
ホームシアターと言えばサラウンド、サラウンドと言えばドルビーサラウンドですがドルビーサラウンドとはいったいどんな代物なのでしょうか?
ドルビーサラウンドシステムは、1977年に公開された映画「スターウォーズ」で使われた効果音システムを家庭でそのまま楽しめるようにと考えられたシステムで、ドルビーラボラトリーズによって1981年に技術的仕様が公開されました。
そのドルビーサラウンドは、その後ドルビーサラウンドプロセッサーとして外付けでの装置が誕生しましたが、それをいち早くアンプに取り入れたのがデノンのAVアンプでした。
デノンは世界で初めてドルビーラボラトリーズから認定を受けたメーカーなのです、その後ドルビーサラウンドはセンターチャンネルを追加しての本格的システムとして1989年に「ドルビープロロジック」が公開されました。
ここから本格的なホームシアターブームが到来したと言っても過言ではありません、そして1995年にはデジタルディスクリート化を施したドルビーデジタル及びDTSが、更に2007年にはロスレス音声を採用したHDオーディオに発展していきます。
そして現在最も新しい方式が2014年に公開されたドルビーアトモスで、これまでのようなマイナーチェンジではなくサラウンドの大革命ともいうべき仕様なのです。
これまではチャンネル単位での音作りであり基本はステレオだったわけです、それが一転してチャンネルベースからのサラウンドではなく、オブジェクトベースによるサラウンド方式へと別次元のサラウンド方式に変更されたのです。
つまり、ドルビーアトモスで記録されたDVDやブルーレイを本格的に楽しむにはドルビーアトモス対応のAVアンプが必要になるのです。
尚、ここでもデノンが先行してAVアンプに取り入れ、視聴会では「5.1.4Ch」方式と説明されていましたが、その後「9.1Ch」と表記されるようになりました。
尚、ドルビーアトモス方式から3Dサラウンドという立体音像が家庭でも容易に体験できるようになりました。
このようにサラウンド方式がどんどん変化して行きますので、その意味でAVアンプとDVDやブルーレイプレーヤーは定期的に買い替える必要があるのです。
つまり、AVアンプとDVDやブルーレイプレーヤーには記念品的な価値は生まれても継続的な実用価値は生まれないのです。
もし、現在中古で買うのであれば2015年以降のドルビーアトモス対応ということになりますが、当時の中古を買うなら現在の新品の方が仕様が更に上で価格は新品なので高いのですがコストパフォーマンス的には現在の方が高いと言えます。
したがってAVアンプの中古は常に二束三文で取引されるのです、ここがオーディオのビンテージアンプやレコードプレーヤーと最も異なるポイントです。

1990年代前半に起きたバブル経済の崩壊に伴いスピーカー598戦争&アンプ798戦争が終焉を迎えます、そしてオーディオ界に氷河期とも言えるお寒い時代が訪れます。
この氷河期では、多くのオーディオメーカーはモバイルオーディオやパーソナル使用を目的とした安価で手軽な家電オーディオ製品を出すようになり、本格的なアナログに力を入れた魅力的な正統派オーディオ製品が徐々に姿を消していきました。
その後サンスイが経営破綻を起こし、更にダイヤトーンの事業撤退などが続き、正統派オーディオ製品の空白時代に突入します。
スピーカーユニットでもコーラルの破綻やテクニクスの事業撤退が相次ぎ、スピーカーユニットメーカーはフォステクスだけとなりました、これに伴ってDIY(手作り)スピーカーブームも同様に一気に終焉していきました。
強いブランドが姿を消すとそれまでのライバル企業が台頭してくるのではないのです、業界全体が縮小するのです、これはどの業界でも同じでライバル同士が競合するところに魅力的な製品が生まれ市場が活性化するのです。
「競争こそ美学」、これは資本主義経済の根本原則なのです、そしてオーディオ氷河期時代に多くのオーディオマニアは行き場を失いました。
