誰でも自分を否定されたくはありません、嫌なことを避けたいがために結果的に自分の周りに「理解者」だけを置いてはいないでしょうか、間違いを指摘し修正のチャンスを与えてくれる人を周りに持たない経営者は世の中と会社が合致している時には上手くいきますが、世の中の流れに対して少しでもズレが生じた時点で一気に転落してしまう危険性があります。
上手くいっている時には危険なシグナルに目を向けることはなかなかできないものです、したがって将来確実にやってくる「災い」を考えないのが人間の都合良さというものかもしれません、企業の景況トレンドは確実に一定の周期でやってきます、これは誰が経営しても同様に訪れるのです。
良い時もあれば必ず悪い時もあります、その流れを事前に読んで経営方針を考えていかなくてはならりません、それが経営者の使命なのです、悪い状態に目を向けず自分を誤魔化しながら勢いだけで進んでしまって後戻りできないところまで行ってしまう愚かしさは誰もが持ち合わせている心の問題です。
それを見極め普段から戒めてくれる「ご意見番」や目の前の事実を正確に伝え修正のアドバイスを行う「参謀」を置くことは経営者としては必須事項とも言えます、周囲の意見を聞かず自分の思い入れや都合だけで方針を決定していては何れは「裸の王様」になってしまうのは至極当然の流れでもあります。
今でこそ販売中止になってしまいましたが過去ホンダが発売した新型軽スポーツカー「S660」が発売と同時にフィーバーしました、発売当初の販売店での試乗スケジュールは連日満杯で見るだけでもできない状況が続きました、予約だけでも1年待ちというホンダにとっては久しぶりの大ヒット商品となった新型軽スポーツカー「S660」ですが大ヒットの裏にはある秘密がありました。
それは「らしさ」の追求です、ホンダはこれまで長年顧客第一主義として多くのお客様の要望を聞き商品化してきました、しかし低迷にあえぐホンダは昔のような「強いホンダ」を取り戻すべく企業改革に乗り出したのです、それが社内公募という形を取りグランプリに選ばれたのがこの「S660」に見る軽スポーツカーだったのです。
提案者は当時26歳の入社4年目の技術者でコンセプトは「自分が乗りたい車」でした、そして26歳の若手技術者は本部長権限を持つプロジェクトリーダーとなり20代・30代の技術者15名を社内公募によりチームを結成し開発にあたったのです、ホンダのこの大ヒットの裏に見る顧客の意見ではなく開発者の独断による商品化は世の中の風習とは逆を行くことで大成功を収めたのです。
忘れてはいけません、ベンチャーや小規模企業は企業の存在価値を出していくべきであり経営者の「自分らしさ」の追求に他なりません、世に溢れる成功書にある「顧客第一主義」とは大手企業が考えることであってベンチャーや小規模企業はあくまでも「自分らしさ」の追求を行っていただきたいと思うのです。
どんな人でも起業してまともな事業を3年も行っていればおのずと一種のカリスマ性を放ってきます、またカリスマ性とは「華がある」と表現することもできます、これは自身は気が付かないものですが他者が見れば一種独特のオーラが出てくるのです。
起業して企業を大きくするという行為は経営を通して自らの器を大きくすることに他なりません、企業とは社員であろうがビジネスパートナーであろうがそのビジネスは人によって成り立っています、関連する人によってその企業の価値を生み出し利益をもたらします、その価値を上げるために経営者は日々努力をするものです。
その結果において経営者は多くの経験を通して自らの器を大きくしていきます、それが一種独特のオーラを放つようになるのです、カリスマ性を身につけた経営者は明確に自社を「こういうビジネスを行う会社」であることをシンプルに説明できるようになります。
そのシンプルで明快な説明は社員やパートナーを惹き付けるようになります、そして更にカリスマ性を放つようになってくるのです、企業価値とは社員やパートナーと共有できなければ「利益」を生み出す仕組みも生まれてきません、このシンプルで明快な説明は自他共に一種の「マインドコントロール」にもなってくるのです。
起業当初は自社をなかなか明確には説明できないものです、でもそれは当たり前なのです、何故なら起業して何年もかかって企業価値を創造し自身を含めたその企業の特性が見えてくるのには多くの時間が必要なのですから、経営者は起業させた自身の会社を輝くオーラを漂わせるまでに多大な年月をかけて熟成させることが一つの使命でもあるのです。
時々「理念経営」という言葉を耳にします、企業にとって「理念=現実」となるような理念を作らなければ歯の浮くような素晴らしい理念を作って公示したとしてもそれはただの「絵に描いた餅」になってしまいます。
企業にとって「理念」とは簡単に言えばその「企業らしさ」でもあります、もっと言えば経営者の正直なその会社のビジネスを通して社会に存在を示す気持ちが表れていなければなりません。
その会社の商品らしさ、その会社のサービスらしさ、つまりその「会社」らしさを追求することで 経営者は前向きな姿勢で経営ができるというものです、「らしさ」を追求している経営者は脇目もくれずに自社のビジネスに邁進できています。
自社の「理念」を読んで何か自分らしくないと感じるのはおそらく他者や周囲の目を気にして応えようと無理をしているからではないでしょうか、その会社はその経営者がやりたいビジネスを通して社会貢献するという気持ちで創業させたと信じたいです。
であれば先ずは経営者自身が「自分らしさ」を追求することが肝要です、そしてそれを正直に言葉にした「自分らしい理念」を掲げることです、それができて初めて会社は次のステップへと成長していくことができるというものです、企業の「らしさ」を追求できてそれを表現できるのは経営者しかいないのです。
自社のビジネスが社会にとってどれだけの「価値」を産み出すことができたかは収益という数字に如実に表れてきます、では収益とは何によってもたらされるものなのでしょうか、それはその事業に関わる関係者全員の経済活動によってもたらされたものなのです。
更にはその収益は商品やサービスを提供されたお客様から支払われたものです、つまりは社会に貢献できたかどうかという指標というのはこの意味からです、事業に関わる関係者全員の活動により生み出されるものが収益であるなら、その収益によって生まれた利益はその企業の存在価値そのものと言えます。
企業は「利益が全てではない」と言われますが、しかし赤字を何年も継続し納税もしない企業にはたして社会にとって存在価値や存在する意義が有るのでしょうか、私は「企業とは納税することが一番の社会貢献である」と考えています、それは企業価値を象徴しているものだからなのです。
起業したら3年以内には黒字転換し納税する、そして企業の存在価値を世間に問う、これが正しい経営者マインドだと確信しています。