「兵が多いか少ないかで決まるのではなく、一つにまとまっているかどうかである」
大友一族である立花宗茂の組織を作る者への金言であり、経済誌でもよく出現する名言でもあります。
立花宗茂は、島津忠長・伊集院忠棟の率いる5万を超す島津軍を相手に数百という僅かな兵で立花城に籠城し、兵法の計を次から次へと繰り出しては島津軍を大いに手こずらせた文武に優れた策士です。
その策士である宗茂が、島津軍を退けた後に放ったこの言葉は流石に重い一言です。
ビジネスの世界でも同様に、組織力とは数の勝負ではなく目標を一つにしてまとまることにより少人数でも大きな事を成し得ることができるのです。
ビジネス勝者に必須なのは、資金力や組織力の数の勝負ではなくあくまでも経営テクニックと戦略戦術です。
的確な戦略戦術は、資金や労力を数倍にも高めることが可能となります。
ベンチャー企業は無いもの尽くしです、無いことを嘆くより有るものに大いに感謝すべきです。
社員や事業パートナーは量よりも質が重要になります、そして社員が10人しかいないと嘆くのではなく一緒に未来を築く社員が10人もいると奮起することが肝要なのです。
今回の東京2020オリンピックは史上初の1年延期と無観客という歴史に残るオリンピックとなりました、更に言うと過去最高の大赤字も記録に残るでしょう、開催が決まった時点での開催費用は7300億円でしたが延期と来訪者の新型コロナウイルス感染防止対策などにより最終的な費用はその倍以上の1兆6000億円となりました。
経済効果も30兆円以上と目論みされていましたが逆に当座は4兆円の赤字になると試算される悲惨な状況です、国内外のメディアは口をそろえて「大失敗」と書き立てていますが果たして本当のところはどうなのでしょうか、あくまでも私見ですが公共メディアで記事を書く人は現実の数字ばかりに気を取られており本来の経済という本質を知らないのではないかとさえ思えてきます。
経済というものを理解していないとこういう記事になっても致し方ないでしょう、しかし一人くらいは正確に経済効果や経済循環を理解して記事を書く人がいてもいいのではないかと思うのです、なぜならそれなりの大学を出て勉強してきているはずなのですから国際情報を配信するメディア企業のリポーターなら少なくても経済循環を理解していて当然だと思うのは私だけでしょうか。
さて経済という観点で今回の東京2020オリンピックを検証するならば4兆円の赤字は未来の収益への投資だと考えることができます、何故ならそのお金は日本国内の市中に落とされ循環するものだからです、IOCへの支払いなど国外に出ていく費用もありますがこれも時間をかけてコンテンツ料収益や日本製品の購買増などで充分に回収可能だと考えています。
つまり国策としての経済起爆剤として考えればこの後の日本国内の経済効果は充分に期待できると思います、むしろ新型コロナウイルスパンデミックによる経済失速を緩和させた効果を考えるべきだと思うのです、こういう記事をメディアの記者はどんどん書いてほしいのです。
4兆円の赤字は水の泡となって消えたのではありません、市中に回されただけなのです、この結果と効果は数年後に明確に理解できるでしょう、だから2030年の冬季オリンピックに日本が手を上げるのは決して反省の無い無謀な判断ではなくむしろ未来志向での思いきった判断だと評価できます。
経済は今だけを見ては大きな判断ミスを犯します、法人経営もこれと何ら変わるものではないのです、終わってしまった過去ではなく今から開かれる未来が重要なのです、常に10年・20年というスパンでゴールを見て今この瞬間何をすべきかを考えましょう、その方が人生が楽しくないでしょうか?
