2021年10月 9日 00:00
これまで説明してきた「寄生」と「片利共生」は、生物界の「共生」スタイルの一つです。
今回は、相手に一方的に害だけを与えるという「片害共生」について説明していきます。
植物の片害共生の代表格として「アレロパシー」があります。
「アレロパシー」とは自身を他の動植物から守るために、根や葉などからフィトケミカル(自然の化学物質)を放出し、他の植物の繁殖を抑制したり微生物や昆虫などからの食害から守る生態を指しています。
他の動植物にとっては何の利益にもならないばかりか害を与える「アレロパシー」ですが、同時に「アレロパシー」を有する植物自体もまた自身の「アレロパシー」によって子孫を残すことができなくなるなどの弊害もあります。
動物は外敵から守るために角・牙・爪・毒など各種の機能を備えるように進化してきました、この「アレロパシー」は植物が進化の過程で獲得した一つの防衛機能と言えます。
さて、「アレロパシー」に関しては最近になってようやく各種の研究がなされるようになってきました。
その理由は雑草駆除やカビ防止が目的です、研究の中で特に題材にされているのが世界中に生息している夏草の代表でもある「セイタカアワダチソウ」です。
「セイタカアワダチソウ」は、「シスデヒドロマトリカリアエステル」という化学物質を根から放出し他の植物の発芽や成長を抑制します。
他にも、クルミは葉や根から「ジュグロン」を放出し、サクラは「クマリン」を放出することなどが解っています。
まだ成分などの詳細に関しては研究段階ではありますが、ヨモギ・アスパラガス・茶・ユーカリ・マツ・ヒガンバナ・アルファルファなども「アレロパシー」機能を有していることが知られています。
また、「アレロパシー」機能を有した植物は有益な薬として太古の時代から人間に食されてきたというのも面白い事実です。
ここで私は大きな疑問を感じます、自身の種の保存にも害となる「アレロパシー」ですがはたして防衛本能とはいえ単純に自身を守るためだけに獲得した機能なのでしょうか?
動物に比べて植物の生態の解明は相当遅れています。
栄養素や成分などは割と早い段階から解明されているものの、「アレロパシー」などの他の動植物に影響を与える生態機能に関しては研究が始まったばかりなのです。
今後どんな真相が解明されていくのか楽しみでなりません。
これらの真の目的が明らかになったとき、我々の植物に対する偏見が一変することは間違いありません。
植物は動かず目立ちませんが、動物と同じ構造の細胞を持つ真核生命体なのです。