
オーディオ道楽とはオーディオだけに限らず多くの知識が自然に身につくものです、中でも身につけておくとオーディオ人生の楽しみが倍増するのが各種のインターフェースとオーディオ機器の電気的な知識です。
それ故にオーディオとはある意味では電気工学と音響工学そのものであり、道楽というよりも学問の学びと同じような性格のものだと思います。
特に各種ソースの媒体による信号の性格、アンプやプレーヤー類の接続に関わるインターフェース、音そのものの性格による音響工学、この知識が更に良い音を作り出すために必要になってきます。
これらの結果において最終的に音になるわけですが、音そのものは空気振動であり耳にどのように入ってくるかなどまでノウハウが必要になることもあるのです。
さて、このような知識とノウハウが貯まってくると自分の思うようにオーディオ機器を繋ぎ好みの音を作っていくことが可能になります。
例えばCDプレーヤーとアンプの間にノイズリダクションと音質向上の目的でラインアンプを入れるとか、パワーアンプだけでCDを聴くとか、不要な機器を外したり必要な機器を加えたりと自由自在に音を作り愉しむことができるようになります。
基本的に信号の種類と電気的特性が同じであればどのような機器でも接続することが可能であり、場合によってはホームオーディオ用の機器とPA用の機器も各種の変換ケーブルを駆使すれば混在させることができます。
これは先ほど説明したようにコネクタの違いこそあっても、信号の種類と電気的特性が同じなのでコネクタの変換だけを行えばよいわけです。
また85年以前のアンプには「CD」入力端子がありません、でも「AUX」に繋げば問題なく接続できます、こういった知識が更にオーディオの愉しみを味わい深いものにしていくわけです。
時間をかけて、そして実体験を通して各種の知識とノウハウを身につけて大いにオーディオを愉しんでほしいと思います。

何故私はオーディオにハマってしまったのでしょう、その理由を改めて考えてみると基本的に電化製品全てが好きなんだということに辿りつきました。
私は子供の頃から電化製品が好きで、大学時代からは理由も無く本能的に新しい電化製品が出るとつい買ってしまうのです。
大学時代は、アルコールランプ式のサイフォンでコーヒーを飲むのが大流行して私も多分にもれずサイフォンを購入して使っていました。
そんな時、電気式のコーヒードリッパーを家電量販店で見つけてその場で購入してしまいました。
当時は自由な時間にモノを言わせて家電量販店に行くのが大好きで、時代の先端を行く電化製品を見つけると高額でもつい買ってしまっていました。
出始めの頃の電子レンジは30万円近くしてローンで購入、友達は当時の大卒初任給の5倍もする製品を買う私を変人扱いしていました。
社会人になってからも、空気清浄機・加湿器・ロボット掃除機などは製品が出たとたんに購入するのは当たり前として、1回使って納得して放置された調理器具は山のようにありました。
電気グリル・卓上鉄板焼き機・電気鍋・卓上IH・電気てんぷら揚げ器・電気たこ焼き器・ホットサンド製造器・フードプロセッサー・ミキサー・ジューサー・ハンドミキサー・ミル・・・、一度も使ってない物も多数あります。
もし、オーディオが電気式じゃなかったらこんなにもハマっていただろうか?
中学時代から電子工作が大好きでラジオや調光機などを自作しては楽しんでおり、そんな延長線上にオーディオがあったような気もします。
ハマっているものとは必ずその根底に意味も理由も有るのです、好きなものを紐解いていくと見えなかった自分の中に在る思考が見えてくることがあります。
道楽を通して自分と向き合う、時には必要なことなのだと思うのです。

美味しい料理を食べると元気になります、私の場合は音も料理とまったく同じ反応になるのです。
オーディオ道楽復活での音出し試験を兼ねた音質の組み合わせチェックにおいて、これが面白いように身体反応に出るので自分でも笑ってしまいます。
高級なハイエンド名機と謳われたアンプでも、本当に聴くジャンルと合わせるスピーカーによっては最悪な音色を奏でることがあります。
こういうときにはあまりのショックで意気消沈し顔色が一気に変わり、しばらく音出しをやめて別の事を始めてしまうほどに元気をもぎ取られてしまいます。
逆に思った通りの愉音が得られたときには身体も軽くなり、ニヤニヤしながらジャンルをどんどん変えて何時間も聴きこんでしまいます。
優秀なスピーカーはアンプを選ばないと言われていますが、逆に優秀なスピーカーほどアンプの個性をそのまま表現する代物はありません。
その意味では優秀なスピーカーにはアンプとの相性は無いと思いますが、アンプの音色は自分の好みを知らないとせっかく買ったのに最悪の結末を齎します。
最近のアンプでは「大外れ」ということはあまりなく、バランスが取れたナチュラルで良い子の音色ですが、70年代や80年代のアンプは本当に千差万別の癖者ぞろいです。
マニアでなければビンテージアンプを今更あえて使うことはないと思いますが、自身の好みの音色を探るためにこういったビンテージアンプの音質確認も極めて重要で音決めの参考になるのです。
その製品そのものよりもメーカー別の年代による音色の傾向とその組み合わせによる結果が気になるのです、最新の小型ブックシェルと70年代のアンプを組み合わせた音色が最も好みの音色だったなどということが普通に起こりえるのです。
誰が最初に言ったのか、「オーディオはオカルト」という名言(迷言)があるくらいです。
美味しく料理を作るには、それぞれの食材の味を知って合わせる調味料を選んで量を加減します。
食材と調味料のそれぞれの味が解って初めて合わせた時の最終的な味が合わせてみなくてもイメージできるのです、オーディオの音質チェックはこれとまったく同じなのです。
先ずはそれぞれの音質と音色を確認、そして組み合わせての確認、これを通して肌感覚で解るようになると、合わせるまでもなくイメージだけで最適な組み合わせが解ってくるのです。
「音も味と同じ、オーディオ道楽とは音を料理すること」、私の昔からの自論です。