オリンピックというと皆さんはスポーツの祭典という印象が強いと思いますがオリンピック開催地へ齎される経済効果は本来なら計り知れないものがあります、今回の東京2020オリンピックの場合は約3兆円と試算されていました、ただこれはオリンピック関連の直接経済効果であり国民のマインドによる経済底上げ効果はどの機関でも試算不可能なほどの額になるのが普通です。
例えば過去日本が最も大きく経済成長したのは私が生まれた年の1956年から1973年までの「戦後の高度成長期」です、そして前回の東京オリンピックが1964年です、つまりオリンピック開催をきっかけにその前後の数年間は短期間に大きく経済成長しました。
これはどの国でも同じことです、それだけに今回も東京都の予算で行われるオリンピック誘致に安部政権が大きく関与し国をあげての絶大なる支援を行ったのです、特に大震災の復興活動も予想を超えて長期化しそうな気配の中でです、オリンピックにかける意気込みはどれほどのものだったかが伺えます。
案の定オリンピック前の2019年10月1日に予定通り消費税が上がりました、そして高度成長期、バブル期に継ぐ大きな経済成長期の到来を期待していました、ところが新型コロナウイルスパンデミックの襲来で1年延期、そして強引に開催するも無観客での限定的な開催となりました。
ではオリンピック開催国によるオリンピック特需は今回は無かったのでしょうか、いえ私はそうは考えていないのです、まず開催が決まるや否や政府は早くもオリンピック経済特需第一弾を打ち出しました、その内容とは東京を大胆な規制緩和を行う国家戦略特区に指定することを検討するというものです。
オリンピック関連のインフラや競技場を始めとした各種施設の整備に民間の資金や技術を積極的に活用するのです、つまりこれにより民間企業に大きな資金が流れ、それが順繰りに市中を回る経済循環が起きたわけです、また開催に疑心暗鬼だった国民は開催が決まるや大型テレビや録画装置を購入しました、家電量販店は大幅な売り上げ増になりました。
また売れ残りを心配していた関連グッズや応援グッズも開催と同時にネット通販では売り切れ続出です、スポーツ用品もネット通販を始め売れ行き好調だといいます、今回の緊急事態宣言下での東京2020オリンピックですが結果的には失敗だったのか成功だったのか、その結論を今出すのは少し早計だと思います。
重要なのは政府の施策などではありません、国民が新型コロナ撲滅と強い経済大国復活を信じて未来志向の行動をこの機会を逃さずに起こすことなのです、それが数年後に結果的に起こる本当の意味でのオリンピック特需だと思うのです。
オリンピック史上初の延期、更には緊急事態宣言下での無観客開催という歴史に残る東京2020オリンピックが無事閉会致しました、日本はメダル数及び金メダル数の記録を開催国の地の利も受け大幅に更新しました、期待された選手が予選敗退などの波乱もありましたが大きなトラブルも無く喜ばしい結果であったと思います。
さてオリンピックですが私は単なるスポーツの祭典だけとして考えていません、むしろ注目するのはそれぞれの参加国の国内事情と動向です、オリンピックは世界中に国力(経済力と国際影響力)と品格をアピールする最大のイベントだと思うのです。
事実日本は前回開催の東京1964オリンピック後に高度成長を成し遂げ多くの古来からの日本文化を世界中に広げることに成功しました、それまでは謎に包まれた神秘的な民族だと思われていましたがオリンピックによって勤勉で団結力がある民族であることを世界中に知らしめたのです、この結果日本を訪れる観光客が一気に増え日本人との国際結婚もブームになったほどです、先の第二次世界大戦での敗戦国日本がオリンピックを通して世界に戦争の反省と経済復興を認められたのです。
もう一つ、オリンピックは単なるスポーツイベントではなく国力を示すイベントである証拠に、事実今回の各国のメダル数はGDP国別ランキング表の順位そのものであることを見ても一目瞭然です、特にベスト3はGDPの順位通りです、順位と違うのはロシア(今回は出場停止の処置でロシアオリンピック委員会として出場)とインドです。
ロシアは中国と同様に国を上げてのスポーツ新興国でGDPこそ現在11位ですが毎回メダル数は上位を維持しています、またインドは国策としてスポーツには力を入れていません、一説にはカースト制度の影響が大きいと言われています。
ところで経済力がメダル数に出るのはスポーツ振興には巨額の資金が必要だからです、国の予算だけではとても賄えないのでスポンサー企業が活動を支援します、つまり支援できるほどの企業がその国に多数存在していなければメダルを取れる選手を育成できないのです。
今回のメダル数ランキングの上位10ヶ国はあらゆる競技に選手を輩出しています、新競技の選手を育てるにも競技場や練習場など多額の資金が必要な事がこれらを見ても解ります、また競技における選手のマナーや姿勢、そしてその国の応援の姿勢やオリンピックの報道、こういったものも将来の国益に直結してきます、ですから私は競技以上に国の動向や情報発信を注意深く観察するのです。
何故ならテレビを通して子供たちがそれを見ているのです、もしマナーやスポーツマンシップに欠ける行為があればその国に対してけっして良い印象を持ちません、この子供たちが社会人になったとき世界はどのようになっているでしょうか?
