
先ず最初に一言ですが、センタースピーカーはホームシアターシステムの必須なるスピーカーであり決してお飾りではありません。
ある意味ではフロントスピーカー以上に重要になります、その理由はこの記事を読んでいただければ納得してもらえるでしょう。
通常のホームシアターシステムではフロントスピーカーが画面の両サイドに設置し、センタースピーカーは画面の中央真下に置きます。
そしてサラウンドシステムの特性上、この3つのスピーカーにボイス成分が振り分けられています、サラウンド方式によってはセンタースピーカーだけに振り分けられる場合もあります。
一般的なサラウンド方式の場合にはボイスを画面の中心から綺麗に出そうとすると3つのスピーカーの位置と音量バランスが重要になってきます、映画鑑賞ではボイスが画面の中央から出ていないと気持ちよく愉しめません。
したがってフロントスピーカーのスコーカーとツイーターは画面の左右上方向に、センタースピーカーが画面の中央真下に設置すという理論が足り立つのです、つまり3つのスピーカーの逆三角形の中心が画面の中心と合っていなければならないのです。
この意味において、もっと重要なのがこの3つのスピーカーの音量が同じか若干センタースピーカーが高めである必要があるのです、つまりこの理論からセンタースピーカーはフロントスピーカーと同程度もしくは高めの音圧のスピーカーを使う必要があります。
こういった事情でセンタースピーカーの役割を考えるとセンタースピーカーが如何に重要かが解ります、たった1つの小さなスピーカーですがホームシアターでは極めて大きな意味を持つスピーカーなのです。
私はハイエンドからミドルクラスの沢山のセンタースピーカーを持っています、ホームシアター熱が最大の時では保有数が10本を超えていました。
その意味は、フロントスピーカーを入れ替えたときにそのスピーカーと音質や音圧が合うセンタースピーカーが不可欠だという事を経験上学んだからです。
その時々のフロントスピーカーによってセンタースピーカーとの相乗効果を最大にする為にどれほど苦労したか解りません、ホームシアターシステムを新たに組む際に最後まで決まらないのが常にセンタースピーカーなのです。
フロントスピーカーに対して音圧と音質が上でも下でもなく丁度良いものを合わせなくてはバランスが取れなくなるのです、多くのホームシアターファンはフロントスピーカーは上位機種にどんどん変えていってもセンタースピーカーは以前のものをそのまま使っている人が多いです。
これではボイスが飛び出してこないのでサラウンドも効果を発揮できません、センタースピーカーを変えただけで音場の迫力がガラッと変わるのです。

世界の三大オーディオ大国と言えばアメリカ・日本・イギリスです。
他にヨーロッパ各国にも存在していますが、この3ヶ国は歴史も古いし何せオーディオメーカーの数が半端ではありません。
現在生き残っている日本のオーディオメーカーには、オーディオメーカーを持たないアジアの国などから資本を受けるなど世界中から注目が集まっています。
日本人から見ればエントリークラスの製品でも、海外の評価では一流オーディオブランドの高級アンプの評価を受けます。
特に日本のオーディオ製品は、音質に加え壊れにくく錆びつきも少なく何十年も使えると大きな評価を受けて中古であっても高値で取引されているのです。
日本では数千円で取引されている過去のエントリークラスの製品でも、海外のネットオークションではびっくりするほどの高値で取引されるのは珍しいことではありません。
生まれながらにこんな素晴らしい環境が揃っている日本のオーディオ事情、オーディオマニアでなくても日本に生まれて良かったと思いませんか?
まあ、オーディオだけではなく自動車も他の家電も本当に日本製品は世界中で高く評価されています。
好きなように道楽を選べ、そして苦なくそれを実現できる、こんな国は本当に稀だと思うのです。
世界ブランドの優秀なオーディオ製品をポンと買える日本人、本当に幸せだと思うばかりです。

