2026年2月21日 10:00
オーディオアンプの性能のひとつにダンピングファクターというものがあります。 一言で言えばアンプがスピーカーの暴走をどれだけ抑え込めるかという指標ですが、その正体はスピーカーとアンプのインピーダンスの比率にあります。
低音を出したときスピーカーの内部では次のような動きになっています。 まずアンプからの電流を受けたボイスコイルが磁界の中で突き出され大きな音が鳴ります。 しかし信号が止まった後も重さのある振動板とボイスコイルは慣性によって急には止まれず、元の位置を通り越して「いったりきたり」と揺れ続けようとします。
この「行き過ぎ」が発生した瞬間、ボイスコイルは磁界の中で動くことで自ら電気を作る発電機となり、アンプ側へ逆向きの電圧(逆起電力)を生み出します。 ここでアンプの出番です。 アンプ側のインピーダンスが低くこの電気をスムーズに受け入れられる状態にあると、ボイスコイルには一気に大きな電流が流れます。
電流が流れた瞬間ボイスコイルには「今の動きを止めようとする逆向きの力」が発生します。 これがいわゆる電磁ブレーキです。 アンプが出口を広げて電流を一気に流させるほど、この逆向きの力は強烈なカウンターとなって「行き過ぎ」の被害を最小限に食い止め、無駄な揺れをピタッと収まるのです。
設計の異なるアンプを比較するとこのブレーキの掛け方の違いがよくわかります。 D級アンプは出力素子の低抵抗化と制御技術を駆使して出口のインピーダンスを極限まで低くし、強烈な制動力でキレの良い音を作ります。 対してA級アンプは素子に常に大きな電流を流しっぱなしにすることで出口を電気的に常に開放しており、補正に頼らずとも素子そのものの動作状態で常にブレーキをかけ続けている安定感があります。
ただしアンプ側のインピーダンスがどれほど低くなってもブレーキには物理的な限界があります。 スピーカー側にはボイスコイルそのものが持つ数オームの抵抗が立ちはだかっているからです。 どんなにアンプが出口全開で電流を流そうとしても、スピーカー側の入り口が狭ければ流れる電流の量は頭打ちになります。
結局のところダンピングファクターとは単なる数値の競い合いではなく、スピーカーが発電した余分なエネルギーをアンプがいかに澱みなく流し逆向きの力を発生させて音の余韻をコントロールできるかという、制動の質の指標と言えます。