自然農での放置栽培実践には土壌の質がそれに見合っていなければなりません、そこで冬季でしかできない土壌改良を実践しました、その改良方法とは肥沃土壌を維持するに必須な有益菌を増やすことです。
ガーデニングで伐採した樹木の枝や落ち葉などで畑の中央部分に畝を作りそこに土を被せます、そしてその脇には30Cmほどの深さの溝を掘っておきます、こうすることで好気性の糸状菌が土の中で有機物を醗酵によって分解し土壌に窒素分を充填します。
最終的には春前に掘っておいた溝に畝の中の有機物と土を埋めて土中で今度は放線菌などによって分解され窒素分を増やします、冬の間に畑を休ませてはいけません、冬季に土壌を休ませると土壌が締まってしまいせっかく出来上がった団粒構造が台無しになってしまいます。
自然農実践のための土壌作りは各種の書籍からの情報を基に総合的に考えるに最低3年はかかります、したがって毎年場所を変えながら同じように土壌に有機物を投入して有益菌を増やしていきます。
この畝の中に有機物を投入する際に米糠を一緒に撒いておくと早く糸状菌が発生するようなので10リットルほどの米糠を混ぜ込んでいます、また畝以外の土壌にはもみ殻を100リットルほど撒いておきました、春にこれらは菌によって醗酵分解して肥料を使わなくても土壌に窒素分が豊富に存在するようになるでしょう。


冬の間にしっかり土壌の団粒構造を維持し窒素分を作っておけば春以降に耕起することも肥料を追肥することも不要となります、気温が下がったときは糸状菌が有機物を醗酵分解するに適した季節です、これが温度が上がるとカビの原因となってしまいます、近年の農業は経験や勘ではなく根拠を持ったテクニックが重要になるのです。
伐採した枝や枯葉の有機物に土を被せる前に米糠を混ぜておくと糸状菌がより元気に活性化します、またその他の部分には土壌表面にもみ殻を撒きました、これも水はけを良くして有益な菌を増やす方法として有効です、近所の畑は白っぽく乾燥して砂埃が舞っています、しかしこの畑はしっとりと水を含んで黒ずんでいます、この差は春以降にしっかり現れるでしょう。
気温がぐっと寒くなる11月に入り室内で冬用の野菜を育ててみようと思い寒さに強いシュンギクの種を買ってきて撒いてみました、鉢は普通の観葉植物用のプラスチック鉢で用土はこれも普通の観葉植物用の用土です。
種を撒いて水をたっぷりあげて1週間、次々に芽を出し成長し始めました、約3ヶ月目にして初収穫でき、その後も数日間隔で収穫できます、室内といってもこの季節にはほぼ日が当たらない北西に窓がある植物の防寒用の部屋でエアコンも付けない部屋ですので日中は15度前後ですが夜には10度を確実に下回ります、それでもシュンギクは元気に育つのですね、ちなみに同じ時期に撒いた二十日ダイコンは芽は出しましたがまったく育ちませんでした。
水もほとんどあげていません、表面が乾いてきたかなというときに底面給水であげる程度です、ほぼ放置栽培でも育つ冬の野菜はすごく重宝します、サラダでたべたり麺類のトッピングにも最高です、冬の季節に育つ野菜はほぼ無いので冬に葉野菜が欲しいときにはシュンギクがお薦めです。

シュンギクは頂点が無くなると脇芽をたくさん出しますので、収穫する際には2節ほど残してカットすると残った節から脇芽を出してまた成長を始め何度も収穫できる万能野菜です、元々はヨーロッパの河原に自生していた野草で中国人がこれを食用として栽培するようになった草本類です、したがって非常に生命力が強いのです。
冬に室内で放置栽培できるのではないかと考え買ってきたシュンギクですが実験してみたら本当に大成功でした、手間がかからず種を撒いて放置するだけで育ってくれます、ただし水切れは致命傷です、常に湿った状態を保持する底面給水方式をお薦めします。
暦の上では春とはいえ例年では2月に入るとは本来の寒さのピークを迎えます、しかし今年はこれまでに無く異常です、例年であれば3月初旬ごろから芽が動き出す盆栽植物や観葉植物の新芽が既に1月中旬の現在で吹き始めています、こうなるとゆっくりできません、植え替えを早めにやっておかないと根詰まりを起こしてしまいます。
今年は22年周期の太陽極大期のピークを迎えます、つまりこれ以上ない猛暑というより激暑に見舞われるということです、昨年も猛暑で各所の田畑が砂漠化し夏ごろから野菜が高騰しました、今年は更に被害が拡大する恐れがあります、農家の人は早めに策を講じた方がよいでしょう。

