2025年12月19日 10:00
スコッチにはバーボンカスク表記が多いですが、もともとはシェリーカスクがベースだと代表から教えていただきました。 そこでバーボンカスクの歴史を少し調べてみました。
昔はスペインから英国へシェリーを樽で輸出し、英国側で瓶詰めする流れが一般的だった時期があったそうです。 そうすると空になった樽が英国に残るためスコッチの熟成樽として使われてきたという背景があるようです。 ところが1970年代末から1980年代初頭にかけてシェリーを「樽で輸送して英国で瓶詰めする」時代が終わり、伝統的な輸送樽が蒸留所へ回りにくくなったとされています。 そこで存在感が増したのが使用済みのバーボン樽、いわゆるバーボンカスクです。 背景にあるのは供給の太さでした。 少なくともストレート・バーボンでは熟成に「内側を焦がした新しいオーク樽(charred new oak barrels)」を使用することが規定されており、これが使用済み樽を継続的に生み出す構造になっています。 スコッチ側から見ると一定の品質の樽を継続的に確保しやすく、結果としてバーボンカスクが広く使われるようになったようです。
さてそのバーボン樽についてですが、材料はアメリカンホワイトオークを使用します。 樽の内側は、樽を組み上げたあと中身を入れる前に直火で短時間焦がします。 これをチャーと言います。 チャーは「#1〜#4」のように強さで語られることが多いようで、Wild Turkey のサイトには以下のように記載されています。
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#1: 15秒の焦げ目。甘みとオークの風味を持つ軽めのトースト。
#2: 30秒の焦げ目。コーヒーとバニラの香りがほのかに漂う、中程度の焦げ目。
#3: 35秒の焦げ目。スパイス、バニラ、ココナッツ、キャラメルの香りが漂う、中程度の焦げ目。
#4: 55秒の焦げ目。バニラ、スパイス、スモーク、タバコの香りが強く漂う、濃厚な焦げ目。
新たに焦がされた樽は風味を増すだけでなくフィルターとしての役割も果たします。
バーボンが熟成するにつれて焦げた部分の炭素が液体から不純物を取り除きます。
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Wild Turkey は#4(いわゆる"alligator char")を好むと明記されています。
なお、チャーリング(焦がし)によってオーク材の成分が熱分解し、甘い風味のもとが生まれるとも言われます。特にヘミセルロースが分解して木の糖が生じ、それがカラメル化することでキャラメルのような甘い風味につながるそうです。
同じ「バーボンカスク」でもチャーの強さによって樽内面の状態が変わり、付与される風味の方向性が変わり得るということが分かりました。 味が変わる要因の一つとして樽側の条件(チャーの違い)が効いてくるのだなと勉強になりました。 また同じバーボンカスクでもファーストフィルやリフィルといった違いもあるそうなので、それについては次回調べてまとめたいと思います。