1年も着ていない服を大事に保管しておいても多分着ることはないでしょう、他にも一度使わなくなったものは存在すら忘れてしまってほとんど使われることもありません、多くのビジネスにも同じことが言えます、例えば収集したサービスや商品の資料の多くは年末に捨てることになります。
何時か何かに使えるかもという「とりあえず保管しておく思考」、それは多くの場合に幻想にすぎないことを40年の経営経験で学んできました、ここで不要なものを取っておくデメリットを考えたことがあるでしょうか?
一番のデメリットは使われないものを何かの拍子に目にした瞬間に蘇る記憶です、これに現在新たに生まれた思考が囚われることがあるのです、もう一つはその保存スペースの問題があります、引き出しやクローゼットなどの多くの保管場所を取られてしまいます。
人間には処理能力のリミットという限界点があります、例えば人付き合いのリミットは同時期に最大20人が限界という説があります、つまり新しい付き合いが始まれば誰かがはじき出されてしまうことになります。
事業推進等に関すれば同時に最大4つという説があります、つまりこれもそれ以上の何かを始めれば何かがアイドリング状態になるということです、百戦錬磨の経験者はこのリミットを正確に読んでおり幾つかの集中する事業以外を事前にアイドリング状態にしておき優先する事業に思考とリソースを投下します。
何事も自身の能力や器を知って欲張らないこと、それよりも優先すべき人や事項にパワーをかけたほうが効率的です、そして多くの付き合いや事業を同時並行させる術を身に着けることです。
それを可能にする術が組織行動という魔法のシステムなのです、つまり自身の分身を多数作る以外にないのです、私は起業する人に「一人前の経営者になりたいのならアルバイトでもいいから従業員を雇うこと」だと言います、「誰かの生活を担っている」というプレッシャーが経営者思考を磨きより効率良い経営思考を身につけることができるのです。
どんな業界にも存在する状況を示すステージサイクルを正確に掴んで経営に活かさなくてはいけません、業界に限らず以下のようなステージサイクルが存在しています。
1.カオス期
ポツンポツンと小規模な活動を興す人が表れ思考錯誤で細々と事業を営んでいる状況。
2.黎明期
その中から何社かのリーダー的存在が表れ業界を形成し始める状況。
3.成長期
リーダー的企業の何社かブレークし業界マップが明確に形成され市場規模が膨れ上がってくる状況。
4.拡大・安定期
トップ企業数社、中堅企業数百社、それに群がるサードパーティが数千社を越え、市場規模も拡大し誰もがその存在を知る状況。
5.衰退期
トップ企業や中堅企業から倒産する企業が現れ徐々に市場規模が縮小してくる状況。
6.低位安定期
大型倒産が落ち着き市場規模が落ちるところまで縮小した後、しばらく小康状態が継続する状況。
7.復活期
新たなるリーダー的企業が忽然と現れ、新商品やサービスを引っ提げて業界を再度活性化させ市場もそれに連れて復活してくる状況。
以後3~7を一定のサイクルで繰り返すことになります、あなたの参加している業界は今どの状況でしょうか、業界全体の状況を正確に把握して今何をすべきかの経営戦略を立てて行動することが肝要です。
売れ残って在庫になってしまう商品を「もったいない」と思う気持ちと、本当は売れるはずなのに商品がないため売り損じてしまって「もったいない」と思う気持ちを比較してみましょう。
多くの人は「売れ残って在庫になってしまう商品」に気持ちが行きがちになります、何故なら「売れるはずなのに売れていない商品」というのは目に見えるからに他なりません。
本来なら月に1000個売れるはずの商品なのに500個売れたことに喜んでしまい、商品不足により未来に売ることができなかった500個のチャンスロスに気が付きません。
他方で100個仕入れて900個を売り100個在庫になってしまったとしたら、その売れ残った100個を目の当たりにして次は900個を仕入れその次は800個と仕入れ数を減らしてしまいがちです。
人は多分にチャンスロスよりも在庫ロスに気持ちが行きがちになる本能があります、それは目に見える失敗を自身が意識せざるを得なくなるからに他なりません。
それならば最初から売れ残ることを計算して利益をを最大化する方策を考える必要があります、これが成功する戦略経営手法なのであり最初から計算されたロスをサンクコストと呼びます。
また商品だけではありません、飲食店での食材不足やサービスでの人手不足にも同様のことが言えます、全ての業種において「チャンスロス」を意識した経営戦略が重要不可欠ということです。
売れる作家などは一時期に次々と作品を出してはそのほとんどがヒット作となるのですがピタッと作品が出なくなるときがあります、これがその人の才能の臨界点ということになります、つまり自身の中に培ってきたイメージも含めて蓄えてきたデータを出し切った結果であり私は「才能の枯化現象」と呼んでいます。
ブロガーも同じことがいえます、一時期爆発的に発信していたかと思ったらピタッと発信しなくなる人がいます、おそらく貯め込んできた発想やノウハウを全て出しきってしまったのかもしれません。
ここで思うのですが、どんな業界においても大きなヒットは出さなくも継続してコンスタントにコンテンツを出し続けている人もいます、このような人は臨界点を知らない人であり常に進化と成長し続けている人と言えます。
どちらが凄いとかいう問題ではなく個性の問題だと思います、「太く短く」か「細く長くか」、何れにしても人間の能力にはリミットというものが存在します。
時々どんな業界においてもモンスターと呼ばれる人が存在しています、この人は「太く長く」を継続できる人です、どのようにしたらそれが可能になるのか本人でさえ解らないのかもしれません、私が考えるにきっとその人は人生に対する使命感が強いのではないでしょうか、そんな感じがしてなりません。
「何度も言っておいたので伝わっているはずだ」と言う人がいます、ところがいざ蓋を開けてみるとその期待していたはずの人が予想だにしない期待はずれな行動をすることがあります。
上司の「言って聞かせる」はだいたいが部下には通じていません、部下からすれば「上司が何か言っていたな」ぐらいの気持ちでしかないのでしょう、したがって上司が「期待したとおりの働き」は全くといっていいほどできるはずもないのです。
賢い上司とは、「部下が自ら状況を理解し動くように促す」ことを念頭に教育する人です、自ら状況を理解させるためには「今、何を優先すべきか」を教えていかなくてはなりません、それは口頭で教えるのではなく身体に染み込ませなくてはなりません、つまり失敗も含めた経験を通して理解してもらう必要があるのです。
そして口頭で教えるときには状況を具体的に想像できるよう例えや過去の実例を通して幾つかのシミュレーションを提示することが重要です、セブン・アンド・アイホールディングスの鈴木会長は いくら叱り飛ばしてもお店の清掃をしない店長に状況を理解してもらうため薄暗くて汚い店舗に無言で連れて行ったそうです、そこで「お前はこの店を見て買いたいと思うか?」と一言聞いたそうです。
人が自ら動くようになるためには 「具体的に見えるもの、自分で理解できるもの」を目の前に示して 自らが判断できるような状況を作ってやることが肝要なのです、これが生きた教育というものです。
ただし何をしても情けをかけても通じない人は何処にでもいます、厳しいようですが教育する時間と労力が無駄というものです、自ら離れて行くように誘導してあげるのも愛情だと思います、それが双方にとってベストな方法なのです。