2021年10月17日 00:00
「片害共生」の代表例をあげてきましたが、ここで研究者の間で議論となっている例を幾つか紹介します。
「片害共生」は片方が害を受けているだけという共生形態を指していますが、確実に「片害共生」であると認知するには難しい面が多々あります。
例えば、ダニの一種は移動手段としてハエの足などにくっついて移動しますが、これはハエからみると飛行の邪魔になり害だけですから「片害共生」となります。
ところが、ダニからみると利益となりますから「片利共生」ともとれるのです。
ではハエとダニとの共生形態は「片害共生」なのでしょうか、それとも「片利共生」なのでしょうか?
動物の体毛の中に潜み生活する多くのムカデやシデムシ類も同様です、更に大きな樹木に生えるコケ類やランの仲間のように他の樹木に張り付いて生長する植物も同様です。
これらはどの共生形態に入れるのかというと、どちら側に視点を置くかで変化してしまうのです。
海の中ではイソギンチャクとヤドカリの関係があります、イソギンチャクは移動する為にヤドカリの貝の上に乗って移動します。
ハエとダニの関係同様に、これもまた見る視点を変えると「片利共生」であり「片害共生」とも言えるのです。
このような例が数多く存在しており、正確にそれぞれの生態をもっと深く研究しないと共生形態を特定することはできないのです。
更には、一種の「寄生」ではないかという見方もできるほどの「片害共生」も多数存在します。
その代表例がカビや菌類の多くです、カビ類は空気中を胞子の状態で浮遊しており条件が揃えばどんな所にも発生します、発生した場所が植物や人間も含めた動物であれば「片害共生」と考えられます。
人間に発症する皮膚疾患や気管支疾患の中には、カビが起因するものも多く存在するのです。
共生形態はそれぞれの個体の生態研究が進まないと特定できないほど深く、そして神秘なベールに包まれているのです。
極論を言うと、これまでお話ししてきた「寄生」・「片利共生」・「片害共生」はミクロからマクロで見方を変えると地球規模での生態系という自然バランスが取れているということです。
もっと言えば地球規模での利害の循環ということもでき、極論的には相手を変えながらの組織的な「相利共生」となるのではないでしょうか?
一つの種だけが繁栄することなく、バランスを取りながらすべての種が存続できるようになっているとも言えるのです。
ただ、この長く続いた生体バランスが崩れるとしたら、それは人類の誕生によって齎された食べる目的以外での乱獲と自然環境破壊に他なりません。