還暦を越えた辺りから真剣に理想郷の場所を捜し求めました、その際に幾つかの条件を作りました、その条件とは「豊かな自然とその恵みを思う存分に愉しめるところ」、「天災や災害リスクが少ないところ」、「空気と水が綺麗なところ」、「適度な人口密度で生活や医療の不安が無いところ」、「友人知人が日帰りで遊びに来れるところ」の5項目です。
第1項目の「豊かな自然とその恵みを思う存分に愉しめるところ」はそう難しくはありません、むしろ残りの4つの項目で絞り最後にその地が当てはまっているかを考えればよく都心から50Km圏外であればほとんどの地が候補になります、ただ自然の水を使った水耕栽培や淡水魚の養殖など行ってみたいと思っているので第三項目にある「空気と水が綺麗ななこと」と合わせて探しました。
第2項目の「天災や災害リスクが少ない」という条件が最も重要視してあらゆる災害を念頭に絞り込みました、これが最も時間がかかった作業でした、まず今後起こるであろう3大災害の富士山噴火、関東直下型地震、南海トラフ地震の被害予想マップから全て外れていること、そしてその地の自治体作成のハザードマップの洪水と土砂災害警戒区域から外れているところ、更には活断層の分布や影響エリアなどまで入念に調べあげました。
また災害は自然災害だけではありません、クマやイノシシなどの危険野獣や毒蛇などの危険生物の生息地域も入念に調査しました、更には反社会組織の有無や治安も重要で過去のニュースをキーワード検索して調べ上げました。
第3項目の「空気と水が綺麗なところ」ということでは空気汚染であるpm2.5と光化学オキシダントなど汚染物質の年間濃度を環境省のサイトなどを参考に調べ、更に黄砂の飛来エリアか否かなどを年間を通して調査しました、水に関しては水道水の塩素濃度や重金属の有無やミネラル成分の調査結果と「水道水が美味しい県」というパナソニックが調査した結果などを参考にしました。
第4項目の「適度な人口密度で生活や医療の不安が無いところ」は人口2万人以上の市町村をキーワードにしました、現在で2万人以上だと確実に救急車や消防車を保有しており総合病院や大型スーパーがあります、ちなみに現在2万人以上の地方自治体は30年前にはほぼ3万人以上であったと推測できます。
第5項目の「友人知人が日帰りで遊びに来れるところ」は通勤マップという便利なツールを使って東京まで120分以内で行き来可能な場所を目安にしました、ここで思いもよらないところが通勤圏内に入っていてすぐ近くに感じたところが意外にも時間がかかることが解り驚きました、交通インフラというのはまさにマジックです。
こうして絞り込んでいき、更には観光地だとか避暑地だとかというその地のイメージや暮らしやすさで適合しないところを外していくとなんと10ヶ所に満たないのです、最後に年間気温や湿度の変異などを勘案し最終地点を2つに絞り込みました、最後はどちらにも実際に何度も足を運んで自分が住むイメージが明確に見えたところに決めたのです。
理想郷へのリーディング拠点兼ラボ3号の確立から2ヶ月が経ちました、この間何度も現地に行きリノベーションの下見や打ち合わせを入念に行いました、そしていよいよ全和室3部屋をフローリングにしたり2つの部屋を広いワンルームにする工事の開始です、見積もりは取るものの私には金額の大小は興味ありません、興味は誰にやってもらうかだけです。
大工の行う事と内装屋の行う事、また水周りや給湯設備業者の行う事が多々ありますのでそれぞれに別の設計と手配が必要です、そういえば要望に沿って私に代わって効率よくやれる人が門下生にいます、話をしたら喜んでやってくれるとのことで早々に長期業務委託契約を締結しました。
彼にはこれまでもラボ間の引越しや廃棄など事あるごとにスポットでアルバイトしてもらっていたので阿吽の呼吸で話が通じます、今後は更にラボ間の什器備品の移動や拠点の大掛かりなリフォームに加えて未来計画での実験を兼ねて庭にパーゴラやビオトープを造るなど多々ありますので大助かりです。
そういえば彼だけではなくリーディング拠点が決まってからというもの、スタッフをはじめ行きつけのショットバーのマスターなど私の周辺の人に少なからずの心境の変化が見られるのはとても興味深いです。
ショットバーのマスターは「私もいい歳なのでその地でゆっくりバーでもやりますかね?」などと言うようになり、やはり行きつけのレストランのマスターは夫婦揃って山登りが趣味なので畑付きの別荘に使える物件があれば紹介してほしいと言いだす始末、リーディング拠点でもこれなのですから理想郷の本丸ができたらどうなってしまうのでしょう。
ゆっくりマイペースに暮らせるはずの理想郷に何やら大挙して友人知人が集まる気配を感じる昨今です、別の地で暮らすとなって忘れ去られるよりも一緒に行きたいと言ってくれる人がいるだけでも生き方が間違ってはいなかったのだと気付きます。
