放置栽培を行うにあたり最も重要なのが土壌の土質であることは言うまでもありません、土壌の細菌によって植物の成長に必要な栄養素が生まれ植物に取り込まれるからです、また植物の成長に最も重要なのが根をしっかり張れる土質であることは栄養素が生まれる以上に重要です。
植物が根をしっかりと張れ更には細菌バランスを保つために必須な土壌とは空間が確保できているかです、つまり細かな空間が土壌に形成できているかということが最も重要になります、この細かな空間を保持できている土壌を「団粒構造」と言います。
この細かな空間によって根が張れ更に根は酸素を取り込むことができます、植物は根でも呼吸をしているのです、観葉植物をいつも枯らせてしまう人は根を窒息させているのが原因です、つまり水の与えすぎによって根が呼吸できず嫌気性の腐敗菌の増殖によって根が腐ってしまうのです、根が呼吸できる空間があれば好気性のバクテリアが繁殖し土も根も腐らずに植物も元気に育ちます。

この団粒構造を人工的に造ろうとするのが耕耘機(こううんき)などによる耕起(土起こし)です、これも悪いことではないのですが私が提言する放置栽培では土を起こさないのが定義の一つです、追々説明しますが耕起を行うから不必要な雑草が生えるのです、雑草は種類によって益にもなるし害にもなるのです。
ではどうやって団粒構造を造るかというとズバリ益になる雑草の力を借りるのです、つまりこれが放置栽培の最も重要な「耕起しない」と「除草しない」という事項になります。
益となる雑草はその多くが一年草で春に成長し秋には枯れます、枯れる際には根も枯れます、この雑草の根が枯れた後にできる空間こそが何もせずに団粒構造を造る方法なのです、だから意味も無く雑草を放置するのではなくあえて放置することで土壌の団粒構造を維持しようとしているのです。
野菜はこの数年の間に平均で倍ほどに高騰しています、また季節によっては手が出せないほど高額になることもあります、外食産業の倒産件数がうなぎ上りに増えているのもうなずけます、原料仕入れ額と人件費つまりFC比の上昇が要因であることは言うまでもありません。
野菜が高額で買えないということで庭が無くても室内で野菜栽培ができる水耕栽培が新型コロナウイルスパンデミックを機に静かに流行しているようです、私がハイドロカルチャーで観葉植物を育てていた20数年前に比べると水耕栽培キットも多数出ており価格も1万円を切るものもあります、SNSなどでも100均グッズだけでできる水耕栽培などの動画が多数出ています。
水耕栽培キット
これにプラスして液体肥料と種を買えばその日のうちに水耕栽培がスタートできます

