企業のスリム化を前倒しに進めているということです。
ではその結果において今後日本の景気は上向いていくのでしょうか、私は二極分化が極まり部分好調&全体不調のシナリオに向かうのではないかと考えています、その分かれ目となるキーポイントは少子高齢化と為替の変動にあります。
一部の企業は円安を追い風に現在は最高益を叩き出せています、しかし2年前の110円前後に対ドル価格が戻ったら輸出企業は一気に大赤字に転落します、少なくても景気予想は一部を見て全体を論じたところで意味が無いということを理解すべきです。