2021年8月10日 00:00
オリンピック史上初の延期、更には緊急事態宣言下での無観客開催という歴史に残る東京2020オリンピックが無事閉会致しました、日本はメダル数及び金メダル数の記録を開催国の地の利も受け大幅に更新しました、期待された選手が予選敗退などの波乱もありましたが大きなトラブルも無く喜ばしい結果であったと思います。
さてオリンピックですが私は単なるスポーツの祭典だけとして考えていません、むしろ注目するのはそれぞれの参加国の国内事情と動向です、オリンピックは世界中に国力(経済力と国際影響力)と品格をアピールする最大のイベントだと思うのです。
事実日本は前回開催の東京1964オリンピック後に高度成長を成し遂げ多くの古来からの日本文化を世界中に広げることに成功しました、それまでは謎に包まれた神秘的な民族だと思われていましたがオリンピックによって勤勉で団結力がある民族であることを世界中に知らしめたのです、この結果日本を訪れる観光客が一気に増え日本人との国際結婚もブームになったほどです、先の第二次世界大戦での敗戦国日本がオリンピックを通して世界に戦争の反省と経済復興を認められたのです。
もう一つ、オリンピックは単なるスポーツイベントではなく国力を示すイベントである証拠に、事実今回の各国のメダル数はGDP国別ランキング表の順位そのものであることを見ても一目瞭然です、特にベスト3はGDPの順位通りです、順位と違うのはロシア(今回は出場停止の処置でロシアオリンピック委員会として出場)とインドです。
ロシアは中国と同様に国を上げてのスポーツ新興国でGDPこそ現在11位ですが毎回メダル数は上位を維持しています、またインドは国策としてスポーツには力を入れていません、一説にはカースト制度の影響が大きいと言われています。
ところで経済力がメダル数に出るのはスポーツ振興には巨額の資金が必要だからです、国の予算だけではとても賄えないのでスポンサー企業が活動を支援します、つまり支援できるほどの企業がその国に多数存在していなければメダルを取れる選手を育成できないのです。
今回のメダル数ランキングの上位10ヶ国はあらゆる競技に選手を輩出しています、新競技の選手を育てるにも競技場や練習場など多額の資金が必要な事がこれらを見ても解ります、また競技における選手のマナーや姿勢、そしてその国の応援の姿勢やオリンピックの報道、こういったものも将来の国益に直結してきます、ですから私は競技以上に国の動向や情報発信を注意深く観察するのです。
何故ならテレビを通して子供たちがそれを見ているのです、もしマナーやスポーツマンシップに欠ける行為があればその国に対してけっして良い印象を持ちません、この子供たちが社会人になったとき世界はどのようになっているでしょうか?
グローバル化が叫ばれる中でどの国へ経済支援をしてどの国と共同研究や共同事業を行いたいか、子供の時に植えつけられた鮮明な記憶はこういったところに確実に現れるのです、スポーツイベントであるオリンピックですがこういう現在の国力と将来のその国の状況を間接的に読むことができるのです。
今回の東京2020オリンピックでは僅かな政治家の政治的戦略での妙なライバル心や過去の恨を引き合いにした短絡的で稚拙な行為を繰り返してしまった国があります、残念ながら今ではなく10年後にこの10倍大きなブーメランとなって返ってくることでしょう、その時に慌てて謝罪したところで時すでに遅しなのです。
逆にこんな緊急事態宣言下での開催に感謝の意を素直に表し開催に友好的だった国や競技で好意的な姿勢を表した国、あらゆる面で未来において友好的な関係を築きたいと誰しも思い現実にその方向へ進んでいくことでしょう、スポーツの祭典であるオリンピック開催をきっかけに近未来における各国の繁栄と衰退が怖いほど正確に見て取れるのです。
日本の選手には今回多くの日本人との二世や三世が存在していました、先のオリンピック後に日本は急速なる経済復興を成し遂げ多くの外国人との交流が盛んに行われた証拠です、また東京1964オリンピックで初めて使われたピクトグラムはその後の夏冬オリンピックで継承され日本のセンスと工業デザイン力の高さを世界にアピールすることに成功したことも忘れてはなりません。
最後に今回の東京2020オリンピックで日本は何を世界にアピールできたでしょう、沢山ありますが感覚的に理解できた人は何人いるでしょう、一つ強調するならば新型コロナウイルス禍での開催はこれから人類が遭遇するであろう各種のウイルスとの戦いの序章でありパンデミック下での開催方法で多くの学びを得たことは確かです。
次期開催国フランスと来年冬季オリンピック開催国中国は多くの参考にすべきポイントを得たと最大限の評価を示しました、オリンピックをこういう視点と思考で観ると極めて重要な祭典に思えてくるのです。