こういったものに刺激されて水耕栽培に手を出す人も多いと思いますが、多くの人は当初考えていたように収穫できずにイニシャルコストも回収することなく止めてしまいます、私の経験上しっかりとした野菜を水耕栽培で収穫しようとしたら最低でも5万円近いイニシャルコストがかかります。
確かに容器は100均で売っているもので代用はできますが室内でしっかり育てるには最低でも人口太陽光つまり植物育成用のナローバンドLEDライトが不可欠です、また電解濃度計(水溶液濃度を計測する測定器)など次から次へと必要な道具や消耗品が出てきます、つまりイニシャルコストに加えて種や液体肥料などのランニングコストは意外とかかってしまいます。
実際にやってみると大きな買い物をしているわけでもないのですが合算すると意外な出費に驚くと思います、私の試算上では野菜を完全育成するためのグロウテント+ラックに育成用ナローバンドLEDライト2セット、更に電解濃度計などの必須な機材を入れるとイニシャルコストは5万円ほどで種代に液体肥料などの消耗品に電気代も入れると年間ランニングコストは最低でも3万円程度になります。
つまり1年目は8万円ということになります、また水耕栽培できる野菜は限られておりイモ類やキャベツ・ハクサイなどの大型野菜に根菜類やつる性野菜は不可能ではないですが家庭用の装置では無理です、つまり手軽に栽培可能な葉野菜が主になり全ての野菜を調達できるわけではありません、そう考えるとかなり高いものになりそのときに必要な野菜を買ったほうがはるかに安く済みます。
結論を言うと水耕栽培やベランダ菜園、また趣味で行う自宅の庭を使った野菜作りはコスト面だけで計算すると買うよりも高くつきます、ただしメリットとしては採れたての安全な新鮮野菜を食べることができるということと農家さんしか食べることができないダイコンやニンジンの葉など栄養価の高い部位が食べられるということにつきます。
水耕栽培やベランダ菜園などは隠れたコストを無視しがちになります、家庭菜園を行う目的は野菜を安く手に入れることではなく家庭菜園でしか味わうことができない野菜の部位を安心して食べることができるというメリットを追求することが重要だと思います。
そして最後にもう一つ、家庭菜園を行うようになると野菜の世話にかなりの時間をとられます、忙しいからとちょっとサボれば一瞬で枯れてしまい水の泡となります、家庭菜園は収穫を目的とするのではなく野菜を育てるのを愉しむという目的を持って行うのが正しい家庭菜園の心得かと思うのです、そしていろいろな意味で余裕がないとできないのが家庭菜園という道楽なのです。
観葉植物を部屋一杯に置いていると部屋の中がツーンとした森林のような匂いに包まれることがあります、特に午前中は一段と強まります、これは新しい酸素の匂いなのですが多くの人は観葉植物が生成していると考えています。
確かに観葉植物も光合成を行い二酸化炭素を取り込んで酸素を吐き出しますが極微量です、観葉植物をたくさん育てている場合に起きる森林浴の匂いの元は観葉植物を育てている鉢の中の土から齎されます、正確にいうと土の中に無数に生息しているシアノバクテリアが酸素を生成しているのです。
実は森林浴の生きている実感を味わえる清々しい香りも樹木や山野草類が齎しているのではありません、その多くが土の中のシアノバクテリアが齎しているのです、事実は小説より奇なりで科学の解明による真実はまさに驚くべきことが多いです。
シアノバクテリアは水分があれば何処にでも繁殖する原核生物で藍藻(ランソウ)といえばピンと来る人が多いと思います、水田や池などに生えている青緑色した藻や粒子です、実はこのシアノバクテリアは海中に最も多く生息し地球のほぼ全ての酸素を供給していると言っても過言ではないほど地球生命体にとって極めて重要なバクテリアなのです。

また現存する真核生物である植物はこのシアノバクテリアを細胞内に取り込むことで光合成という武器を獲得し進化を遂げた生命体です、この細胞内にシアノバクテリアを一番先に取り込んだのがウメノキゴケやウグイスゴケなどの地衣類でキノコとコケの中間にあたります、この地衣類からざっくりコケ・シダ・ヤシ・針葉樹・広葉樹や草本類と植物は進化を遂げてきたのです。
動物の進化の過程は多くの人は知っていますが植物の進化を正確に知る人はほとんどいません、植物を正確に知ると如何に動物にとって重要な共存すべき生命体であることが解ります、そうなればきっと雑草を粗末に扱わなくなるでしょう、私は有害な雑草でもむやみに抜くことを躊躇ってしまいます、有益に他の動植物と共存させる方法を考えてしまうからです。
面倒な話はさて置いて酸素を生成する重要なシアノバクテリアですがアクアリウムや水耕栽培を行っている人にとっては敵対視されています、あっという間に水槽内や水耕栽培の液体内に繁殖し青緑色に埋め尽くします、ただ魚類にとっては稚魚の餌になったり水中に酸素供給してくれるので問題は無いのですが人間にとっては景観を損ねるのか本能的に嫌う人が多いです。
雑草と同じでシアノバクテリアの有益性を真に理解すると逆に有効活用したいという気持ちが沸いてきます、私は現在シアノバクテリアを積極的に各種の植物栽培に有効活用しようと考えています、意味の無い生命体はこの地球上には存在しないのです、何かしらの使命を持って地球上に生まれてきたのです、地球に生命体が誕生して以来全ての生命体は共存するように秩序に仕組まれているのです、人間の都合で有益か有害かを振り分けるべきではありません。
ちなみにシアノバクテリアを観察していると大きく2種類の形状があることが解ります、一つは糸状でもう一つは粒状です、メダカの繁殖を道楽にしている人は稚魚の餌用に粒状のシアノバクテリアを繁殖させたグリーンウォーターを必ず買い求めます、また医薬に役立たせようという研究も行われています、まだまだシアノバクテリアは研究途上にある謎だらけの地球で発祥した最初の生命体の一つなのです。
自然農法は未だに定義はありませんが基本的には肥料や農薬を使わなくても野菜を収穫できるということを目指した農法です、しかし自然農法を学んでいて幾つかのヒントを組み合わせていくと究極の農法ができると考えました、それが私が今後研究しようとしている自流の「放置栽培」であり、ずぼらな私にぴったりな名称だと思って気に入っています。
私が提言する「放置栽培」には今後の実験を明確にする意味において6つの事項を定義いたしました、それが①「耕起(土起こし)しない」、②「施肥(肥料を与える)しない」、③「散水(水を与える)しない」、④「除草(草むしり)しない」、⑤「投薬(農薬散布)しない」、⑥「種蒔きしない」です。
ここで特に最後の定義は疑問に思う人は多いと思いますが各種のデータを調査した結果可能だという結論を導き出しています、当然ですが毎年F1種を撒かないのですからどんな野菜が採れるか解りません、だからこその研究実験なのです。
※F1種:種メーカーが製造販売する収穫品種が保障された種。