グローバル化が叫ばれる中でどの国へ経済支援をしてどの国と共同研究や共同事業を行いたいか、子供の時に植えつけられた鮮明な記憶はこういったところに確実に現れるのです、スポーツイベントであるオリンピックですがこういう現在の国力と将来のその国の状況を間接的に読むことができるのです。
今回の東京2020オリンピックでは僅かな政治家の政治的戦略での妙なライバル心や過去の恨を引き合いにした短絡的で稚拙な行為を繰り返してしまった国があります、残念ながら今ではなく10年後にこの10倍大きなブーメランとなって返ってくることでしょう、その時に慌てて謝罪したところで時すでに遅しなのです。
逆にこんな緊急事態宣言下での開催に感謝の意を素直に表し開催に友好的だった国や競技で好意的な姿勢を表した国、あらゆる面で未来において友好的な関係を築きたいと誰しも思い現実にその方向へ進んでいくことでしょう、スポーツの祭典であるオリンピック開催をきっかけに近未来における各国の繁栄と衰退が怖いほど正確に見て取れるのです。
日本の選手には今回多くの日本人との二世や三世が存在していました、先のオリンピック後に日本は急速なる経済復興を成し遂げ多くの外国人との交流が盛んに行われた証拠です、また東京1964オリンピックで初めて使われたピクトグラムはその後の夏冬オリンピックで継承され日本のセンスと工業デザイン力の高さを世界にアピールすることに成功したことも忘れてはなりません。
最後に今回の東京2020オリンピックで日本は何を世界にアピールできたでしょう、沢山ありますが感覚的に理解できた人は何人いるでしょう、一つ強調するならば新型コロナウイルス禍での開催はこれから人類が遭遇するであろう各種のウイルスとの戦いの序章でありパンデミック下での開催方法で多くの学びを得たことは確かです。
次期開催国フランスと来年冬季オリンピック開催国中国は多くの参考にすべきポイントを得たと最大限の評価を示しました、オリンピックをこういう視点と思考で観ると極めて重要な祭典に思えてくるのです。
賛否両論が入り混じった中で開催された東京2020オリンピックは残すところあと4日です、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下での開催や開会式でのパフォーマンス、また連日の金メダルダッシュにより何かと話題の多い今回の東京2020オリンピックですがいろいろな意味で歴史や世界中の人々の記憶に残るオリンピックになることは間違いないでしょう。
私にとっても上記の事項も当然のこと記憶に残ると思いますが特に意識して注視したのが開催直前の組織委員長に始まり重要責任者のポリコネ違反による辞任や解任問題です、ポリコネとは「ポリティカル・コレクトネス(political correctness)」のことで「政治的公正・妥当性適性・正義」などと訳され、性別・国籍・民族・人種・宗教・障害などを理由とした差別や偏見を防ぐ目的で公正中立な言葉や表現を用いる倫理観のことをいいます。
ちょっと前までは謝罪すれば終わった軽率な発言や二十数年前の若気の至りとも言える過去の些細な行いがまさか襲いかかってくるとは考えもしていなかったでしょう、今の時代は世界的なポリコネ&ジェンダーレス時代なのです、当然のこと東京オリンピックもこれに相応しく男女の競技種目がほぼ同じで男女混合競技も一気に増加しました。
これまでの価値観が大変化し今後は誰も考えも及ばなかったポリコネ&ジェンダーレス問題がどんな人にも起こり得るということです、その意味では開催直前に過去の自身のネタを総点検し過去ネタにポリコネ違反があったとして参加辞退した竹中直人はドタキャンだと叩かれましたが私的には堅実で潔い判断だったと評価しています。
国際的なイベントや政治的な問題ということだけではなく少し大袈裟かもしれませんが過去のちょっとした言動や行動が未来の自分に牙をむいて襲いかかってくる、今後は少なからず自分にもあると考えていた方がよいと思います、やっと自分を認められて大きな仕事を貰ったと喜んだ次の瞬間に過去を調べられて不適格という理由で白紙撤回になる、これは決して他人事ではないのです。
私は昔から何度もこういった危険性をSNSに見出してはブログなどでも忠告してきました、10年ほど前から何が起きるか解らない価値観の大変化という混沌とした不安定な時代に突入しているのですから世の中の変化に敏感になってほしいと思うのです。
今の価値観を以って5年・10年先のビジョンを考えていてはいけません、いつどこで大どんでん返しを食らうか解らないのですから、その意味では今回の東京2020オリンピック開催でのポリコネ違反問題は大きな「時代&価値観の大変化」という根拠となりました、今後の後継者への指導にも大いに活かしていきたいと思います。