オーディオを道楽として愉しむ人は皆さん音質改善を工夫していろいろなことを行うようです、私も多分にもれず過去いろいろな事をやってきました。
自作フルレンジスピーカーの高音域が弱いといってツイーターとネットワークを買ってきて繋いでみたり、せっかくバイワイヤリング対応のアンプを買ったのだからといって音質特性の異なるスピーカーをダブルで鳴らしてみたりと、思いつくままにやってきました。
そんなことを繰り返しているうちにあることに気が付くのです、それは何もしない方が音質バランスが良いということです。
高音域が出ないスピーカーは、それなりのアンプと組み合わせて素直に鳴らした方が全体的なバランスが取れて聴き疲れしないのです。
悪いなりにも素のままの方が良いところも解ってくるのです、妙に変な事をしてしまうと本来の良さも見えなくなってくるのです。
音質改善のためのアクセサリー類の出費はけっこうな額となります、下手すれば新しい製品を何台も買えるほどにもなります。
それもそのはずで、同じユニットを使っているスピーカーシステムのユニットだけをバラで買うと倍近くになるのですから。
いろんなことをやってきて今更ながらに思うこと、それは完成された製品はそのまま使った方が音が綺麗だということです。
音の変化を愉しみたいならスピーカーに妙な改良を行うのではなく、スピーカーとアンプの組み合わせで行うべきかと思うのです。

ホームシアターと言えばサラウンドシステムですが、その基本は5.1Chであることは過日お話しした通りです。
5.1Chにフロントの上面(フロントハイ)にサラウンドを加える方式が「7.1Ch」で、ドルビーアトモスの誕生によって本格的になった方式です。
更に視聴位置の横上面(サラウンドサイドハイ)を加える方式が「9.1Ch」、更に後方サラウンドの上面(サラウンドハイ)を加える方式が「11.1Ch」、そして視聴位置の真後ろ(サラウンドバック)に2つのスピーカーを距離を置かずに加える方式が「13.1Ch」で現在最もチャンネル数の多いサラウンド方式となります。
さてサラウンドのチャンネル数が増えていくと何が変わってくるかということですが、7.1Ch以降は2次元から3次元に音場が広がってくるというのが解り易いでしょう、それを極めて行くと13.1Chにまで至ったということです。
ドルビーアトモスでの9.1Ch以上ともなると頭の真上に音が広がり、SF映画を立体音像の大迫力で愉しめるようになります。
ただ、これを実現させるにはかなりの部屋の広さと、ハイエンドAVアンプや高性能スピーカーなどそれなりの設備が必要になります。
逆に、6畳~10畳ほどの広さの部屋であれば後方のサラウンドスピーカーを1.5メートルほどの高さに上げてやると、フロントスピーカーの音が壁や天井に反射して、なんと5.1Chでも頭上から音がしてくる3次元音像が得られてしまうのです。
更には、7,1Chでフロントハイスピーカーかイネーブルドスピーカーを追加すればもう完璧です。
これが広い部屋で大きなスクリーンを使って行おうとすると反射による効果が期待できません、だから必然的に多チャンネルが必要になってくるのです。
一般的な家庭で本格的なホームシアターを愉しむのであれば5.1Chや7.1Chで充分です、否むしろ音の臨場感的には好ましいのです。
壁や天井反射によるハーモニック効果の方が、自然な3次元音場を得られやすいということ覚えておくとよいでしょう。
あくまでもホームシアターのサラウンド方式の基本は5.1Chです、まずは基本をクリアしてから更に高みを目指してほしいと思います。

オーディオの歴史の中で、どうしてこういう製品を作ったのだろうかという世に言う迷機と呼ばれるオーディオ製品が存在しています。
例えば、バブル景気直前に日本のオーディオ界を引っ張ってきた高級オーディオメーカーであるラックスマンが経営不振でカーオーディオ大手のアルパインの傘下に入ります。
この直後に、それまでの高級路線から普及版の製品を突然出したのです、これが世に言う迷機で何と真空管とトランジスタのハイブリッドアンプだったのです。
プリアンプの初段にFET、最終段に真空管、そしてパワーアンプにハイパワートランジスタを用いたのです。
しかも、それまでのシャンパンゴールドからブラックフェースになり、高級感を誇ったラックスマン独特のフェースデザインもあたかも安っぽいデザインになってしまいました。
価格も普及版の価格で、当時の798戦争を意識した価格帯で勝負してきたのです。
これにはマニアもビックリ仰天です、面白半分で買ったマニアもいたくらいです。
こんな迷機と言われたアンプですが、最近になって真空管とトランジスタのハイブリッドが音色的に評価され始めたのです。
音色的に評価され、その作られた意味が理解され始めると途端に迷機から名機と謳われるようになるのです。
新たな試みは何時の時代もなかなか受け入れられないものです、でも技術に誇りを持って作られた物であれば何れは評価されるようになるのです。
オーディオ界には、このような突然誕生してくる世に言う迷機が多数存在しているのです。