
どんな事でも「無難な方法」と「ベストな方法」とが存在しているように、音にも「無難な音」と「ベストな音」が存在しています。
そもそも「無難」というのはノンリスクを指していて失敗しないことを言います、なので音に対しても悪くはないが優れているわけでもないということです。
だいたいが「無難」というのは褒めるところが無い場合に評論家やマニアが多用する表現です、対して「ベスト」というのはその人にとって最高の方法であり個性が表れるのも特徴です。
なので音に関して言えば、音質的には悪い音かもしれないがずっと聴いていたくなるような好みの音質であればその人にとってはそれがベストな音だということです。
ハイファイオーディオ道楽という愉しみは、無難な音を探すのではなく自分自身の納得がいくベストな音を追求する旅でもあります。
誰に何を言われようが自分が好んで聴いていたくなる音をアンプやスピーカーを変えては探し続ける、その道のりは極めて長く厳しいものがあります。
妥協しても後悔が大きい為に適当に妥協することもできません、例え道楽でも自身の考えに妥協する人はビジネスも含めてあらゆることに妥協してしまう人です。
妥協を許されない道のりだからこそ愉しいのです、愉しいと思えなくなったらいつでも止めたらいいのです、だって道楽だからです、そこがビジネスとの一番の違いです。
生業としてのビジネスでの愉しみと道楽の愉しみ、まったく次元の異なる愉しみがあるのです、これもまた人生の陰陽バランスというものなのです。

1980年代に起こったスピーカー598戦争(1台5万9800円、セットで約12万円)は、オンキョーのD-77の発売によって勃発しました。
そんな激しいミドルクラスのスピーカー598戦争ですが、その裏でも別の598戦争が水面下で繰り広げられていたのです。
その裏の598戦争とは、1988年に勃発したCDプレーヤーの598戦争でした。
この年の5万9800円のCDプレーヤーを一気に列挙してみましょう。
ついでと言ってはなんですが、それぞれの製品の要であるDAC仕様も調べましたので合わせて紹介しましょう。
・ソニー CDP-228ESD バーブラウンPCM58P(モノラルDSPを左右分離で使用)
・ケンウッド DP-7010 バーブラウンPCM58P(モノラルDSPを左右分離で使用)
・ビクター XL-Z521 バーブラウンPCM56P+2bitディスクリートDAC
・パイオニア PD-717 アナログ・デバイセスAD1860N-J(モノラルDSPを左右分離で使用)
・テクニクス SL-P777 松下電器MN6741(独自の1bitマッシュ方式)
さて、その後CDプレーヤーやユニバーサルプレーヤーで名を馳せるデノンはCDプレーヤー598戦争を他所に6万円ジャストの値付けでマイペースな製品作りをしていたのは面白いです。
アンプ798戦争やスピーカー598戦争、そういった世の流れには翻弄されずのこの我が道を行くという姿勢は立派です。
今となってはですが、どの業界でも他社動向に翻弄される企業よりもマイペースに進めていた企業がバブル崩壊後に拡大成長していった、この事実は事実として記憶してほしいと思います。

アクティブ型(アンプ内蔵)のサブウーハーにはデジタルアンプと重低音域だけを取り出すフィルターが内蔵されています、したがってアンプのプリアウト端子にサブウーハーを繋ぐと通常の音声情報のうち重低音域しか再生されません。
この特性を応用してダブルサブウーハー(ステレオサブウーハー)というテクニックがあります、本来はオーディオで小型スピーカーを使う場合の重低音域の補正を手軽に行える疑似マルチアンプ方式でのテクニックですが、これをホームシアターに応用してしまうというものです。
ミドルクラス以上のAVアンプの多くにはフロントプリアウトとセンタープリアウト、そしてサブウーハー用端子が付いています、そこでサブウーハー端子ではなくフロントプリアウトのLRにそれぞれ1つのサブウーハーを繋ぐのです。
つまり5.1Chでは5.2Chとなります、この場合のサブウーハーは前方に直接音を出すタイプのサブウーハーがお奨めです。
そしてフロントスピーカーに中型か小型のブックシェルフを使って、その下にサブウーハーをそれぞれ設置します。
こうするとフロントスピーカーチャンネルが重低音域まで出すような格好となり、本来のサブウーハーの代わりをします。
しかもステレオでの重低音は迫力があり、これにハマると1発使いのサブウーハーに戻せなくなるほどです。
ただライブ感を愉しむ場合は良いのですが、SF映画などでの下から湧き上がるような重低音の効果は期待できません。
私は一時的にこのダブルサブウーハーを愉しんでいた時期があるのですが、どうしてもSF映画などでのどこからともなく聞こえてくる地響きのような重低音が自分好みだと解ってシングルサブウーハーに戻した経験があります。
どんなジャンルでホームシアターを愉しむかで重低音域の出し方も変わってきます、ジャンル次第ではこのダブルサブウーハー方式は虜になってしまう人もいるでしょう。
スペースさえ確保できるなら、ダブルサブウーハー方式と間接的な重低音を再生するサブウーハーを使ったトリプルサブウーハーも面白いかもしれません、つまり5.1Chが5.3Chになるわけです。
ただし問題は重低音域の位相反転での空間合成で重低音域が相殺されマイナス効果と出る可能性があります、狭い部屋ではこのリスクの方が高いので置き方に充分な注意が必要です。
ダブルサブウーハーでさえ位相反転合成で重低音が消えてしまうという苦い経験を嫌と言うほど味わっている私は、そこまでリスクを冒してまでやってみたいとは思いません。
一本の間接型サブウーハーでさえ置き場所を間違えると後方に出た重低音が後方壁反射で相殺される事もあるのですから、そうとう設置場所と3つのサブウーハーの音量調整に苦労すると思うのです。