私もオーディオショップに行かなくなり休みの日は家でのんびりジャズやアメリカのSFテレビドラマを楽しむようになりました、オーディオショップは閑古鳥が鳴き多くのオーディオショップが閉店に追い込まれたのもこの頃です。
家電量販店ではオーディオコーナーが姿を消し代わりにイヤホンやモバイルオーディオのコーナーが新設されました、オーディオらしき展示品はミニコンポ程度です、本当にオーディオと共に歩んできた一人として悲しい気持ちになったものです。
そして2007年暮れ、私の事業家人生にも大きな転換期が訪れオーディオとホームシアター道楽を封印したのです、おそらくオーディオ界が80年代後半のような状況であれば私の事業家人生の転換期は起こらなかったのかもしれません。
闘志を燃やす対象が無くなると人間は精神的に弱くなるのです、闘争本能が消えた戦士は強い者に飲みこまれるしかないのです、2007年暮れのクリスマスの夜は事業家人生で初めて味わう大手企業の傘下に入るという苦すぎる辛酸、その裏にオーディオ氷河期が少なからず関係していたように思えます。
2018年の秋約11年のオーディオとホームシアター道楽封印からの復活、その裏に私も事業家に復帰を決めて本格的に動き出した時期と一致しています、たかが道楽、されど道楽、いろんな意味で人生の状況をそのまま現しているのかもしれません。

大学生から社会人になりたての頃まで、休みの日と言えばオーディオジャンクを秋葉原で購入しては深夜までいろいろ実験しては遊んだものです。
スピーカーのジャンクでは、コーン(振動版)の質を変えたり重さを変えたりして、その音質の変化を大いに学びました。
コーンに消しゴムを少しずつ張り付けていき、どの程度の重さでどのような音質になるのかという実験は特に興味深い結果が出ました。
重くすると低音域が伸びてくるのですが、反比例してレスポンスが悪く切れ味が低下してきます。
また、コーンをエポキシ樹脂で固めてプラスチックのように固くすると高域が張り出してくるのですが、低音域がまったく出なくなります。
スピーカーメーカーは、こういった理論が確立されていて理想とする重さや硬さを材質を変えたりして目的の音を追求しているのです。
また、重い場合は低音が出るのですがレスポンスが悪くなる、これを解消するためにマグネットを強力にする必要があります、スピーカーユニットはこんな素材と物理の複雑な理論によって作られているのです。
また、アンプのジャンクでは最初は自身で修理してみることから入ります、壊れた部品や問題個所を見つけては他のジャンクから同様の部品を取ってきて取り替えます、そんなことを繰り返して音が正常に出たときには本当に嬉しいものです。
更には、入力コネクタにラジオを繋いだり、スピーカー端子にランプを繋いで光らせるなどあらゆるアイデアが出てきてとにかくいろいろやってみたのです。
そのうちにどんどん回路や部品に詳しくなってきて、正常動作するアンプの音質改良なんてこともできるようになります。
最も音質が変わるのがNFBと呼ばれるネガティブフィードバック回路の変更です、また電源周りのコンデンサの容量を増やすと低音域が伸びて締まってきます。
雑誌や改良技術書と睨めっこしての各種の実験、自身でやってみると本当によく解ります、これが生きた学びというものです。
孔子論語に云う「一つ学んだら、一つやってみる」ということでしょう。
経験はどんな知識よりも価値が高いのです、本を読んだだけで自転車に乗れないのと同じです。
道楽もビジネスも、そして人生の全てに生きた経験が重要です。

ホームシアターを手軽に楽しむための中心的な存在がAVアンプです、AVアンプとはAudio Visual Amplifierの略で直訳すると音と映像のアンプとなります。
簡単に言うと映像入出力/音声入出力の切り替え・サラウンドシステム・音声調整&増幅を合わせたアンプで、家庭でDVDやブルーレイディスクなどをソースとして映画館のような音声と映像を1台で楽しむための装置です。