加えてこの地にも既に何でも相談できる新たな心強い仲間が生まれています、拠点を中心に本丸や二の丸構想が広がっていくので有益な情報収集と建設に大いに助かっています、既にこの時点で充分に幸せ者なのかもしれません。
突然ですが「道楽」とは「本業以外の好きな事にふけること」と辞書にあります、考えてみれば私は本業も心から愉しめない状況になれば即座に撤退し興味を引かれる新しき事をやり始めてしまいます、その意味では私の人生そのものが「道楽」に集約されるのかもしれません。
子供のころからミニカーや怪獣グッズをはじめ興味のあるものは全てコレクションし、顕微鏡や望遠鏡でミクロやマクロの別世界を覗き、小学校のころから祖父に学び真空管を使ってラジオやアンプを作っていました。
本格的に道楽として没頭したのは大学時代に始まったオーディオです、また合わせてジャズのレコードコレクションもアルバイトで稼いだ全財産を投入して狂ったように集めまくりました、当時はオーディオとレコードに費やすお金が欲しくて春夏秋冬の長期休暇全てを遊びにも行かずにアルバイトに充てたものです。
そんな私が社会人になるとオーディオ道楽と並行してスコッチウイスキーやリキュールに興味を持ち始めます、そしてウイスキーコレクションをしながら連日連夜のバー通い、日本で買えるアルコール類のほぼ全てを飲んで納得したものです。
30歳代になると一転今度はアウトドアと釣りにはまり週末は河原や海辺でバーベキューを行い釣船を1日貸切っては社員と海釣りを愉しみました、40歳代にはサイドビジネスを行うようになりサイドビジネス用の会社を設立してショットバーやダイニングバーを3店舗運営しました、更には熱帯魚レンタル・子供向けパソコン教室・天然素材の肌着販売などのサイドビジネスを複数同時並行で行いました。
その後人生の一大転換期が訪れそれまでのサイドビジネス全てをそれぞれの従業員に無償譲渡して、今度は有り余った時間を使って陰陽五行を応用した学問の確立と研究に没頭します、今更ながら考えてみると私はどうも生業の本業とは別に常に何かをやっていないと落ち着かないようです、きっといろんな意味での精神的バランスを保とうとしているようにも思えます。
いろんな事をやってはノウハウを得て納得してきました、それでもアンティーク家具やオーディオショップ、更には農業に畜産業に養殖業とやりたいと思っていた事でやり残したものは山ほどあります、加えて最近は食と健康や昔取った杵柄であるアクアリウムやテラリウムに意識が向っています、いったい私はどれ程の道楽を愉しめば満足するのでしょうか?
きっと生きている間は常に新たな道楽事を次々とやっていく気がします、それも何かを終わらせてから始めるのではなく新たに生まれる道楽事を並行してですから大変です、でも辛さも悩みも愉しみも生きている間だけなのです、やりたい事は全てどんなに大変で辛くても納得するまで徹底的にやってみる、私は人生に納得しないうちはあの世には気持よく逝けないと思うのです。
私にとって「道楽は長寿の薬」です、道楽に没頭できている間は生業の経営と共に心身が元気だというバロメーターなのです、そして生きていく為には無関係な満足感を得る為にどれほどの時間とお金を使ってきたのでしょうか。
でも私はこう思うのです、それが好きなようにできているからこその生業に活力が生まれるんだと、生きる為に食べるような行為は私には耐えられません、やりたいことを行う為に健康で長生きして毎日美味しく食事をしたいのです、「食べる」と「食事」は大違い、私は食べる行為は実は面倒だと思う事項でも食事をすることは大好きなのです。
生きてく為に不要な事項にこそ私は生きる価値を見い出しています、生きていく為だけの生業ならそれは強いられた労働という代物です、そんな人生に私は喜びも幸福も感じられません。
道楽こそ私の人生そのものなのです、初めての食材は取りあえず買ってみる、海外に行けば珍しい料理は食べてみる、手に入るアルコール類は全部飲んでみる、気になったものはとりあえず買って試してみるのです、生きていく為に不要なものに価値を見い出しては更に工夫して愉しむのです、生きている間に生身の人間でしかできない事を全部やってみるのです。
ここにお金や時間がもったいないという概念も意識も皆無です、そもそもお金は好きな事をやる為の媒体であってそれ以外の価値を見い出していないのですから、どんなことも気になればやってみるのです、何故なら理由があって私は人間に生まれてきたと思うからです、生まれてきた理由を知りたくて子供の頃からずっと探し求めているのです、「明日はどんな心奪われるものに出会えるのかな?」、そう思って寝ると自然に暗いうちから目が覚めてしまうのです。
