2021年10月24日 00:00
「共生」における3つのパターンの代表例を示してきましたが、最後の「相利共生」にはこれといった驚くような代表例は存在していません。
何故なら、これまでの「寄生」・「片利共生」・「片害共生」のような理不尽な関係ではなく極ありふれた関係だからです、したがって疑問さえ起きてこないのです。
でも、この平和な関係にこそ私はある種の大きな疑問を感じました、これが「支配者」というシリーズを纏めようと思ったことに繋がっているのです。
普通の人は、花にミツバチが飛んできて蜜を吸う姿に疑問を抱くことはないと思います。
しかし、この自然な「相利共生」の関係を見て私が抱いた大きな疑問とは、「何故、ミツバチは花の蜜のある場所を特定できるのだろうか?」、「何故、花を咲かせ実を付ける植物はミツバチを寄せる為に蜜を出すのだろうか?」という疑問です。
更には、「何故、脳の無い植物なのにミツバチの蜜を吸う習性を知って、それを受粉という繁殖に繋げているのだろうか?」という最大の疑問です。
ミツバチは生きる為のエネルギー源を植物の蜜に頼っています、そのため花の中心を見つけやすくする為に紫外線しか見えないように目が進化しています。
花を咲かせる植物は花の周りは紫外線を反射し中心部は吸収するようになっています、したがってミツバチから花を見ると白い丸に黒い点が見えます、ミツバチはこれを見つけて寄ってくるのです。
同じように柿の実は種が出来るまでは鳥に食べられないようにアルカロイド(シブ)で種を守り、充分に種が熟すと今度は糖に変え鳥に食べてもらうようにします。
実をつける樹木の種は鳥類や哺乳類の消化器官では消化できない成分によって殻ができています、動物に食べられ遠くに運んでもらい糞と共に地上に種を落とすようにしている為です。
では何故、実をつける樹木は鳥類や哺乳類が糖を好んで食べてくれることを知っているのでしょうか?
動植物間の「相利共生」はいたるところに見られますが、その全てにおいて脳が無い植物が動物の習性を繁殖に利用しています、そのお礼として動物にエネルギー源を与えているのです。
また、ゾウムシなどの昆虫は実が動物に食べられないアルカロイドで満たされている状態の時を積極的に利用して幼虫の餌にしています、そして熟成する頃には成虫になり抜け出しています。
例えば、栗の実はイガを付けて中の種を熟成するまで動物や昆虫から守っていますが、「クリシギゾウムシ」はあえてこの状態の実に卵を産みつけます。
栗の実を食べて育った幼虫は栗の実が熟成する頃には蛹となっています、そして栗が熟成しイガをつけた殻が割れて実が落ちる時に一緒に地上に落ち成虫になります。
この「クリシギゾウムシ」は、栗と動物の共生システムを解ったうえで更に利用しているとしか思えないのです。
また、特定の花と特定の鳥類や昆虫の関係はどちらが先にその関係になるように進化させたのでしょうか?
私は食物連鎖という大きな枠組みの中で特定の種だけが存続するのではなく、すべての生命体が生きる為にそれぞれがそれぞれの方法で「相利共生」という関係を構築しているとしか思えないのです。
それほど地球上の各種生命体は、特徴的な共生スタイルを編み出して種の保存をしています。
では、これらの生命体はどのように相手の性質を知る事ができたのでしょうか?
先述したように、脳が無い植物が対象となる動物に合わせてどのようなメカニズムによって進化を遂げているのでしょうか?
このような大きな疑問が「相利共生」について調べれば調べるほど湧きあがってくるのです。
この大きな疑問の解は地球上に生命体が発症しどのようにしてそれぞれが進化してきたのか、ここに大きなヒントが存在していると考えるようになりました。
そして、「共生」という異種生命体相互の共存関係は、真核生物が地球に誕生した瞬間に仕組みそのものが作られたのではないかと考えるようになったのです。