ミドルクラス以上のAVアンプのバックパネルには一面に所狭しと入出力コネクタが配置されており、各種の音声入出力機器や映像入出力機器を接続して相互に入出力を自在に接続できるようになっています。
また、最近ではワイドFMチューナーが付きインターネットにも接続可能で、ブルートゥースでスマートフォンやモバイルAV機器との接続もできるというAVアンプも誕生しています。
ちなみにワイドFM(AM放送をFMで聴くことができる)チューナー付きは「AVレシーバー」、インターネットやブルートゥースが接続できるものを「AVステーション」などと呼ばれることがありますが、いずれにしても基本はAVアンプです。
AVアンプには、サラウンドのチャンネル数によってそのAVアンプがどこまでのサラウンドに対応しているかを示すようになっています。
例えば、サラウンドの基本である「5.1Ch(チャンネル)」とは、フロントLR(左右)・センター(モノラル)・サラウンドLR(左右)+サブウーハー構成となっています。
ここで、「5.1Ch」の最初の「5」がサラウンドのチャンネル数で「.1」がサブウーハーのチャンネル数を表しています。
センターとサブウーハーの出力コネクタが2つ付いているAVアンプは「6.2Ch」となり、実際にAVパワーアンプなどでは存在しています。
これは、モノラルアンプを2セット入れるよりもステレオアンプを2セット入れる方が部品や回路が他のチャンネルと共有化でき総合的に安価になるからです。
では、1つのステレオアンプのLチャンネルをセンターに、Rチャンネルをサブウーハーにすればよいということになります。
最近のAVアンプはICなどを使うのでそのようにしていますが、AVパワーアンプはトランジスタなどによるディスクリート回路で作られており、サブウーハーにはハイカットフィルターを入れる必要性から単純な発想だけでは音質作りも含めて解決しない場合もあるのです。
フロントチャンネルは、AVアンプでステレオ再生(2Ch)をするときなどはハイファイオーディオと同様となるため、ある程度の音質のスピーカーを使うのが一般的です。
90年代以降ではトールボーイ型がフロントスピーカーに使われますが、トールボーイ型である必要もないわけで、ハイファイオーディオ用の大型フロア型でも音質が期待でき全然OKです。
形にこだわるのではなく、あくまでもスピーカーは音質で決めるべきかと思うのです。
トールボーイ型となったのは、フロントには通常大型液晶テレビやプロジェクターのスクリーンが設置されるので、スピーカーの設置面積をできるだけ抑える目的なのです。

過日の新型コロナウイルスパンデミックによりテレワークやソーシャルディスタンスなどの新たな社会構造の変化が次々と飛び出しました、そんな状況はオーディオ界にも大きな影響を及ぼしました、それはオーディオの中古市場が過去最高値というくらいにまで高騰したことです。
その変化を感じたのがCDやDVDなどのオーディオやホームシアターのソースの中古価格が上昇したことによります、更にこの10年ほどの間に発売された割と新しいオーディオ関連製品の中古市場が軒並み高騰しました。
人の心理とは実に解り易いです、外出を控え家に籠ってすることは音楽や映画などの鑑賞というわけです、こういった状況下においては賢い人は購入を控えます、そして世の中の流れを読みつつ沈静化を待って購入のタイミングを見定めるのです。
ただし逆にこういった買い手市場の際にはこれまで探しても出てこなかったレア物が多数出てきます、更に賢い人はこういう時期を逃さず買える時に価格に無関係に確実に確保するのです。
どんな時代でも世の中の動きに合わせるのか、それとも独自の感性に従って他者と逆の流れに乗るのか、その結果は数年後には雲泥の差となります。
私は常に自身の感性に従って動きます、そしてその結果も潔く受け入れる覚悟でいます、どんなことも世の流れに翻弄されるのか自身の感性で動くのか、この判断と行動は非情にもその後の運命を決定する程の結果を齎します。