電化製品は独特の臭いを発することで知られています、特に通電中は熱を発するので敏感な人はその周囲に行くだけで臭いを嗅ぎわけることができます。
この電化製品の独特な臭いは、通電によって温まることにより使われている部品の材料や接着剤、また加熱した際のシャーシや冷却フィンなどの金属の発する臭いが混ざり合って独特の臭いの元となります。
さてオーディオと加齢臭という話ですが、本当にアンプは年を追うごとに臭いが変わってくるのです、使っていても使っていなくても20年程すると独特の加齢臭を発するようになります。
殆どしない製品もあるのですが、メーカーによってはかなり強烈な臭いを発する製品もあります。
機械の加齢臭ですから人間のものとは異質ですが、何とも言えない臭いで私はどちらかというと苦手な臭いです。
埃が燃えたような臭いがする製品があり、最初は中に溜まった埃が発熱によって発していると思って分解してみたのですが埃は殆どなく別の原因だと解りました。
このアンプの加齢臭の原因は電源トランスに在りました、他の電化製品には大型の電源トランスはほぼ使うことはないのでこの臭いはしませんが、アンプは電源トランスが重要でどの機種にも使われています。
この電源トランスの錆止めや絶縁対策に使われている樹脂製のワックスが、経年経過と共に劣化してきて先の独特な臭いを発するようになります。
メーカーや製造国によって若干違うのですが、私の経験上アメリカ製のトランスが最も強烈な臭いで次に日本製です、ヨーロッパ製は経年経過で臭いが変わることはあまりないようです。
アメリカ製のものはアメリカの雑誌などによく使われているインクの臭いと同じように鼻にツンとくる臭いで、どちらかというと化学薬品的な臭いです。
対して日本製のものはムフッとくる腐敗した有機物の臭いに近いです、有機物っていろいろありますが枯れた木やどぶ川のような臭いです。
最後に日本のオーディオメーカーに一言、「音質を極めるだけではなく、後々の臭いのことも少しは気にしてくれると嬉しい!」。

ここ数年来、世の中に「紙コップスピーカー」というものを自分なりにアレンジして製作することが流行っているようです。
この紙コップスピーカーとは、スマホの下に付いているスピーカーから出る音を大きくしかも良い音になるように工夫する物で、無電源ということもあり多くの人が自分のアイデアで製作してはネットに公開しています。
この紙コップスピーカーですが、メガホンの原理で集音され紙コップ内で音が共鳴するので、音が大きくしかも共鳴によってある特定の周波数が強調され良い音に聞こえるという確かな音の原理を上手く利用したものです。
最初は紙コップだったのがポテトチップスの筒やサランラップの筒と大きなカップ2つを繋いだもの等、なるほどスピーカーのバスレフやダブルバスレフ、またバックロードホーンに見るような音の共鳴を上手く引き出すアイデアと音響技術的な根拠に驚くばかりです。
そして、最近では音響工学のプロ達も興味を示し、プロらしいアイデアで製作を行い展示会まで行っています。
また、こういったアイデアを商品化するメーカーまで現れました。
勿論、商品ですから紙ではなく木材・陶器・金属といった形が崩れにくく高級な素材が使われています。
しかし、本当に良く考えたものです。
スマホが誕生した頃に流行った、空のグラスにスマホを突っ込むと音が大きくなるという都市伝説的な話しがありましたが、これは本当に大きく良い音になります。
これが、工夫されてカッコよく加工された物が「紙コップスピーカー」なのだと思います。
私は、これも一つのオーディオだと思うのです。
何故なら、昔の蓄音機は電気を使わずゼンマイで動いていました。
ロウ板に刻まれた音の溝をピックアップで拾い、振動板で音にしてラッパのような形の共鳴管で大きくしかも良い音にしていたわけです。
紙コップスピーカーは、まったくこの原理と同じなのです。
こういったおもちゃのような物を通して、音の特性や音が空気の振動で起こるという音の本質を意識するようになれば良いことだと思います。
こういったおもちゃで遊んでいる若者の中から、近い将来ボーズ博士のような空間音響の天才が生まれることを望むばかりです。