オリンピック史上初の延期、更には緊急事態宣言下での無観客開催という歴史に残る東京2020オリンピックが無事閉会致しました、日本はメダル数及び金メダル数の記録を開催国の地の利も受け大幅に更新しました、期待された選手が予選敗退などの波乱もありましたが大きなトラブルも無く喜ばしい結果であったと思います。
さてオリンピックですが私は単なるスポーツの祭典だけとして考えていません、むしろ注目するのはそれぞれの参加国の国内事情と動向です、オリンピックは世界中に国力(経済力と国際影響力)と品格をアピールする最大のイベントだと思うのです。
事実日本は前回開催の東京1964オリンピック後に高度成長を成し遂げ多くの古来からの日本文化を世界中に広げることに成功しました、それまでは謎に包まれた神秘的な民族だと思われていましたがオリンピックによって勤勉で団結力がある民族であることを世界中に知らしめたのです、この結果日本を訪れる観光客が一気に増え日本人との国際結婚もブームになったほどです、先の第二次世界大戦での敗戦国日本がオリンピックを通して世界に戦争の反省と経済復興を認められたのです。
もう一つ、オリンピックは単なるスポーツイベントではなく国力を示すイベントである証拠に、事実今回の各国のメダル数はGDP国別ランキング表の順位そのものであることを見ても一目瞭然です、特にベスト3はGDPの順位通りです、順位と違うのはロシア(今回は出場停止の処置でロシアオリンピック委員会として出場)とインドです。
ロシアは中国と同様に国を上げてのスポーツ新興国でGDPこそ現在11位ですが毎回メダル数は上位を維持しています、またインドは国策としてスポーツには力を入れていません、一説にはカースト制度の影響が大きいと言われています。
ところで経済力がメダル数に出るのはスポーツ振興には巨額の資金が必要だからです、国の予算だけではとても賄えないのでスポンサー企業が活動を支援します、つまり支援できるほどの企業がその国に多数存在していなければメダルを取れる選手を育成できないのです。
今回のメダル数ランキングの上位10ヶ国はあらゆる競技に選手を輩出しています、新競技の選手を育てるにも競技場や練習場など多額の資金が必要な事がこれらを見ても解ります、また競技における選手のマナーや姿勢、そしてその国の応援の姿勢やオリンピックの報道、こういったものも将来の国益に直結してきます、ですから私は競技以上に国の動向や情報発信を注意深く観察するのです。
何故ならテレビを通して子供たちがそれを見ているのです、もしマナーやスポーツマンシップに欠ける行為があればその国に対してけっして良い印象を持ちません、この子供たちが社会人になったとき世界はどのようになっているでしょうか?
グローバル化が叫ばれる中でどの国へ経済支援をしてどの国と共同研究や共同事業を行いたいか、子供の時に植えつけられた鮮明な記憶はこういったところに確実に現れるのです、スポーツイベントであるオリンピックですがこういう現在の国力と将来のその国の状況を間接的に読むことができるのです。
今回の東京2020オリンピックでは僅かな政治家の政治的戦略での妙なライバル心や過去の恨を引き合いにした短絡的で稚拙な行為を繰り返してしまった国があります、残念ながら今ではなく10年後にこの10倍大きなブーメランとなって返ってくることでしょう、その時に慌てて謝罪したところで時すでに遅しなのです。
逆にこんな緊急事態宣言下での開催に感謝の意を素直に表し開催に友好的だった国や競技で好意的な姿勢を表した国、あらゆる面で未来において友好的な関係を築きたいと誰しも思い現実にその方向へ進んでいくことでしょう、スポーツの祭典であるオリンピック開催をきっかけに近未来における各国の繁栄と衰退が怖いほど正確に見て取れるのです。
日本の選手には今回多くの日本人との二世や三世が存在していました、先のオリンピック後に日本は急速なる経済復興を成し遂げ多くの外国人との交流が盛んに行われた証拠です、また東京1964オリンピックで初めて使われたピクトグラムはその後の夏冬オリンピックで継承され日本のセンスと工業デザイン力の高さを世界にアピールすることに成功したことも忘れてはなりません。
最後に今回の東京2020オリンピックで日本は何を世界にアピールできたでしょう、沢山ありますが感覚的に理解できた人は何人いるでしょう、一つ強調するならば新型コロナウイルス禍での開催はこれから人類が遭遇するであろう各種のウイルスとの戦いの序章でありパンデミック下での開催方法で多くの学びを得たことは確かです。