これらの事項は順を追って説明していきますが、重要なことを申し上げますと私はずっと技術の世界にいたものですから曖昧な表現や根拠の無いことを提言することはしたくはありません、それは無責任な行為そのものだと思うからです、したがって何をするにも重要なのは最初から定義と根拠を明確にして提言することだと思うのです、それが何かを提言する者の最低限の責任だと思います。
そしてこの提言が正しいものなのかを6年前からベランダで少しずつ実験を行ってきました、大きな発砲スチロール製の箱2つを使って行ってきましたが肥料も農薬も使わずに新たに土を足すわけでもなく毎年ハーブ類が元気に育っています、ただハーブ類は雑草に近い性質なので実績としては極めて希薄です、そこで自由にできる畑付きの物件を購入しましたのでいよいよ本格的な実験を行っていきたいと思います。
ベランダで放置栽培のバジル・プチトマト・パセリなど

若い世代の農家に徐々に定着しようとしている日本発の自然農法とはいったい何なのでしょう、実はその定義もスタイルも未だ完全には確立されていない発展途上の段階です、また似た農法である自然栽培と混同されますが同時多発的なスタイルで別物として認知されているようです。
自然農法は1935年に岡田茂吉によって提唱された農法で、「土壌に不純物を入れず清潔に保てば土本来の性能を100%発揮でき作物が栽培できる」というもので、自論を証明するために翌年に東京世田谷にある自宅の庭で実験を開始しました。
自流放置栽培第一弾の実践で収穫できたサツマイモ

この提唱の不純物とは肥料や農薬のことで、これらは土本来の力を発揮できない元凶だといいます、その後各種の研究機関や企業においても研究され土壌微生物の重要性が解明されてきました、実は土壌には多くの菌類が存在しており人間の健康法である大腸環境を整えるというものとまったく同じ原理であることで理解できます。
菌類の中には醗酵によって有機物を分解し植物のエネルギー源となる栄養素を作り出す種や、逆に腐敗によって分解する種も存在しています、腐敗菌類が多くなると生きた野菜の根まで腐敗させ植物を死滅させてしまいます。
しかし逆に有益な醗酵菌類だけでも野菜には有毒な酸やアルコールなどを精製してしまい植物が育つ土壌にはなりません、つまりこれらの菌類の微妙なバランスを保てるかが重要であり、バランスが保たれていれば雑草や野菜の枯葉がそのまま肥料成分に変わり肥料を入れる必要も無く野菜も元気に育ち、元気な野菜は虫害やカビなどにやられないので農薬も不要となります。
この土壌の微生物バランスを如何に保つかが自流放置栽培の基本ということになるかと思います、各種の自然農法の具体的に説明している書籍を読み込んでいくといろいろな方法が示されていますが行き着くゴールは全て土壌の菌類バランスを如何に作り上げて保つかに集約されます、そしてこれは科学的にも説明できる原理だと思います。
つまりこれからの農業は一つの科学分野なのです、見えない菌類の世界、7年前に始めた食と健康道楽ビジネスでも菌類の持つ脅威を実験によって得ています、こんなところに応用できるなんてその時点では私でさえ知る由もありませんでした。
7年前に行った麹の培養実験
菌を身近に感じることができた生きた経験をしました
