
美味しい料理を食べると元気になります、私の場合は音も料理とまったく同じ反応になるのです。
オーディオ道楽復活での音出し試験を兼ねた音質の組み合わせチェックにおいて、これが面白いように身体反応に出るので自分でも笑ってしまいます。
高級なハイエンド名機と謳われたアンプでも、本当に聴くジャンルと合わせるスピーカーによっては最悪な音色を奏でることがあります。
こういうときにはあまりのショックで意気消沈し顔色が一気に変わり、しばらく音出しをやめて別の事を始めてしまうほどに元気をもぎ取られてしまいます。
逆に思った通りの愉音が得られたときには身体も軽くなり、ニヤニヤしながらジャンルをどんどん変えて何時間も聴きこんでしまいます。
優秀なスピーカーはアンプを選ばないと言われていますが、逆に優秀なスピーカーほどアンプの個性をそのまま表現する代物はありません。
その意味では優秀なスピーカーにはアンプとの相性は無いと思いますが、アンプの音色は自分の好みを知らないとせっかく買ったのに最悪の結末を齎します。
最近のアンプでは「大外れ」ということはあまりなく、バランスが取れたナチュラルで良い子の音色ですが、70年代や80年代のアンプは本当に千差万別の癖者ぞろいです。
マニアでなければビンテージアンプを今更あえて使うことはないと思いますが、自身の好みの音色を探るためにこういったビンテージアンプの音質確認も極めて重要で音決めの参考になるのです。
その製品そのものよりもメーカー別の年代による音色の傾向とその組み合わせによる結果が気になるのです、最新の小型ブックシェルと70年代のアンプを組み合わせた音色が最も好みの音色だったなどということが普通に起こりえるのです。
誰が最初に言ったのか、「オーディオはオカルト」という名言(迷言)があるくらいです。
美味しく料理を作るには、それぞれの食材の味を知って合わせる調味料を選んで量を加減します。
食材と調味料のそれぞれの味が解って初めて合わせた時の最終的な味が合わせてみなくてもイメージできるのです、オーディオの音質チェックはこれとまったく同じなのです。
先ずはそれぞれの音質と音色を確認、そして組み合わせての確認、これを通して肌感覚で解るようになると、合わせるまでもなくイメージだけで最適な組み合わせが解ってくるのです。
「音も味と同じ、オーディオ道楽とは音を料理すること」、私の昔からの自論です。

日本のオーディオ史において極少メーカーだったサンスイが何故80年代にアンプのシェア40%以上を誇るまでに成長したのか、そして何故ジャズファンがいまだにサンスイのアンプを使い続けるのか?
その秘密はJBLに在ると言っても過言ではありません、60年代初頭トランスメーカーだったサンスイ電気はラジオを手始めにオーディオ界に進出します。
ところがチューナーやアンプは自社製で何とか道を開きますが、最終的な音が決まる肝心のスピーカー製造のノウハウがありません。
そこで、当時の技術者が目を付けたのがJBLのアルニコ磁性体を使ったスピーカーユニットだったのです。
1966年、そんなサンスイはアメリカで既に世界ブランドを確立していたスピーカー界の大御所JBLの日本総代理店を獲得するという快挙を成し遂げたのです。
当時のJBLはジャズのライブハウスやロックカフェのPA用スピーカーでシェアを急拡大していました、このJBLの日本総代理店の獲得からサンスイの快進撃が始まるのです。
アンプの技術者陣は、JBLのスピーカーの良さを100%引き出すために改良に改良を加え涙ぐましい努力を続けたのです。
その甲斐あってJBLのユニットを使ったスピーカーシステムと、それに見合う音質を持ったアンプを70年代に大挙市場に投入しました。
ジャズファンやロックファンはサンスイのJBLユニットを使ったスピーカーとアンプをセットで買い、あっという間にオーディオ界でトリオ・パイオニアと並ぶオーディオ御三家と呼ばれるまでに成長を遂げます。
JBLの強力なアルニコ磁性体を使ったレスポンスが極めて早く強力なスピーカーユニットをドライブするアンプは当時の主流であるNFB(負帰還)では無理です、ダイレクトに入力を増幅し高速で出力に伝えなければなりません。
そこでお家芸の強力なトランスが打開の鍵となりました、強力な電源トランス、巨大な容量の電解コンデンサ、これによってレスポンシビリティが極めて高くダイナミックで硬質な低音域を発するアンプが誕生したわけです。
90年代になると世はバブル景気が終焉しオーディオ氷河期に入ります、高額なオーディオ製品はピタッと売れなくなりました。
サンスイはこの時代をお家芸を捨ててまで生き残りを図りましたが、サンスイサウンドが消えたアンプにジャズファンはガッカリです、そして徐々にオーディオの歴史からサンスイの名前が消えていったのです。
90年代中盤から現在に至るまで、70年代から80年代に凌駕したサンスイサウンドと称された音質のアンプは作られていません。
したがってジャズファンは70年代~95年に製造されたサンスイのアンプを大事に使い続けるしかないのです、ジャズファンの多くのシステムはいまだにアンプはサンスイでスピーカーはJBLかダイヤトーンです。
サンスイとダイヤトーンが消えた今、ジャズファンの嘆きが聞こえてきます、「アンプとスピーカーを新製品に変えたくも、買いたくなるアンプもスピーカーも無い!」と。

