オーディオ道楽を封印した際に、メンテナンスもせずに10年間保管していたアンプ類を順次クリーニングも兼ねてメンテナンスしています。
今日は風もなく陽光降り注ぐさわやかな日なので、ベランダでサンスイのA-α7のメンテナンスを実施しました。
名門サンスイのアンプとは言えコンパクトサイズだとやはりメインとしては物足りなさ感がありますが、ダイニングや寝室でのサブシステムとしては充分に機能してくれます。
メンテナンスの様子

サンスイ A-α7の内部
巨大な電源トランスと電解コンデンサがサンスイの伝統

内部に溜まった埃をハケとエアダスターを使って丁寧に吹き飛ばし、アルコール綿棒でフィンや基板の隅々までクリーンアップします。
ケースの内側もアルコールで拭きます、意外と汚れています。
タバコを吸わない人の製品でも真っ黒な煤がフィンや基板に付いています、これは空気中に浮遊している炭素成分で主に自動車の排気ガスと工場排煙です。
このときは是非マスクをしましょう、埃を吸い込んでしまいますから。
その後、部品の劣化が無いかを点検し、怪しい部分があればメモっておきます。
スイッチ類の接点とコネクタ類をアルコールやベンジンで磨いて接点を復活させます、これによってガリを防止できます。
最後にアルコールでケースをクリーンアップして完了です。
特に問題なければ慣れたもので、ほんの1時間ほどで全工程が終わります。
メンテナンスもオーディオ道楽の一つ、自分の手でメンテナンスすると製品に愛着がわいてきます。
クリーアップ後のサンスイ A-α7
20年間のクスミも取れ、新品同様にピッカピカ!


私は音の表現で「音質」という表現と「音色(ねいろ)」という表現を使い分けているのですが、これには訳があるのです。
音質は低音域や高音域などの音の質そのものです、レンジが高低に伸びているか締まっていて切れが良いのかもたついているのかなどです。
対して音色というのは、例えば同じ音質でも広い部屋と狭い部屋での響き方が違うように微妙なニュアンスでの味付け的な要素を指しています。
細かい事をいうと余計に解りづらいのですが同じ周波数の音でも金属のお皿を叩いた時の音と焼き物のお皿を叩いた時の音はまるで違います、金属の方が叩いた瞬間からしばらく同じような音量を保ち少しずつ細かなビブラートを残しながら小さくなり消えていきます。
実は基本の周波数の他に複数の小さな周波数の音が出ており、これが合成されてビブラートが生まれているのです、焼き物の場合は叩いた瞬間だけは大きな音量ですが急速に音量が減少しビブラートはありません、つまりこういった微妙な違いを音色として表現して聴き分けているのです。
さて、このような音色の違いはアンプの増幅回路に使われている負帰還(NFB)回路によって生まれていると言っても過言ではありません、必ずしもそれだけではありませんが要素的には大きな位置を占めています。
負帰還(NFB)とは1937年にウェスタンエレクトリック社とAT&T(アメリカの電気通信局)が設立したベル研究所によって提唱され、1947年に発明者である技術者の名前を付けてウイリアムソン増幅回路として発表された方式です。
原理は増幅回路を通って増幅された電流を再度位相を逆にして増幅前の信号とミックスさせて再度増幅させるというもので、ノイズ成分はキャンセルされ信号成分だけが増幅される為に大幅にノイズを低減できるというものです。
ただしノイズは大幅に低減するのですが音のシャープさが落ち、切れの悪い音になることが知られています。
このNFBの負帰還量やどの帯域の周波数に絞ってNFBにかけるかなどが各社のよって異なり、メーカー別のアンプの音質や音色となって現れてくるのです。
ちなみにラックスマンのアンプの中には周波数帯を2つに分けてのデュアルNFB方式をとっているアンプがあります、このアンプの音色は独特でマニアの間では「風邪引き声」もしくは「鼻づまり声」と称されています。
これもまた好みの問題であり、温かみがあってマイルドで聴きやすいという人もいます、聴感覚も十人十色であるようにオーディオアンプの音色も十機十色だということです。

ホームシアターでのサラウンド方式ですがドルビーアトモス誕生以来チャンネル数は伸びる一方です、現存する最大チャンネル数は13.1Chとこれ以上無いというところまで行き着いています。
13Chと言えばAVアンプのパワーアンプ数も6つのステレオアンプに加えて1つのモノラルアンプとなり、スピーカーの端子だけでAVアンプのバックパネルが埋め尽くされ、配線するにも指が入る隙間が無いので横一列とするなど各種の工夫がなされています。
さて、チャンネル数は伸びる一方ですがチャンネル数が増えるとどんな効果が期待できるのでしょうか?
私は、効果以上に部屋を埋め尽くすスピーカーの数が気になってしまいます。
床にサブウーハー入れて9個、テレビの下に1個、天井に4つのスピーカーが設置される部屋は、広ければよいのですが一般的な都内のマンションでのリビングルームは広くても14畳程度だと思います。
この広さだと、部屋の壁や天井に反射した音によって意味のなさないチャンネルが生まれてきます。
つまり他のスピーカーの反射によって、本来のスピーカーから出てくる音が空間ハーモニック(音の合成)によってかき消されてしまうのです。
14畳程度であれば、7.1Chで充分に壁や天井の反射で3次元サラウンドが楽しめます。
10畳以下なら5.1Chでもフロントにトールボーイ型スピーカーを使い、サラウンドスピーカーを床と天井の真ん中よりも上に設置すれば充分に壁や天井反射によって3次元サラウンドと同じような効果が実現します。
広い部屋が用意できるならチャンネル数を増やす方がより3次元サラウンド効果を得やすいのですが、そうでない場合はむしろチャンネル数を増やすよりも反射音による効果を期待した方が良い場合が多いです。
ホームシアターを楽しむ場合、チャンネル数を追うのではなく部屋の広さに合わせてチャンネル数を決めるようにしたいものです。
また、狭い部屋に所狭しと置かれたスピーカーはビジュアル的にどうなのだろうかと思うのです。