私は何故かどんなものに対しても癖の強いものが好きなのです、例えばブルーチーズのような独特の香りの強いもの、またパクチーなどの癖が強いハーブ類などは大好きで好んで食べる方です。
逆にこういった独特の個性が強い味を受け付けない人はどういう味覚をしているのだろうかと疑問さえ覚えてしまうのです、ウイスキーもウイスキーの中でも最も癖が強いと言われるアイラシングルモルト系が大好きでラガヴーリンやカリラなどは超が付くほど大好きです。
味や香りだけではなく音も同じで、何か目に見えない癖の強い存在を凄く意識してしまうのです。
オーディオの音色という意味では癖が強いと思うのががサンスイとラックスマンのアンプです、スピーカーではBOSEが筆頭です。
当然私の聴感覚をくすぐらないわけはなく、これらの音色は好きというよりもどうしても意識的に聴きたくなってしまうのです。
どうしてこういう音色を目指して設計したのだろう、この疑問にも似た感覚に浸るのが好きなのです。
これらの癖のあるアイテムを使って自分の好みの音色になる組み合わせを探るのが何とも言えない喜びがあります、逆に良い子の音色は確かに聴くに邪魔にはならないのですが面白みはまったく感じません。
ワーキングBGMなどでの聴き流し用のセットに何とか使っても、おそらく一生メインシステムでは使わないでしょう。
良い意味でも悪い意味でも癖が強い、この指向は物だけではなく人間に対してもその傾向が強く出ている気がします。
癖が強い=個性が強い、私にとっては興味の対象であって無視できない存在なのでしょう。
普通の人はこういう存在は面倒くさいと感じるでしょう、私は人が敬遠するような面倒くさいことがきっと好きなのかもしれません。

70年代~80年代のミドルクラス以上のアンプには、フォノ入力でMM/MCという切り替えスイッチが付いています。
エントリークラスのアンプには単にフォノしかありません、切り替えスイッチが無い場合は全てMM型と覚えておいてください。
MM型/MC型というのはカートリッジのピックアップ方式の違いで、MM型はマグネット方式、MC型はコンデンサ方式というものです。
マグネット方式はレコードの溝の信号を読み取った針によって稼動するマグネットがコイルの中に入っており、これによって起電させる方式で安価に製作でき一般的な方式です。
対して後から生まれたコンデンサ型は、平行に取り付けた金属片の間隔を溝の信号を読み取った針によって変化させることによって生まれる静電容量の変化を電気信号に変える方式で、MC型専用のイコライザーが必要になります。
つまり、MM/MCの切り替えスイッチが付いているアンプは、MM型とMC型それぞれの2種類のイコライザーが付いているということになります。
さて問題はその音質なのですが、MC型は繊細な音が要求される場合には必須で小さな音でもノイズが入りずらく高音質と言われています。
対してMM型は、ダイレクトに起電された信号を復調するだけなのでダイナミックな音だと言われています。
ただ、マグネット+コイルという機構は周辺に存在する磁気の影響を受けやすくノイズが入りやすいと言われています。
ただ、これも実際に実験してみるとMM型もMC型も大きな違いはないと実感できます。
私の持っているアンプが個性が強い物ばかりなのか、スピーカーのせいなのかは解りませんが、少なくてもエントリークラスの製品ではなくハイエンドのセパレートアンプにオンキョーのD-77MRXという3ウェイの大型ブックシェルフスピーカーで視聴した結果です。
平均的なMM型に比べて高価なMC型、いったいどんなジャンルのどんな音を追求している人が使うのだろうかと思うのは私だけでは無いでしょう。