
70年代から90年代にかけての日本のオーディオメーカーの増幅回路設計にかける意気込みは、本当に「もの作り大国日本」に象徴されるように凄いの一言です。
マニアの間ではサンスイの「ダイヤモンドXバランス増幅回路」(AU-Dシリーズ)や「α-Xバランス増幅回路」(AU-αシリーズ)などは神話になるほど有名ですが、その他のメーカーも独自のここまでやるかという傑作品を数多く輩出しています。
例えば今では忘れ去られようとしているNECのA-10(1983年発売、10万円)やA-11(1983年発売、15万円)は、当時の多数のオーディオアンプの中に在って傑作中の傑作且つ名機中の名機といえます。
NEC(日本電気)といえば、日本が世界に誇る総合エレクトロニクスメーカで、放送機器や通信機器などの技術者を結集してオーディオアンプの開発を推進したのです。
何度も何度も途中経過でのベータ版での公開視聴会を開き、製品誕生までに気の遠くなるような努力を続けました。
また部品などを詳細に査定すればA-10で20万円以上しても全然おかしくないスペックであり、恐ろしいほどの高級な電源を誇ったアンプでした。
電源回路だけで4つのトランスを使って完全なる左右独立の直流を生み出し、アンプ部が故障しても電源機器(安定化直流電源)として考えれば10万円ならむしろ安いとまで言われたアンプの最高傑作品でした。
また、ケンウッドのハイエンドプリメインアンプのL-01A(1979年発売、27万円)、L-02A(1982年発売、55万円)はノイズを徹底的に落とすために電源部を別筐体として、更にアンプ本体は磁力を発する磁性体を全て排除し部品全てに非鉄を使うなどノイズ特性に拘りに拘った傑作品です。
ケンウッドの祖業は通信機であり通信機で培った技術をオーディオに存分に生かしました、そしてこれらの技術はアキュフェーズという最高級ハイエンドオーディオブランドに繋がるのです。
他にも、サンスイ・ソニー・オンキョー・ヤマハなどに隠れてそれほど話題にはならなかったのですが、80年代のデノンもデジタル時代を先取りした傑作アンプを多数創出しています。
本当に、70年代後半から90年代の初頭までの20年間の日本のアンプは世界に誇る名機のオンパレードだったのです、これらの名機は近年になり世界中で再ウォンツが生まれ中古品が高値で取引されています。
日本のオーディオ黄金時代、毎年新しい方式が幾つも生まれ多くの名機が乱立した異常極まる輝かしい時代でした。
そんなバラ色のオーディオ黄金時代をオンタイムでしかも名機に囲まれて過ごせたこと、これは私のオーディオ道楽の原点にある誇りだと思います。
何時までも当時のオーディオ誌を読んでは興奮していた思い出が頭から離れません、闘志にも似た気持ちがビジネスにも前向きな発想になり、その結果において全てに有益に機能していたことは確かです。
そして事業家に復活してからのオーディオ道楽の復活、当時と同じような極めて前向きな気持ちになっているのを自覚しています。

70年代中盤から80年代中盤にかけて、オーディオ界にDCアンプなるものが存在していました。
当時の高級ハイエンドセパレートアンプや、ミドルクラス以上のプリメインアンプに採用されていたDC増幅回路とは、0Hzつまり直流から増幅できるという恐ろしいアンプでした。
ちなみに、DCとは直流の事で交流はACと言います。
音は当然空気の振動ですから、音楽音源も通常20Hz~20Khzほどの周波数帯域の交流なわけです。
しかし、自然界にはあらゆる周波数帯域の音が存在しています、ただ人間の耳には聞こえないだけです。
例えば波や風の音には5Hz以下の重低音まで含まれています、和太鼓なども単一周波数ではなく10Hz以上の各種の周波数帯域の音の合成によって人間の耳に和太鼓の音として聴こえるのです。
つまり、人間の耳には認識できなくても自然界に存在する音をそのままに再現しようとすると可聴域以外の低い周波数と高い周波数を増幅できるアンプが重要になります。
そこで誕生したのが究極のDCアンプだったわけです。
セパレートアンプではトリオのパワーアンプL-05M、プリメインアンプではサンスイのAU-DシリーズなどがDCアンプの代表格です。
他にも、70年代のヤマハのアンプA-5などはエントリークラスでもDCアンプです。
更に凄いのは周波数レンジの幅です、通常はA級ハイエンドアンプでも20Hz~100KHzですが、サンスイのDCアンプは0Hz~300KHz、トリオの場合は0Hz~600KHzもあり、高域特性も極めて高いのです。
このDCアンプの投入で、サンスイはプリメインアンプのシェア40%以上と一気にアンプ界の頂点に上り詰めたのです。
しかしレコードの再生などで、レコードに傷が有る場合など重低音域の電流がスピーカーに流れコイルを破損する事があります。
そこで、レコード再生時は10Hz以下の音をカットするサブソニックフィルターを付けるという工夫までされているのです。
CDの場合は、音源そのものに20Hz以下は入っていませんのでフィルターオフでも何らの問題もありません。
これらのDCアンプと38Cm口径以上のウーハーで聴く重低音は、もう音ではなく風圧を身体に感じるほどです。
大音量で聴くと、バスドラの重低音でテーブルの上のグラスなどがカタカタと揺れる事もあります。
本物の重低音、一度聴いたら確実に虜になります、こうしてハイファイオーディオの道にずっぽりとハマっていくのです。