ファンションなどと同様にオーディオにも年代による流行り廃りが存在しています、アンプはオーディオが一般的に普及しだした70年代のハイエンド機は全てがプリアンプとパワーアンプに分かれたセパレートアンプでした。
この頃には各社はチャンネルデバイダーというマルチアンプ方式を意識した機器も出していました、チャンネルデバイディングは2~4つに周波数を分けそれぞれにパワーアンプを繋げてそれぞれのスピーカーユニットに繋ぐ方式です。
80年代に入るとこれらのセパレートアンプで培った技術を統合した高級プリメインアンプが台頭しセパレートアンプは徐々に市場から消えていきます、スピーカーもネットワークによって2ウェイとか3ウェイに対応する方式が一般的になりマルチアンプ方式は廃っていきました。
80年代のハイエンド機はシルバーやシャンパンゴールドという豪華さを誇る色となり、ミドルクラスとエントリークラスはブラックフェースと色も分かれてきます。
90年代に入るとオーディオ氷河期が始まり横幅が3分の2サイズのミニコンポが主役になります、またブラックフェースはAVアンプに移りハイファイオーディオアンプはシャンパンゴールドに変わります。
スピーカーでは70年代は大型3ウェイが基本でしたが80年代に入るとコンパクトな中型2ウェイとの混在となります、90年代にはサイズは更に小さくなり小型2ウェイブックシェルフが台頭してきます。
80年代後半からはホームシアターが全盛期に入り、トールボーイ型が大量に市場に投入されてきて2000年以降は大型ブックシェルフは市場から一時期姿を消してしまいます。
このようなオーディオの流行り廃り、こういった流れを解っていると次世代の主力はどのようになるのかが解ってきます。
そして「時代は繰り返す」、アナログの復活でアンプもプリアンプとパワーアンプに分かれたセパレートアンプがどんどん出てきています、オーディオもファッションと同様に流行り廃りがあるようです。
おそらく、これは補修ではなく破壊だろう?
取り合えずデノンのトールボーイスピーカーSC-T777SAの剥がれかかった突板(化粧板)と傷の修理を行いました。
トランクルームで10年以上も乾燥保管していたせいかPP製の突板が経年経過で縮んでしまっています、張り直しても隙間が空いてしまうという判断となり、それならばと乱暴にもすべて剥がしてしまって後でオイルステインで塗装しようと考えたのです。
何故なら自然に剥がれてきてみすぼらしくなる前に、潔く剥いでしまった方がその後の憂いがなく気持ちが良いわけです。
一見は綺麗に見えるが、フロントバッフルと天板の突板が浮き上がっている。

ご覧の通り。

そこで、全部剥がしてしまいます。
先ずは、突板の上からはめ込んでいるゴム製のダボ受けを全部抜き取ります。

ダボ受けで何とか止まっていたようです、ダボ受けを取ったら簡単に剥がれ落ちます。

鬼門はこのバスレフダクト、突板の上からはめ込んでいます。
ここは力任せに2つに割いてから横に引っ張って取りました。

すべて綺麗に突板が剥がれました。
茶とベージュのヨーロッパ調ツートーンとなり意外と悪くない。
時間が有る時にオイルステインで塗装を施すことにしましょう。

この後、アルコールとベンジンで糊跡を綺麗にしてダボ受けをはめ込んで一旦は完了です。
ところで、デノンのSC-T777SAはP.P.D.D.方式と銘打った2つのウーハー構成をしています。
アンプのBTL接続のように、上は音を押し出し下は音を引き込みます、この作用によって極めてパワフルで切れ味の良い低音再生を可能にしています。

さて、次に今回のチェックで底面の傷も発見しましたのでこれもついでに補修します。
先ずは突板の剥がれを樹脂系ボンドで綺麗に張り合わせして凸凹を平らにします、これは金属製の板などを静かに押し付ければ傷つけずに行えます。
ナットが埋め込んであるのは直置き用のスパイクを取りつける為、ミドルクラス以上のトールボーイにはスパイクを取り付けられるようにしてあるのが一般的。
スパイクを取りつけると床から浮き上がり、ピンポイントで接地するため低音域のもたつきが解消します。
底板の充て傷とスパイク用のナット。

次に塗装します。
スプレーで直接やるのはNG、セロファン紙にスプレーして塗料を綿棒でこすりつけるようにして何度も厚く塗ります。

そして補修はこれで完了です!
写真で見ると補修跡が解りますが、実際に設置すると底面ということもあり、ほとんど傷は解りません。
