メーカーによってではなく、ユーザーや販売代理店によってブランドは確立されます。
一旦ブランドが確立された後が、実はブランド戦略の本質が現れます。
メーカーは使う人の立場で商品やサービスを提供する、それは使う人の利害や価値観と一致しブランドが確立されます。
ここで、メーカーがブランドが確立されたと安心して、その後に何もしなかったらどうなるでしょうか?
おそらくは、折角確立されたそのブランドは長続きはしないでしょう。
あっという間に忘れ去られる運命になります。
つまり真のブランドにはなりません、偶然ヒットした一発屋と同じで一過性の単なる流行で終わってしまうに違いありません。
「一旦確立されたブランドを維持する」、実はこれが本当のブランド戦略なのです。
「確立されたブランドを維持する」、これは並大抵の努力では継続できません。
品質管理や修理などの保障サービス、そして継続した新商品の提供と、ブランドが確立されるまでの数十倍のお金と努力が必要となります。
しかし、これによってメーカーは多くのノウハウや優秀な人材を得ることになります。
更には、売り上げや利益は勿論のこと大きな社会的信頼・信用を得ることとなり、ようやくここで世界有数のブランドメーカーとして扱われることになるのです。
メーカーはユーザーに受け入られる商品やサービスを提供する、これはユーザーの満足度を満たしてヒット商品となりブランドが確立します。
確立したブランドを維持するため、メーカーは更なる努力を継続する、努力が継続されたブランドは新たなる文化となり、そのメーカーは世界的な信頼できる本物のブランドメーカーとなるのです。
世界的な紅茶の圧倒的ブランドであるリプトン社、しかし日本にはもう1社ブランドを確立したブルックボンド社の存在があります。
世界では無名のブルックボンド社は、何故日本で紅茶の一流ブランドとして確立できたのでしょうか?
フランスの片隅で数十年間も細々と営んでいた手作りのカバン工場、今では世界有数のファッションブランドに成長しています。
これらの世界ブランドは一夜にして生まれました、それは何故でしょう?
スイスにある時計の手作り工場、これも数十年間細々と営んでいましたが、あっという間に世界で最も信頼できる時計ブランドとして確立しました、これは何故でしょう?
これらのブランド確立秘話の裏には、一流のデパートに採用された、皇室や超有名人が好んで使っていたのが雑誌に紹介された、世界的なスポーツイベントの標準品として採用された、などの特殊な理由があります。
メーカが積極的に営業したわけではありません、積極的にブランド戦略を展開したわけでもありません。
では、運が良かったのでしょうか?
違います、運だけでは本物が解る人は採用しませんし買いません。
これらのメーカに共通しているのは、「自分が使うとしたら」を一番重要課題として数十年間という長い期間をかけて、真摯に取り組んでいたからです。
その根底にある思想は、「自分が使いたくないものを、どうして他者が買うか?」なのです。
したがって、そのメーカの製品には人間の温もりを感じるのです、熱い血が流れているのを感じるのです。
そういう人間を知り尽くした機能性とデザイン、また実際に使ってみた時のフィット感にしっかりと生きているのです。
また、最も重要なことは何年使っていても壊れない、飽きないということも安心感を生みます、そして使う度に味が出てくるのです。
そういう数十年も継続させた姿勢が、何時か本物を見分けられる人の心を動かし採用されたのです。
結果、本物が解る人に採用されたことが、一般の人への信頼感となり浸透していったのです。
あの会社が採用した、セレブな素敵な女性が愛用した、世界的な国を挙げてのイベントに採用された、などが本物が解らなくても一般の人への信頼感となり、あっと言う間に広がっていくのです。
そして、世界的なブランドが一夜にして確立されたのです。
「ブランド戦略」の書籍をいろいろ読んではみるものの、何かしっくりきません。
過去の分析であったり、小規模事業者が行うにはあまりにも非現実的で空論に近いものが多いからです。
また、果たして「ブランド戦略」といいますが、「これが戦略なのか?」という疑問すら覚えるものも多数あります。
さて、小規模事業者の「ブランド戦略」を考えるとき、過去の多くの失敗例はブランドを意図的に作っているということがあげられます。
そもそも、「ブランド」とは何でしょう?
一つ言えることは、ブランドはメーカーによって一方的に作り上げるものではなく、市場によって作られるものでなくてはならないのです。
では、それは誰によって?
それは、消費するエンドユーザーであり、販売を行う販売代理店によってです。
少なくても、一般に行われているような、マーケティングによって商品コンセプトを考え、ロゴを作ってデザインを起こして広告を行い販売することがブランド戦略ではありません。
多くの失敗例は、上記の一連の行動によって現場や営業が間違った目的を作り出し、更にはそれを行うことで間違った結果を得てしまうことにあります。
そして全てが一瞬にして終了してしまうわけです、本来の最大の目的を完全に見失ってしまっています。
結果、あれだけ多くの時間とお金を費やしたのに「何故売れない?」というストレスと、当然の事に大きな在庫損失を抱え込んでしまうのです。
冷静に、真の小規模事業者が行うべき「ブランド戦略」を考え直さなくてはいけません。