私は昔から「価値」という単語を多用するようです、「物を売るのではなく自分の価値を売れ」、「より多くの価値を提供できた者が勝者となる」、「見えない価値を如何に見いだすかが成功の秘訣」などと言っています。
その「価値」という言葉ですが世の中の変化に合わせるかのように話しの中で使う人も多くなってきた感じがします、ただ本当の意味での「価値」を理解している人はビジネスの姿勢にしっかりと出てきます、したがってそれが本物かどうかは解る人には解ってしまうので注意して使用すべきだと思います。
ビジネスではコンテンツやドキュメントなどには微細な箇所にもこれでもかと充分すぎるほど神経を使う必要があります、ビジネスドキュメントは他者に自分を良く見せるための資料ではありません、自身のビジネスマインドを他者に正確に伝えるための資料なのです、これを勘違いしている人が実に多いのです。
少なくても自身の思い入れや他者にとっては意味のない将来ビジョンなどはお飾り程度に考えた方が良いかもしれません、見た目だけは奇麗に整え能書きだけは立派でも肝心のビジネススキームや最も重要な利益と分配、更にはリスクとリスクヘッジに関する記述が無い企画書や提案書が世に蔓延しています。
狭い世界の中で満足するのではなくて一度でもいいから本物の提案書を見て研究することをお勧めします、たかが資料、されど資料、資料を観ればその人のビジネスに対する熟練度と姿勢が解ります、使い回しのやっつけ仕事での提案書が世に溢れかえっています。
ましては項番の振り方や書式が統一されていない、相手の社名や担当者の氏名にミスがあるなど、どんな神経で重要な経営資料を作成しているのでしょうか、私はこういったいい加減な経営資料を作成する人とは決してビジネスをしたいと思いません、こういうものは人の心に残りません、鍋敷きに使われるか年末の大掃除で捨てられるのがオチです。
「価値」とは見えないところや微細なところにその本質が表れるのです、商品も人も企業も同様です、つまりいい加減な資料を作る人とはビジネスセンスに欠け全てにおいていい加減な人だということです、ブランドは一夜にして確立したのではありません、継続したビジネスに対する一貫とした真摯にビジネスと向き合う厳しい姿勢が作り上げるものなのです。
ティーザー(Teaser)とは「からかう」などを意味する英語ですが「じらす」という意味でも使われます、このティーザー作戦というのは顧客や取引先に対して「じらす」ことで有利に事を運ぶためのテクニックを言いますが同時に下手すると一発で信用を失いかねない「両刃の剣」的な方法と言えます、最終兵器として頭にだけ入れて置くということと相手がこれを使ってきた場合の回避方法を学ぶためにあえてここでお話ししておきましょう。
事業提携・業務提携・経営統合など企業対企業の交渉で最初は上手く進んでいるのですが話が具体的になればなるほど相手が慎重になることがあります、相手はこちらの魅力を十分に理解しており問題は経営陣の決断力か金額の問題くらいだと確信が持てるならある日の交渉を境にぴたっと連絡も情報開示も止めてしまいます、数ヶ月もこの状況が続けば相手はどう考えるでしょう?
「他に提携先を見つけたか、当社では魅力が無いと判断したか?」という不安にからげられます、そしてその不安が焦りとなりついに経営陣の判断を下す局面となります、相手から痺れを切らして連絡してきたときが絶好のチャンスです、この機を逃さず一気に契約まで進めてしまうのです、ただ、ここで相手から連絡してきたときに出し惜しみは絶対に逆効果です、更に待ってましたとばかりに喜んでもいけません、冷静に対処することが肝要です。
また連絡と情報開示を止めたとき担当者は「ハラハラ」してつい担当者同士で互いの内情を連絡しあったりしてしまいがちです、これはまったく意味が無いことになります、社内を徹底し一切の連絡も情報も止めなくてはなりません、交渉が進まずこちらが焦る前に相手を焦らすティーザー作戦は最後の勝負という時だけ使いましょう、決して乱用は禁物です。
「イノベーター(改革者)」と言うと政治の世界や経済の世界では「時の人」を思い出します、ところで「イノベーター」は次から次へと現れますが一時の人で終わらずに社会に浸透した本物の改革を残す人は極稀です、この「時の人」で終わる人と社会に浸透した「真の改革」を行う人の違いは何でしょう?
そもそも「イノベーター」とは聞こえは良いのですがやってることは明らかなる「壊し屋」です、改革とはある意味において既成の制度を壊すことから始まり新しきを作る、建築でいう「スクラップ&ビルド」そのものです、私が思うに「時の人」と「真の改革者」の大きな差はたった一つです、それはマジョリティ(多数派)に支持してもらえたかどうかです。
「イノベーター」とは言ってみればマイノリティ(少数派)でもあるのです、そのマイノリティがどんなに正義感に満ちていたとしても、どんなに正論をぶったとしても、マジョリティを説得し受け入られなければ改革なんて夢のまた夢に終わるでしょう、真の改革とは一人で粋がって行動しても成功するものではありません、世間を見方にして大きな力を得なければ更に大きな力を動かすことはできません。
「改革」を謳う人はまず自分はマイノリティ(この場合は「異端児」)であることを認識しマジョリティ(この場合は「一般大衆」)の支持のないマイノリティでは何もできないということを認識すべきです、マジョリティに支持されなければ何を行ってもそれは改革でも新事業でも何でもありません、自己満足による「改革ごっこ」にすぎないのです。
「イノベーター」として改革を成功させたいのであれば思想だ哲学だと大それた事を言う前にどうすれば世間に受け入れられるかを真剣に考えることが肝要です、マジョリティとは安定を好む人達です、その人達に受け入れられる方法はたった一つです、それは謙虚な姿勢と待ちに徹した謙虚なPR方法でしかないのです。
依然として存在している異業種交流会の売り物の一つがビジネスマッチングであり関連するビジネスを行う人との出会いの場を提供するというサービスです、このビジネスマッチングというサービスですが私的に大きな疑問があります、それは「ビジネスを行う人は本当に出会いを欲しているのだろうか?」、ということです。
友達紹介や恋人紹介などプライベートでの話しであれば出会いの場の提供は基本であり重要不可欠だと思います、しかしビジネスという世界で意味の無い紹介は逆に厄介事が増えるだけで何のメリットもないと思うのです、経営者は常に自身のビジネスを考えています、ここで最も欲しているのは出会いではなく具体的にお金を得る方法や事項なのではないでしょうか?
