「1円を笑う者は1円に泣く」というけだし名言があります、私はこの教えを社会人一年目から何度となく教えられてきました、当時は第二次オイルショックで世の中に不況の嵐が吹きまくっていた時代です、どの家庭でも企業でも節約することが美学だったのです。
その時代から10年後に入社してきた人の感覚は180度違います、所謂バブル入社組です、会社からは「お金を使え、仕事するな」と命令され毎日節税対策で接待の連続です、座っているだけでモノが売れた時代なのですから。
この10年の意識の差は極めて大きな差となって現れてきます、私の世代の人達は無駄を無くし節約することを先ず意識します、使えるものは捨てずに使える方法を考え労力を惜しみません、しかしバブル入社組は使える物まで捨てます、それを処理する労力を避け楽したいからです。
バブル経済崩壊後に某大手企業が実施した「事務用品節約作戦」、これによって社員2万人の会社で年間50億円が浮いたのです、更には電気代が15億円浮いたそうです、経済新聞にもこれが報道され、トップの意識の差はそのまま企業の強さに出ると絶賛されたものです。
10人程度の中小企業でも1日1000円節約したら年間で36万円、1ヶ月の事務所家賃の額になります、「1円を笑う者は1円に泣く」、節約できない人は何をしても絶対に成功しません、そしてお金が無いという人程、節約せずにお金が無くなれば他者のお金をあてにするのです、社会人になった時の時代背景、幸か不幸か数十年後の今になって雲泥の差となり結果に表れているように思えてなりません。
ここ30年来の日本人の関心事は景気の回復だと思います、そこで景気回復を肌で感じたら考えるべきことがありますので常に頭の片隅にでも置いていただければ幸いです、ずばり言いますと景気が回復すると明らかに社会の全てでこれまでの流れが変わってきます、災害時の緊急事態や不景気の時には生活は大変ですが意外と孤立感はありません、それは苦しいのはみんな一緒だというある意味での安心感があるからです。
しかし景気が一旦回復するとそれぞれのビジネスが忙しくなり生活も一変します、これまでのようにみんなで励まし合うという状況ではなくなります、それまでの仲間が明らかに勝者と敗者に別れていきます、またボランティアやコミュニティなどの交流会が一斉に解散していきます、これは過去の統計からも導き出される真実です。
バブル景気時代に栄華を大いに謳歌する人とそれを横目に夜逃げする人が多数いたことを今の若い世代の人は知りません、好景気とは勝者と敗者に大きく二極分化される非情な時代でもあるのです、好景気が感じられるようになると励まし支えあってきた時代が終焉します、そして誰が他者より先に青信号に変わった瞬間に飛び出すかというまさに競合社会が形成されていきます。
先に飛び出した人は次の時代の先駆者利得を約束され、次にその人の後に続く人、最悪なのが先に行く人を見て安全を確認してから渡ろうとする慎重すぎる人です、この時点で既に狭い横断歩道に大勢が押し掛けてきて渡ることすらできなくなります、いつの時代も景気回復前夜とはこんな状況です。
成功する人とはみんなが信号待ちしている間にリスクを冒してまでも安全な横断ポイントを探して既に無事渡り切っている人です、みんなと同じことをやっていては勝者にはなれません、みんながやっていることをやっていては例え上手くいっても普通の人と同じレベルで終わります。
それであるなら起業して経営者になる意味も理由も見出せません、だからまだ世の中が赤信号のうちにリスクを冒してまでも渡る術を必死に身につけることが重要なのです、そして一緒に渡ってくれる人、安全を確保しつつ渡らせてくれる人、自分に自信の無い人は常に自分の未来を保障してくれる人を探し信頼関係を結んでおくべきかと思います。
世はまさに企業が生き残りをかけた経済戦国時代です、バブル崩壊直後のように企業のM&A(合併、買収)が一つの大きな業界を生むほど盛んになりつつあります、この状況は極めて自然な経済活性状況であり間接的ながら市中にお金が循環し景気もどんどん良くなっていきます。