猛暑といえば温暖化が進み日本で栽培される野菜の種類がどんどん変化しています、そして昔ながらの野菜は平野部では暑すぎて育たないので山を切り開いてどんどん高いところへ畑を増やしている現状があります、また関東エリアでもバナナやパパイヤが庭先で栽培可能となっており千葉県産のバナナなどが出回るようになってきています。
一方で野菜の高騰が続くのが一つの要因なのかは不明ですが家庭菜園がブームになっているようで、ベランダ菜園用のプランターや野菜栽培用の土の販売数が急伸しています、100均ショップでも種や苗がよく売れています。
また小規模の八百屋が増えてきているのが面白い現象です、これらの八百屋の多くは外国人が経営しています、そこで売られているのは農家から直接仕入れてきた通常流通網が使えない規格外野菜です、したがって形は不揃いですが価格はスーパーの半額以下で飛ぶように買われていきます、農家も売る人も買う人も三方善しの商売は誰も損をしないスーパービジネスだと思います、健康のために野菜を摂り入れるようになった私も大いに助かっています。
土壌を豊かにする好気性バクテリアは2種類の属性に分けられます、一つは分解合成菌類でもう一つは醗酵合成菌類です、これらの性質を理解するとどの時期に何をすべきかが明確に理解することができます、このように既に農業は習慣に頼る時代から科学の時代に移行しているのです。
分解合成菌類は春から秋にかけて割と温度の高い時期に活動し土壌の有機物を分解して窒素や他の栄養素を作り出します、対して醗酵合成菌類は冬の寒い時期に活動し土壌の有機物を醗酵によって窒素や他の栄養素を作り出します。
つまり、冬の時期に畑をそのままにしておくと春に種を撒くころには分解合成菌が活動しておらず栄養素が不足するために肥糧を与えなくてはならない状態になります、そこで冬前に醗酵合成菌類の餌となる有機物を土壌に仕込んでおかなくてはならないのです。

餌となる有機物とは野菜の屑や雑草など所謂緑肥と呼ばれる植物類です、他に卵の殻やフルーツの皮などはミネラル分を多く含みますので土壌を豊かにするには持って来いの緑肥となります、その点で言うと自然農は雑草や収穫しないで放置した野菜をそのままにしますので冬季に自然に醗酵分解され土中の窒素成分を増やしてくれるので施肥の必要が無いのです。
また冬が来る前に土壌にこういった緑肥を混ぜ込んでおくことで物理的な団粒構造も得ることが出来ます、何もしないでおくと春先に耕起し肥料を撒かないと野菜が育たない土壌になってしまいます、人間が休んでいる間にも土壌中の菌類は土壌を豊かにするために働いているのです、「土は人間ではなく菌類によって作られている」のです。
尚、これは畑だけではなくプランターも同様です、野菜の収穫が終わったらプランターの土を掘り起こして野菜屑や枯葉を混ぜ込んでおきましょう、春には肥糧を使わなくても野菜が育つ土が出来上がっているでしょう。
近代農業において畑の耕起は常識化されてきました、耕起し畝を作り種や苗を植え野菜を育てるのですが野菜の成長よりもはるかに早いスピードで雑草が生えてきます、耕起と草むしりは農家のルーティンと言っても過言ではありません。
では何故耕起すると種を撒かないのに雑草が生えてくるのでしょうか、それは雑草の種は飛んでくるのではなく実は土の中で休眠しているからです。
雑草の多くは好光性の種子です、したがって土の中に眠っていた種が耕起され表面に出てきて光を浴びたとたんに目覚めてあっという間に成長するのです、そこで畝に黒いシートでマルチングするのですが畝の中で成長した雑草はシートの脇や穴から顔を出すようになります。
これらにより畝の脇にはびっしりと雑草で覆われるようになり、慌てて草むしりをするのですが土壌の表面を掘りますので別の種子が次々と表面に出てきては繁殖するという繰り返しになります。

自然農で耕起しないとこういった負の連鎖は起きません、雑草も野菜と共存しながら土壌表面が乾燥するのを防ぎ空気中から取り込んだ窒素を野菜に送ることにもつながります。
耕起しないと新たな雑草が生えず草むしりからも解放されます、そして土壌を強くして健康な野菜を作れる土壌に成長していくのです、どんな植物でも生える隙間があれば生えてきます、隙間を無くせば意味の無い植物は生えてこないのです。