一口に「価値」といってもその意味合いは様々です、コンビニではおにぎりは120円で売っていてコーラは150円で売っています、人が生産したもので値段のついていないものを探すほうが難しいくらいです、お金を対価として支払うにはそこに「価値」がなければなりません、ここで「価値」とは何だろうと考えることが肝要です。
「価値」とは実に曖昧で捉え難いものはありません、しかし確かに商品には「価値」があって値段がついています、例えば私が買うネコグッズはネコ好きにはたまらなく「価値」のあるものですがネコが好きではない人にとっては何の価値もありません。
「価値」というのは人の数だけ存在していると考えるのが正解なのかもしれません、ある人にとってはとてもかけがえのないものが別の人からすればまったく価値のないものとして映るのです。
これは直接的に購買行動につながり買ってもらうためには相手にとって「価値がある」と思えるものでなければならないのです、人は自分が「価値がある」と認めたものにはお金を払いますが「価値がない」と思えばそれにお金を投じることはありません。
今あなたが売ろうとしているものは誰にとってどんな価値を秘めているのかを再確認する必要があります、自分にとってはどれだけ価値があると思っていても相手が「価値がない」と判断してしまえばそれまでなのです。
自分の扱っている商品やサービスがあなたにとってではなく、あなたの顧客にとって価値あるものになるためにはどうすればよいのでしょうか、こんな極めてシンプルなことを深く突き詰めていくのがビジネスの原点であり、これをしっかり行えば自然に売上はあがっていくものなのです。
私の独立起業は28歳で第二次ITベンチャーブームに世の中が踊りGDPも倍々で増えたバブル景気直前の頃です、そんな高度成長時代にフリーSEを3年間行って得た軍資金で起業し、当時まだほんの一握りの技術者しかいなかったマイコン開発分野で大手企業からは営業しなくても仕事が次々と舞い込み当然私を含めた社員の鼻息は荒かったものです。
時に仕事量は社員数の数倍分にもなり、当時の若かりし私は手段を選ばず技術者確保に同業他社から政略によって引き抜きを行ったこともありました。
そんな手段を選ばない私に「謙虚に生きること」を教えてくれたのが孔子論語であり戦国武将や三国志などの書籍です、これは経験上言えることですが政略を行うとしばらくは夜も眠れなくなります、心のどこかで知らぬ間に他者を陥れたやましさが増大してくるものなのです。
どんな人も時に調子が良いと「自分天下」と勘違いを起こしてしまうものなのです、しかしここで「人の道に外れてないか?」と自身を省みることが肝要なのです、孔子論語にどれほど当時の私の心に響き深く自身を戒めたかわかりません。
私はこれを機に180度方針を変えました、同業他社との関わり合いを競合から協業という関係に変えたのです、「仲間内で争ってては真の成功は無い、共存してこその業界の成功であり自身の成功も有る」と考えるようになりました。
あの時方針を変えずにイケイケで成長させていたら早い時期に上場できていたかもしれません、事実周囲からも「何故、方向転換したの?」とよく言われていました。
でも私はこれっぽちも後悔はしていません、自身の夢の実現よりももっと尊ぶべきことがあるのです、人として正しい道を歩んで行きたい、何の不安もやましさも無く安心して暮らせることが人生の成功だと思えるようになったのです。
人は無意識のうちに「成長したい」と願っています、今できることをもっと効率的にできるようになりたいと思っているし高いスキルを身につけたいとも思っています、人としてステップアップするためには当然の願望なのだと思います。
企業も同じで経営者は今の事業をもっと大きく育てたいと思っているし、たくさんの利益を得たいと考えさまざまな改善案や顧客ニーズを取り込むように尽力するものです、その結果事業は成長し利益も上がっていきます。
さてここで向上を考えても人も企業も「変わりたい」とはなかなか思わないのではないでしょうか、変身願望など確かに違う自分への憧れはあっても自分を変えたいと思う人はあまりいないように思えます、むしろ「変わりたくない」と、どこかで防御線を張っている人のほうが多いかもしれません。
しかし世の中は常に変化しています、しかもインターネットの普及により変化のスピードは加速する一方です、当然顧客ニーズも時代の速さに合わせて変化が速くなってきています。
ここで「成長」ということについて立ち返ってみると成長しきった会社はどうなっているでしょうか、成長しきった結果「老体」になってしまい完全に市場からはじき出されてしまっている感があります。
世界的にも優秀な社員が揃っていた大企業であるにも関わらずこの事態を予測できていませんでした、企業が勝ち残り生き残っていくためには「成長」するだけではダメなのです、時代の変化に対応し常に新しいものを「生み出し」てゆく進化が必要なのです、進化なき人も企業も、成功を望むべきではありません。
「兎はウサギの形になりたがる」というかなり昔に出版された本があります、この本は形には必然性があるという内容で完全なるサイエンス書籍です、「こんな本を読んでいったい何になるのか?」と疑問を持つ経営者も多いでしょう。
しかし経営や事業推進上のアイディアというのはどこに転がっているのか解りません、経営者にとって経営情報や経済情報はもちろん大切ですが経営とは全く無関係な情報も同じぐらい大切なものです。
例えば食物連鎖における種の争いは企業同士ののシェア争いのヒントにもなり、小説に描かれている人間模様はそのまま社内や取引先との人間関係に応用できます。
本を読むということは自ら体験することなく頭の中で「シミュレーション(疑似体験)」ができるのです、つまり実体験したように短時間で経験値を増やすことができるのです。
経営者というものはロジカルな考え方が重要な反面、空想力や発想力といった柔軟な思考も必要なのです、読書にはあらゆるジャンルを気分で選んで読むことが楽しく拘りを持たないことが重要だと思います。
大手IT企業がAIや人型ロボットを発表し、時代の流れはロボット産業へとシフトしつつあるのは確かなところです。
ところでロボットと言えば先立つこと十数年前に「AIBO」という犬型ロボットが一世を風靡したのが記憶に久しいです、発売当初賛否両論あったとはいえソニーはこれから到来する家庭用ロボットの需要を見込んでAIBOを世に投入したのは間違いないところです。
最近話にも出ないと調べてみたところ2006年に既に製造中止になっていました、物事には確実に「タイミング」というものがあります。
如何に優れた製品・サービスであっても時代が追い付いていなければ市場の理解が得られずに自然淘汰されていきます、逆に時代の波に乗れば製品の性能を需要が追い越し一気に市場を席巻できるのです。
AIBOは充電まで自分で行うなど高機能であったにもかかわらずロボット産業からひっそりと姿を消しました、そしてAIBOを発売したソニーは皮肉にも新時代に苦しい立場に追い込まれています。
もし新しい製品やサービスを展開しようと考えるなら時代を見極め投入するタイミングを見誤らないことです、波を感じるまで動く準備をしつつじっと動かないことです、波を感じたら即動くというタイミングの感覚を磨くのが一つの成功の秘訣だと思います。