デジタルオーディオ全盛期の現在、世の中にはユニバーサルプレーヤーなるものが存在しています。
このユニバーサルプレーヤーとは、現存する全ての映像と音楽の方式とファイルを再生できるという優れモノです。
DVD・ブルーレイ・CD・SACDは当然として、自身でPCを使って録画や録音したものまで再生することができます。
また、USBやブルートゥースにも対応しており、PCやスマートフォンからダイレクトに映像や音楽ファイルを再生することができるのです。
またPCが無くても、インターネットでPCのようにネット上のファイルを再生する事もできるオールマイティなプレーヤーです。
私はオーディオとホームシアターの共有メインシステムにはパイオニアのブルーレイ・ユニバーサルプレーヤーを使っています、1台でDVDからブルーレイやCDの再生とそれぞれのプレーヤーを繋ぐ必要がなく実にスマートにシステムを組むことができスペース的にも配線的にも重宝しています。
また、画質も4K対応で昔の1K映像も疑似4Kに自動でリアルタイムにエンハンスして出力するという機能まで装備しているのです。
画質は綺麗で音質もそこそこです、それなりのDACも積んでいるのでしょう、音質の評価でも外付けDACと大きな遜色はありません。
ハイファイオーディオと違ってホームシアターは割り切りが一番かもしれません、音質を極めるよりも愉しむことを重要視するのが長続きする方法だと思います。

どんな物事にも流動的に変化を繰り返す時期と、逆に一切の動きが止まる安定した時期が存在します。
企業においても然りで人材が常に入れ換わりを見せる時期もあれば、長期間同じ人材で物事が勢いよく進む時期とがあります。
安定期は物事が進み出すので、人材は安定期でも経営的には増収増益で活性化します。
オーディオもシステムというくらいで企業と同じように製品が次々と入れ換わる時期もあれば、音質のバランスが一旦取れてしまうとこれをいじりたくない時期があります。
これは本当に面白いものでそれぞれの製品の特性がピタッと合うことがあります、この安定した音質は何かを変えると異和感が出てくるようになります、だからしばらく変更する気にもならないのです。
そして、こういったシステムが安定した時にはシステムを考えずによくなるので音楽鑑賞に集中できるようになり、今度は予算をシステムからソースに切り替わるのでソースの数が増えていくのです、これも企業とオーディオのバランス感覚は同じです。
システムが動く時には本来の活動が止まり、システムが安定した時には本来の活動が活性化する、実に面白いバランスです。
オーディオやホームシアター道楽もこういった流動的な時期と安定した時期が繰り返しでやってきます、オーディオ道楽復活から5年ほどの流動期を得て、ようやく安定期に移行しかかっています。
流動的な時期はお金がかかるし、常に変化させているので各種に神経をとがらせては落ち着きません、それでも一旦安定するとそんな時期を思い出しては懐かしむのです。
私にとってのオーディオと経営は何か各種のポイントで相関性があるのです、そして道楽とビジネスとの摩訶不思議な一致、それは道楽が流動的ならビジネスも流動的になるということです、逆に道楽が安定すればビジネスも安定するのです。
陰陽思想でいう「陰極まれば陽極まる」という陰陽法則が当てはまるのです、いろいろなファンダメンタルズを学び道楽やビジネスに活かす、何事も上手く納める人とは道楽にも手を抜かないのです。

日々コレクションアンプやスピーカーの動作確認を兼ねた音質確認を行っているのですが、ここで面白い結果が表れてきて驚いています。
その面白い結果とは、90年代のハイコンポの音質が極めて優れているということです。
シャーシサイズに合わせて定格出力を下げ、高性能ながらも軽いトロイダルトランスを使用するなど各オーディオメーカーは安価ながらも音質を向上させた製品を大挙投入しました。
事実として、同年代の同メーカーの3倍以上もするミドルクラスのアンプよりも軽快な愉音がするハイコンポが多いのです。
設置も移動も軽量なので楽ですし、ダイニングや寝室で使うサブシステムに選んだ候補の多くがハイコンポだったのは必然でした。
低出力とはいえ、70年代のプリメインアンプ以上の出力でパワー不足はまったく感じません、むしろボリュームつまみが9時の位置でも大きすぎると感じるほどです。
オーディオ道楽黄金期は、サンスイの重量級アンプにダイヤトーンの大型ブックシェルフがメインだったので、小型ブックシェルフやハイコンポ類は確認のための投資という感じでろくに聴き比べもせずストックしてしまっていたのでしょう。
今考えるとなんてもったいないことをしていたのかと後悔しきりです、現在こういったハイコンポたちを存分に使ってあげようと各種の計画を練っています。
ハイコンポは音質が良く消費電力が少ないのも魅力で、高性能なプリアンプとチャンネルデバイダーを使ったマルチアンプシステムのパワーアンプとかAVアンプのプリアウトに繋いで音質改善とか利用方法は幾らでもアイデアが出てきます。
それが可能となるのはこういったハイコンポの多くがプリ部とパワー部を分けて使用できるというスペックになっているからです、これも驚きの機能なのです、80年代までは高級プリメインアンプにしか採用されていなかったスペックなのですから。
こういうスペックを見ても、パワーアンプ部の音質に自信があるという根拠を見つけることができます。
90年代のハイコンポ、何か急に親近感を覚えてしまいました。