隠居後の理想郷スローライフとはきっとこんなスタイルになるのだろうという擬似体験をこの5月のゴールデンウィーク中に行ってしまいました、なんと連休中は一度も家に居なかったのです、毎日どこかのラボでビジネスを忘れ道楽事を愉しみ夜は仲間を呼んで馴染みの店をハシゴして飲食に明け暮れました。
昨年末にラボ2号が都内に、そしてこの春は未来の理想郷の地にリーディング拠点兼ラボ3号ができました、理想郷のリーディング拠点兼ラボ3号にはリノベーションの打ち合わせに、ラボ1号にはベランダ菜園の手入れと今年の苗の植え付けに、ラボ2号ではオーディオの整備にと必ずどこかのラボで道楽事を大いに愉しみました。
リーディング拠点兼ラボ3号の行き来は行楽シーズンということもあり打ち合わせ後に観光名所の絶景を楽しみリーディング拠点兼ラボ3号の畑に生えていたフキやノビルなどの野草も収穫してきました、わざわざ混雑する観光地へ出かけなくても充分に気分転換でき疲れることもなく最高の場所を手に入れたと再認識できました。
ラボ1号では購入後10年以上経ち大きくなりすぎて部屋に置けなくなった観葉植物をばっさりカットして家の中に再度置けるように再生しています、ちょうど再生植え付け後1年経って4種6鉢の観葉植物を買ってきた頃の大きさに戻せました、また毎年行っているベランダ菜園ではハーブ類を今年も自家製培養土に2種類植えました、毎年6月から11月まで収穫しては摘みたての超新鮮状態で各種料理でいただきます。
休みの日にぶらりマイペースに行くところが無い、もっといえば定年退職後に行くところが無いという人がほとんどです、私は隠居後にこの状態を一番苦痛だと考えました、だから動けるうちに必至に稼ぎ隠居後には気楽に行ける場所を目的別に多数持って毎日憂い無く暮らせるようにしたかったのです。
この状況こそが私の隠居後の理想郷そのものでありスローライフの原点です、理想郷とは何も物理的な一つの存在を示しているのではないということです、このスローライフなる状況が隠居を目前にして出来上がったことに大いに満足感を得ています、朝目覚めて今日は何処で何をしようかとワクワクする日々、これを理想のスローライフと呼ばずになんと呼ぶのでしょう。
理想郷へのリーディング拠点として先月末に購入したラボ3号のリノベーションとリフォームに向けて施工業者と共に現地に行き工事詳細を実際に見ながら要望を伝えました、年内にも実家から民芸家具などの遺品とオーディオ関係の私物を運び込みたいので今から基礎工事を行わないと間に合いません。
改良するところは細かい箇所まで入れたらほぼ全室に渡ります、今のままでも住もうと思えば充分住めるのですがラボとはいえ自分の持ち家だと考えるとやはり理想どおりの住空間にしたいと思うのです、そして前オーナーの生活習慣を意識させるものは取り去りたいと思うのです、何故なら他者の存在を意識して暮らしたいとは思わないからです。
ところで前回からたったの2週間しか経っていないのに面白いように現地はまるで別世界でした、2週間前は小寒くて周囲の山はグレーでしたが、今回はすっかり春爛漫というよりも初夏のような1日で周辺の山に沢にこんなにも桜があったのかというくらいに桜の里と化していました。
帰り際にすぐ近くにある有名な観光名所に寄ってきました、マイナスイオン溢れる渓谷の絶景に心躍りました、特に深いところでは20メートルもある岩山がパックリと切り取られたような垂直の岩盤は吸い込まれるような迫力があります、こんな絶景がラボ3号から自転車でわずか数分で来ることができます、やはりこの地に決めて良かったと思います。
また裏の畑の周辺にはフキ・ノビル・スイバ・オニタビラコ・ジシバリなどの食べられる野草類が自生しているのが解りました、前回までは畑に入って見てないので意外な収穫でした、こういった野草類は暑さに弱いので元気に自生しているということは暑さに弱いイタリアン野菜なども問題なく栽培できるということです。
リノベーションとリフォームの工事が終わったらエアコン・給湯器・冷蔵庫・洗濯機などやカーテンを全て取り替えると同時に全室をクリーニングして一連の移住準備が完了します、その後にやっと実家から遺品と私物を運び込めます。
やることが山積みですが少しずつ自分の空間ができていく景色を愉しみたいと思います、ここでみんなを呼んでホームパーティができるのはいつになるでしょう、その頃にはきっと本丸の理想郷の場所も見つかっているような気がしています。
最終的な本丸はサワガニや蛍がいる沢のある手付かずの自然そのものの広い山野を狙っています、そしてゼロから数年かけて開墾したいと思っているのです、それはそれでたいへんですが未来に大きな愉しみがあるということは長生きしたいと頑張れるから善いことだと思います。