この時代にあって買う方も売る方も基本となるのが「企業価値算定」です、つまりデューデリジェンスといわれる資産鑑定です、ここで企業の資産価値は所有している不動産や動産は問題なく誰にでも算定できますが、問題はそれ以外の「価値が有るか否か」を直接算定できない目に見えない価値です。
商社なら営業力や営業ルート、また代理店の数や質、そして取り扱い商品の仕入先契約などとなります、技術系なら保有特許や技術力となり、サービス業ならば独自のサービス体制とビジネススキームとなり業種によってマチマチです、これらを含めてその企業にある総括した財産に注目し価値を金額に換算するのが公認会計士の腕の見せどころとなります。
もっとも困難なデューデリジェンスは目に見えないものの価値をどう算定するかです、例えば特許など知的所有権(知的財産)・技術やノウハウ・営業網・運営サイトなどは多くの場合に困難になるのが今の収益ではなくて5年後にどれほどの価値を生むかという未来予測にあります。
私は真の企業価値とは上記に示したような難しくても何とか算定可能なものではないと考えるのです、では私が企業を買収もしくは投資しようとする場合は対象企業の何に注目するのでしょうか、ズバリそれは人です、どんな価値のある営業ルートであろうが代理店網であろうが特許や技術力であろうが買う方から見れば買った後に使いようがなければ価値評価はゼロです。
本質はその持てる総括した資産を活用して「販売する人」・「他社に真似できない物を作れる人」・「他社に真似できないサービスを企画できる人」がその企業にいるかどうかです、それが例え社長一人であれ社員数千人であれ社員数には一切関係はありません、何故なら社長一人でも周りにいるパートナーが優秀であれば数十億円の売り上げは無理なく可能となるからに他なりません、そういう人材に対して未来の価値を算定するのが本来の企業価値算定ではないでしょうか。
たった一人でもそういう人がいる企業であれば数億でも数十億でも将来それ以上の利益を生む計算ができるなら買いの判断をするでしょう、真の企業価値とは従業員数でも資本金や物や資産でもありません、それを活用して利益を創出できる人がいるかどうかなのです、人数に関係なく人材の価値がその企業の真の価値そのものと考えます、つまり私は会社を買うのでありません、その人の持つ未来価値を買うのです。
未来に価値ある存在になると確信すれば例え今の状況がどうであれその時が来るまで何も利益を生まなくても買った企業の社員に報酬を払い続けます、天の時に瞬間的に起動できる価値ある人材の確保、これが私流の経営スタイルであり投資スタイルなのです。
何を以って価値と判断するか、この判断は経営者にしかできないものです、だからこそ価値判断は極めて難しいものであり、その誤りは致命傷ともなるのです、そして価値ある人を買えるチャンスが有れば間髪いれずに買っておくことです、必要なお金なら決断してから考えればよいことです、その人の未来における価値を見い出せれば躊躇う理由はどこにもありません。
かなり前の話になりますがロンドンオリンピック体操個人総合において日本人では28年振りの金メダリストとなった「内村航平」選手の記憶が久しいです、彼は両親が体操選手だったことから6歳から体操を始めます、クラブ主宰の初競技は最下位でした、しかしそんな彼に転機が訪れるのです。
それは彼が10歳の時に見せられた父親の金メダル、それを見た彼は「僕も欲しい」と人が変わったように練習に励んだといいます、その父親の金メダルはオリンピックではなくインターハイのものでした、彼は勝手に「オリンピックの金メダル」と勘違いを起こしていたのです、勘違いでもなんでもよいのです、「父のように金メダルが欲しい」という執念一つで結果的に世界の舞台で金メダリストになったのですから。
どの世界でも大きな勘違い人間は沢山います、しかし結果を出せば最大の評価に一瞬にして変わるのです、結果を出せない人に最も足りないものが「何が何でも結果を出す」、「絶対に成功させる」という周囲の誰をも圧倒させるほどの強い「執念」です、長年継続して心に貯め込んだ「執念」、このエネルギーはとてつもなく大きく周囲に伝播します、そしてこれが絶対に動かなかったものまで動かすのです。