出会いは利益にならないなら正直不要です、自身のビジネスで確実にお金になるということが優先事項なのです、つまり本物のビジネスマッチングというサービスは関連するビジネスを行っている人との出会いの場の提供ではありません、これは単なる将来のライバル同士の顔合わせに過ぎないと思うのです、経営者は今この瞬間に具体的にお金になる成果が欲しいのです、それを相互に繋ぎ合わせるのが本物のビジネスマッチングというものでなくてはならないのです。
現存するビジネスマッチングの主催者は人脈の多さをお金に換算する典型的な他者依存型の「質より量」という庶民感覚が極まった人であるところに驚きます、したがって自身の欲している「人脈開拓」が他者にも有益だと考えてしまうのです、そもそもここが大きく間違っているのです、そしてそれが収益にはなっていないと推測できます。
本物のビジネスマッチングとはビジネスを成約させてあげるサービスでなくてはなりません、「利益は他者優先、そして自己利益はその中に染み込ませること」、これはビジネスの基本です、これを徹底して行う事が真のビジネスマッチングなのです、あくまでも「ビジネスマッチング」とはビジネスの成約を指して言います、多くの場合「ヒューマンマッチング」を行っているに過ぎないのです、その根拠に人を紹介するもビジネスに関しては放置し責任を逃れようとする姿勢が見え見えです。
ゴルフ・テニス・野球などをやられる方なら理解できると思いますが、ボールを遠くに飛ばすためには力もそこそこ必要ですがそれ以上に打ち方が重要です、ゴルフクラブ・テニスラケット・バット、これらに共通して「スゥイートスポット」と呼ばれるピンポイントがあります、このポイントで打てば驚くほど力を入れなくも遠くまで飛ばせるのです。
例えばゴルフクラブですがほんの数ミリずれてもまっすぐに遠くまで飛びませんし手に痺れが走るほどボールが硬く重く感じます、まっすぐに遠くまで飛ばすには力まないことが肝要となります、リラックスして自然体で構え腕や頭などがぶれないように「ふわっ」という感じで振り、しっかりスゥイートスポットで捉えれば「ボールってこんなにも軽いの?」って思えるほど自然に飛んで行きます。
実は経営も全く同じことが言えるのです、そして長年経営を行ってきている経営者はみなさん同じ事を口を揃えて言います、「経営はパッションではなくテクニックだ」、なにくそ精神や根性をむき出しにして無理な計画を必死で全社一丸となってやっても結果的に成果が出るか出ないかは全く別物なのです、むしろ無理が仇となって今より悪くなるかもしれません。
確かに必死で数年間全社で頑張って倒産を免れた例も多数あります、でもこれは決して全社で必死でやったからではありません、それが結果的に強調されて伝えられているだけです、その成功の裏には顧問などによる見事なまでの再生シナリオを練り上げ実行したからに他なりません、このような極めてクリティカルな作戦を考えだせる人は戦国時代でいえば「軍師」です。
軍師は名を残した戦国武将の影の立役者です、表面に出ることもないので存在はあまり知られていませんが優れた軍師がいたからこその勝ち戦なのです、確実な成果を得たければ、「無理するな!」、「頑張るな!」、まず成功シナリオをしっかり練り上げることです、成功シナリオが完璧なら頑張るだけ成果が早くしかも確実に上がってきます、成功シナリオが完璧であって初めて努力が有効に機能するのです。
今は何事も頑張るだけで事を成しえる時代ではありません、それほど人類の知能や体力の臨界点に達した成熟した時代なのです、スポーツ界や芸能界をよく見てください、成功している企業をよく調査してみてください、強い国の政治をよく考えてみてください、これからは数や力の理論ではなく気合でも情熱でもありません、全てが成功シナリオ(戦略)とテクニックありきなのです。
自分にその能力が無ければそういう人を得れば良いだけなのです、それができる人が成功者になれるだけの話しです、成功とは極めてシンプルな仕組みによって成されるものです、方法と組む相手を間違えないことと1度信じた事(人)を最後まで継続させること、たったこれだけです。
最期に一言、「パッション」という英語は日本語訳で「情熱」と訳されていますが英語圏では「情熱」に加えて同時に「キリストの受難」という負の意味が在ることを覚えておくと簡単に使えない言葉となるでしょう、ちなみに「パッションフルーツ」は「情熱的な果物」ではなく、雄蕊が十字架のように見えることから名づけられた果物なのです。