次期開催国フランスと来年冬季オリンピック開催国中国は多くの参考にすべきポイントを得たと最大限の評価を示しました、オリンピックをこういう視点と思考で観ると極めて重要な祭典に思えてくるのです。
賛否両論が入り混じった中で開催された東京2020オリンピックは残すところあと4日です、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下での開催や開会式でのパフォーマンス、また連日の金メダルダッシュにより何かと話題の多い今回の東京2020オリンピックですがいろいろな意味で歴史や世界中の人々の記憶に残るオリンピックになることは間違いないでしょう。
私にとっても上記の事項も当然のこと記憶に残ると思いますが特に意識して注視したのが開催直前の組織委員長に始まり重要責任者のポリコネ違反による辞任や解任問題です、ポリコネとは「ポリティカル・コレクトネス(political correctness)」のことで「政治的公正・妥当性適性・正義」などと訳され、性別・国籍・民族・人種・宗教・障害などを理由とした差別や偏見を防ぐ目的で公正中立な言葉や表現を用いる倫理観のことをいいます。
ちょっと前までは謝罪すれば終わった軽率な発言や二十数年前の若気の至りとも言える過去の些細な行いがまさか襲いかかってくるとは考えもしていなかったでしょう、今の時代は世界的なポリコネ&ジェンダーレス時代なのです、当然のこと東京オリンピックもこれに相応しく男女の競技種目がほぼ同じで男女混合競技も一気に増加しました。
これまでの価値観が大変化し今後は誰も考えも及ばなかったポリコネ&ジェンダーレス問題がどんな人にも起こり得るということです、その意味では開催直前に過去の自身のネタを総点検し過去ネタにポリコネ違反があったとして参加辞退した竹中直人はドタキャンだと叩かれましたが私的には堅実で潔い判断だったと評価しています。
国際的なイベントや政治的な問題ということだけではなく少し大袈裟かもしれませんが過去のちょっとした言動や行動が未来の自分に牙をむいて襲いかかってくる、今後は少なからず自分にもあると考えていた方がよいと思います、やっと自分を認められて大きな仕事を貰ったと喜んだ次の瞬間に過去を調べられて不適格という理由で白紙撤回になる、これは決して他人事ではないのです。
私は昔から何度もこういった危険性をSNSに見出してはブログなどでも忠告してきました、10年ほど前から何が起きるか解らない価値観の大変化という混沌とした不安定な時代に突入しているのですから世の中の変化に敏感になってほしいと思うのです。
今の価値観を以って5年・10年先のビジョンを考えていてはいけません、いつどこで大どんでん返しを食らうか解らないのですから、その意味では今回の東京2020オリンピック開催でのポリコネ違反問題は大きな「時代&価値観の大変化」という根拠となりました、今後の後継者への指導にも大いに活かしていきたいと思います。
毎年発表されるUSニューズ&ワールドレポート誌の「最高の国レポート」ですが2021年版において日本は2位となりました、ちなみに昨年は3位です、2位に押し上げた最大のポイントは何と「起業家精神」でこれは世界トップの評価を得ました、日本は起業環境が整っており自由に起業できる政策や文化が評価されました。
更には文化的影響力が世界5位などで他のカテゴリは「冒険要素(観光的刺激)」、「俊敏さ」、「伝統」、「将来の成長性」、「ビジネスの容易さ」、「外交・軍事力」、「社会正義」、「人生の質」となっています、これらの10項目を世界の有識者1万7,000人にアンケート調査を行い総合点を出します、日本は今回99.1点という高スコアを叩きだしました。
1位はカナダで日本に次ぐ3位以下はドイツ・オーストラリア・アメリカ・ニュージーランド・イギリス・スウェーデン・オランダとなっており日本はアジアで唯一毎年10位以内にランキングされています、日本はどの国よりも自由に起業でき自由にビジネスできる恵まれた環境の国なのです、不満は沢山あるでしょうが不満が在るのは逆の見方をすれば贅沢な悩みだということです。
ローカルを見て不満を言う前にグローバルな視点で世界を見て自分の置かれた立場や環境を再度考えてみたらどうでしょう、不満を持って生きるよりも持てるものに満足して未来志向で生きた方が幸せだと思うのですが如何でしょう。