電化製品は独特の臭いを発することで知られています、特に通電中は熱を発するので敏感な人はその周囲に行くだけで臭いを嗅ぎわけることができます。
この電化製品の独特な臭いは、通電によって温まることにより使われている部品の材料や接着剤、また加熱した際のシャーシや冷却フィンなどの金属の発する臭いが混ざり合って独特の臭いの元となります。
さてオーディオと加齢臭という話ですが、本当にアンプは年を追うごとに臭いが変わってくるのです、使っていても使っていなくても20年程すると独特の加齢臭を発するようになります。
殆どしない製品もあるのですが、メーカーによってはかなり強烈な臭いを発する製品もあります。
機械の加齢臭ですから人間のものとは異質ですが、何とも言えない臭いで私はどちらかというと苦手な臭いです。
埃が燃えたような臭いがする製品があり、最初は中に溜まった埃が発熱によって発していると思って分解してみたのですが埃は殆どなく別の原因だと解りました。
このアンプの加齢臭の原因は電源トランスに在りました、他の電化製品には大型の電源トランスはほぼ使うことはないのでこの臭いはしませんが、アンプは電源トランスが重要でどの機種にも使われています。
この電源トランスの錆止めや絶縁対策に使われている樹脂製のワックスが、経年経過と共に劣化してきて先の独特な臭いを発するようになります。
メーカーや製造国によって若干違うのですが、私の経験上アメリカ製のトランスが最も強烈な臭いで次に日本製です、ヨーロッパ製は経年経過で臭いが変わることはあまりないようです。
アメリカ製のものはアメリカの雑誌などによく使われているインクの臭いと同じように鼻にツンとくる臭いで、どちらかというと化学薬品的な臭いです。
対して日本製のものはムフッとくる腐敗した有機物の臭いに近いです、有機物っていろいろありますが枯れた木やどぶ川のような臭いです。
最後に日本のオーディオメーカーに一言、「音質を極めるだけではなく、後々の臭いのことも少しは気にしてくれると嬉しい!」。

先日、「往年のブランド」の記事を書こうと思いブランドを書き出してみると、日本の世界的ブランドがあっという間に20を越えました。
しかし今これらの半数のブランドは現在製品を出していません、70年代から90年代前半の日本のオーディオメーカーは本当に世界を席巻していました。
スピーカー部門では圧倒的なパワーでダイヤトーンとヤマハの快進撃が凄かったです、世界中の放送局や音響現場のモニタースピーカーに採用され世界中のマニアを虜にしてしまったのです。
またアンプではマッキントッシュやマークレビンソンという世界ブランドにラックスマンとアキュフェーズが果敢に挑み、世界の一大高級ブランドを確立しました。
普及クラスではサンスイ・トリオ(ケンウッド)・パイオニアに加えて、ソニー・テクニクス・オンキョー・ビクター・デノンとこの時代に世界ブランドを確立した日本のオーディオメーカーは数しれません。
ところがバブル経済が崩壊し日本のこういったメーカーの多くが経営危機に陥り倒産や事業撤退が相次ぎました、オーディオ界にいうスピーカー598戦争やアンプ798戦争の成れの果てでした。
いまだによく覚えていますが、90年代後半にはオーディオショップには閑古鳥が鳴き誰もいない状況で当然オーディオメーカーも本格的なオーディオ商品を出すこともありません。
世はミニコンポとAVアンプの時代へと移行していったのです、オーディオショップから大手家電量販店に客が流れていきました。
この間に世界中でニューブランドが次々に誕生しました、特に中国メーカーの台頭が凄まじかったです。
10年後の2005年ごろから、急速に事業提携や資本提携により生き残った日本のオーディオメーカーも息を吹き返しつつありますが快進撃と言うほどではありません、特に現在ではスピーカー部門で魅力的な製品を出しているのはオンキョーくらいです。
日本メーカーが強かった時代が懐かしいです、当時は全ての方式基準が日本発だったのですから、でも時代は第二次日本オーディオブームの兆しが確実に見え始めています、往年のオーディオブランドの復活を強く望むのは私だけではないでしょう。
ネット上で賛否両論の情報が飛び交っていたので、つい興味本位で買ったスピーカーユニットがワンダーピュアが販売するWP-FL08という8Cm口径のフルレンジです。
エンクロージャーは別に購入しないといけないのですが、推奨のエンクロージャーをそのまま素直に購入しました。
ユニットがペアで6,000円、エンクロージャーが7,000円ほどで都合1万3,000円です。
ワンダーピュアWP-FL08+専用エンクロージャ

組み立ては極めて簡単、フォステクスのかんすぴセットと同様にケーブルをカチッと繋いでネジ止めすればあっという間に組み立てあがります。
ネジ止めの下穴も開いているのでなにも気を遣うところもありません。

このエンクロージャーですが、作りはフォステクスのP-1000Eよりもかなり豪華な作りで角の丸め処理も見事だしサランネットも付いています。
何と言ってもターミナルがバナナプラグ対応の高価な真鍮無垢の金メッキものを使っているのです、これ個別に買えばペアで2,000円以上する代物です。

ユニットはOEMだと思うのですが作りはしっかりしています、問題はエンクロージャーです。
組み立てが終わりユニットのエージングがてら音出しテストを実施しました、これはまた別途き報告します。