これは決して精神論などではありません、成功者と呼ばれている全ての人の裏に存在する真実なのです、「執念」は自然な形で精神力を鍛えていきます、体力には限界がありますが精神力と思考力には限界がありません、世の中にはここぞの時に信じられないパワーで奇跡を起こす人がいます、こういう人は決して運が良いのではありません、ただ「執念」が宿った精神力が尋常ではないだけです。
「逃げない」・「諦めない」・「妥協しない」、精神力が尋常ではない人はこの3つを継続させている人です、結果的にそれが成功に繋がっていくのです、こういった人は普段から極めてエネルギッシュでクリティカルな思考と行動で結果を出して行きます、今がどんなに惨めな状況でもこの3つのことを継続してさえいれば必ずどこかで一気に飛翔します。
逆に言えばこの3つのうち1つでも怠っているうちは自分の思ったような生き方を絶対に創造することはできません、最悪なのが常に悪い結果に対する後付けで「言い訳」する人です、更に自身を擁護するための事前の予防線を張る人、こういった姿勢は既に事を行う前から「逃げ」ている確固たる証拠です。
売り上げが伸び悩む企業の経営者は必然的にコストダウンを行うことが定石のように考えてしまいます、売り上げが一定でコストダウンを行えば利益が増えキャッシュフローが向上することは誰にも解ります、「利益=売上-コスト」という単純な計算により理解できます。
コストダウンで多くの経営者が思い付く事項は人件費や家賃の固定費を削減することです、利益に繋がらない人に支払う金額を減らしてオフィスを安いところに移動するというものです、しかし残念なことに直接的な事項に目を向け始めると将来先細りするばかりとなり、更には社内外に上手くいってない事を強烈にアピールすることになります、また人も去って行き益々窮地に追い込まれてしまいます。
コストダウンを考えるなら直接的なコストダウンではなく見えないところのコストダウンが有益であり、またその要素は多数存在しています、私の過去の例ではレンタル倉庫に眠っていた在庫を思い切って全て廃棄したことがあります、損失額は3000万円以上に上りました。
仕入れは1台辺りの価格は高くなってもメーカ直送というノンストック方式に切り替えました、結果的に管理コストやストックコストなどを総合的に計算すると年間にして1000万円近くのコストダウンに成功したことがあります、確かに在庫処分の損失は出ます、しかし黒字の期に一気に行えば特別損失の計上で節税対策にもなり逆にキャッシュフロー向上に繋がるのです。
廃棄損は決算上の話しであり、既に支払い済みであり未来のコストダウンは直接的にキャッシュフロー向上という形で現れます、企業経営とは一過性の損失や決算上の赤字・黒字に囚われるのではなく現在そして未来のキャッシュフロー重視で思考することが重要です、黒字でもキャッシュフローが回らなければ倒産し赤字でもキャッシュフローが回り続ければ倒産しません。
見えないコストダウンは他にも多数あります、オフィスや店舗の照明をLEDに変え最新のエアコンに替えるだけでも思いの他大きなコストダウンに繋がります、設備投資も一時的なコストはかかりますが全てリースに変えることで長期展望で見ればこれもキャッシュフロー向上に繋がります。
コストダウンで重要なのは今だけを考えお金を使わない方法を考えるのではなく長期戦略に基づいて計画的に行うことが肝要です、更に重要なのは方法ではなくて施策タイミングであることは言うまでもありません、タイミングさえ間違えなければキャッシュフローの改善と節税との両面でのメリットが生まれるのです。
コストダウンを行うなら安直な家計簿思考ではなく長期展望と各種のテクニックを駆使して絶好のタイミングを狙って一気に行うことが肝要です、コストダウンとは一種の錬金術と同じです、錬金術は金を得る為に多くの呼び金(種金)を先に使わなくてはならないのです、この理論が明確に理解できる人は既に立派な経営者と言えるでしょう。