余談ですが日本のパスポートは「最強のパスポート」ランキング1位で最も多くの国へノンビザで渡航できます、また経済力や軍事力などの国力を示す「最強の国」ランキングは7位で「軍事力」ランキングは5位となっています、経済力は言うまでもなくGDPは世界3位です、日本人であることにもっと誇りを持って生きましょう。
世界的な新型コロナウイルス禍での東京オリンピックの開催の是非について国民の60%が中止を望み、延期も含めるとなんと80%の人が否定的な判断をしています、更には医療関係者は政府に中止を求めて嘆願書を提出し諸外国の政府からも同様のコメントが発せられています。
普通に考えれば国をまとめる政府に「イベントと国民の命とどちらを優先するか」と質問したら答えは一つです、ところが日本の場合は明確な回答を避けているという状況です、避けているというよりも判断できないのでしょう、その理由は多額の投資が無駄になることと開催を中止した場合のIOCからの違約金請求が起きるのではないかという恐れがあるからに他なりません。
この中止すべき事項があるのに中止できない心理はまさに「コンコルド錯誤」そのものです、「コンコルド錯誤」とはイギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機コンコルド開発プロジェクトの大損失事件から命名された心理作用を指す言葉です。
開発費は当初予想の3倍以上かかった一大事業であったのですが完成以降も大きな性能向上開発・維持コストが重くのしかかりプロジェクトの中止の是非を問われても誰も明確な回答ができないまま時間だけが過ぎていきました、この時には関係者の誰もが存続させることで損失が更に拡大することが解っていても多額の投資を惜しみ誰一人として事業廃止の決断ができなかったのです。
この心理は自身の投資における行動を冷静に思考できずに損しているにも関わらずその状況を脱する行動が取れなくなるというものです、この心理状況のときの思考はこれまで投資してきたことが止めてしまうことで損失が確定してしまい、これを回避しようとする思考が損を確定し打開案を探る未来思考よりも大きくなり投資を止められなくなるというもので投資の世界ではよく見られる心理現象です。
早い段階で損を一旦確定しその後じっくりと挽回策を練る方が傷が浅く回復も早いのですが潔く判断できるかどうかは思考の器の大きさによります、誰も責任を取ろうとしない、その結果は国民にそのまま跳ね返ってくるのです、今回の東京オリンピックは開催してもしなくても歴史に残る事案となることは間違いありません、であれば国内外から称賛される潔い判断を行ってほしいと願うばかりです。
「日本製の新型コロナウィルスワクチンは何故いつまでも出てこないのだろう?」、こんな疑問を日本人の多くが抱いていることでしょう、当初米国などと共に開発に意欲を燃やしていた日本製ワクチン開発は遅れに遅れてようやく今年の暮れごろに認可が下りると予想されているに過ぎません。
日本の製薬技術は世界的にも最高レベルでノーベル化学賞を13人も輩出しており更には世界トップ50の製薬会社の上位に10社も名前を連ねています、しかし今回の新型コロナウイルスワクチン開発では世界を揺るがす話題が一つも在りません。
この不可思議な事実の原因を先日来調査していたら日本人の多くはまだ知らないとんでもない裏事情が浮かび上がってきました、それは「日本政府は既にポストコロナ時代に向け経済投資を始めている」という事実です、そしてその投資先は何かというと「量子コンピューター」なのです。
日本の量子技術は現在米国と並び世界でも最高レベルにあり量子通信や量子データ処理ではトップクラスです、そして今水面下で進められているのが官民共同組織の創設です、日本政府とトヨタや富士通など民間大手企業50数社で世界最大の「量子技術」組織を結成しようというのです、また近い将来法人化する計画もあるようです。
更にはその前段としての「デジタル化推進投資」が幾つも既に公表されています、これらの政策が新型コロナウイルスパンデミックが終焉の後世界を席巻していくことになると予想しています。
日本政府の直近のワクチン開発投資は100億円です、これは米国の100分の1以下です、「ワクチンで開発先行している米国産を買う方が自国開発するよりも早くて安い」、こんな計算ができていたのかもしれません。
「ワクチンは米国に頼り国家予算を次世代技術に回している」、この是非の結果は10年後に現れることになります、その時に日本人は喜ぶのか怒るのか犠牲になるのは常に弱者ということだけは避けてもらいたいと願います。