
ホームシアターのソースはDVDやブルーレイだけではなく、VOD(ビデオ・オン・デマンド)やPC動画、またテレビ放送そのものとバリエーションが数多く存在しています。
映画のDVDやブルーレイの多くはサラウンドに対応した音作りがされていますが、ドラマやVODの多くはステレオもしくは昔のものはモノラルというのも存在しています。
ソースそのものがサラウンドに対応していない場合にAVアンプを使う意味があるのかというと疑問が起きます、サラウンド以外のソースを入力した場合のAVアンプの音質は同クラスのプリメインアンプに比べて荒くて無意味に派手になりナチュラルではありません。
そこで音質向上だけを考えるのであれば、AVアンプよりもハイファイオーディオ用のプリメインアンプを並行して使うという手があります。
つまりソースによってAVアンプを経由して音声を出力するのか、プリメインアンプを経由して音声を出力するのかを振り分けるのです。
一見すると複雑な配線が必要なように思えますが、実際にやって見るとそうでもありません。
HDMIインターフェースでDVD/ブルーレイプレーヤーを接続している場合は全ての映像と音声は一旦テレビに収束されていますのでテレビから音声だけを光デジタルなどで取り出してプリメインアンプ経由で音声出力すれば後者の方法を実現できます。
プリメインアンプに光デジタル入力が無ければ外付けのDACを繋ぐ事で解決します、この場合はDVD/ブルーレイプレーヤーやHDDレコーダーの音声だけは両アンプに振り分けられても映像はテレビに集約されるように配線方法を考える必要があります。
私は映像と音声の信号経路を分けて考えることで簡単な配線を導き出していますが、手持ちの機種に合わせた方法を取る必要がありますので、それぞれが手持ちのAVアンプやプレーヤー類の入出力コネクタを見比べて思考する必要があります。
とにかく目的達成にはいろいろやってみて工夫すれば何とかなるものです、接続方法の独自のアイデア出し、これもホームシアターの愉しみの一つでもあるのです。

先日、「往年のブランド」の記事を書こうと思いブランドを書き出してみると、日本の世界的ブランドがあっという間に20を越えました。
しかし今これらの半数のブランドは現在製品を出していません、70年代から90年代前半の日本のオーディオメーカーは本当に世界を席巻していました。
スピーカー部門では圧倒的なパワーでダイヤトーンとヤマハの快進撃が凄かったです、世界中の放送局や音響現場のモニタースピーカーに採用され世界中のマニアを虜にしてしまったのです。
またアンプではマッキントッシュやマークレビンソンという世界ブランドにラックスマンとアキュフェーズが果敢に挑み、世界の一大高級ブランドを確立しました。
普及クラスではサンスイ・トリオ(ケンウッド)・パイオニアに加えて、ソニー・テクニクス・オンキョー・ビクター・デノンとこの時代に世界ブランドを確立した日本のオーディオメーカーは数しれません。
ところがバブル経済が崩壊し日本のこういったメーカーの多くが経営危機に陥り倒産や事業撤退が相次ぎました、オーディオ界にいうスピーカー598戦争やアンプ798戦争の成れの果てでした。
いまだによく覚えていますが、90年代後半にはオーディオショップには閑古鳥が鳴き誰もいない状況で当然オーディオメーカーも本格的なオーディオ商品を出すこともありません。
世はミニコンポとAVアンプの時代へと移行していったのです、オーディオショップから大手家電量販店に客が流れていきました。
この間に世界中でニューブランドが次々に誕生しました、特に中国メーカーの台頭が凄まじかったです。
10年後の2005年ごろから、急速に事業提携や資本提携により生き残った日本のオーディオメーカーも息を吹き返しつつありますが快進撃と言うほどではありません、特に現在ではスピーカー部門で魅力的な製品を出しているのはオンキョーくらいです。
日本メーカーが強かった時代が懐かしいです、当時は全ての方式基準が日本発だったのですから、でも時代は第二次日本オーディオブームの兆しが確実に見え始めています、往年のオーディオブランドの復活を強く望むのは私だけではないでしょう。

自身のオーディオコレクションを記録管理する目的で年代別に価格と共にリストアップしているのですが、ここで面白い事実が見えてきました。
それは、70年代から80年代のアンプではサンスイが圧倒的に数が多いということです、またスピーカーではダイヤトーンです。
そして、90年以降になるとデノンやオンキョーの製品群が数を増やしていきます、どの年代にもリストに乗っているブランドがヤマハ・ソニー・ケンウッド(トリオ)でした。
これって、オーディオの歴史とオーディオメーカーの黄金時代そのものを素直に反映しているということが解ったのです。
つまり、私も素直にオーディオの時代における変化をそのままに受け入れていることということです。
時代が変わっても頑なに一環として自身の考えを通す人もいれば、私のように時代の変化に順応して自身を変えていく人もいるのです。
どちらにしても、どっちつかずの中途半端に時代に翻弄される人よりも良いかと思うのです。
それにしても、見事なまでに時代を反映しているコレクションデータに流石の私も驚きました。
今回の手持ち製品の発売時期や価格を改めて調べ直していくうちにいろいろなことが解ってきました、コレクションとはただ集めるだけではなく歴史やその周辺の状況などを学べます、これがコレクションギークの一つの愉しみなのです。

AVアンプと複数のスピーカーを使用して本格的なホームシアターを愉しみたいけど、とてもそんな予算もスペースも無いという場合に有効な手段があります。
それはサウンドバーという存在です、各社から売り出されているサウンドバーとは基本は横長のスピーカー(本体)1本ですがサブウーハーとのセットで売られているものもあります。
このサウンドバーの本体をテレビの前に、サブウーハーとセットの場合はサブウーハーをテレビの脇に設置するだけでホームシアターのようなサラウンドが実現します、アンプ内蔵のホームシアター版サラウンドアクティブスピーカーと考えれば解り易いでしょう。
ただサウンドバーという製品はいろいろな方式があるのでしっかり仕様を確認してから購入する必要があります、単なるテレビ音声の高音質化を図るものも存在しているし、疑似的なドルビーサラウンドを体験できるものまであります。
ドルビーサラウンドに対応しているものは、1本の横長スピーカーの中にフロントLR・センター・サラウンドLR用のスピーカーが配置されています。
サラウンドスピーカーユニットは斜め上面や斜め横面を向いており、天井や壁反射によって疑似サラウンドを行うように考えられています。
本格的なサラウンドを実現させたいと思うなら、最低でも5~6万円以上のサラウンド対応のサウンドバーならある程度の効果を期待できます。
10万円以上するものは、細長いスピーカーに小さなユニットがびっしりと埋め込まれており音質もそこそこ耐えられるものです、特にサブウーハーとのセットの場合はかなり音質が向上し長時間聞いていても疲れません。
音質だけをとればテレビだけで映画を観賞する場合に比べればかなりの効果が期待できます、ただしバラエティやニュース番組などではテレビの音声とほとんど変わりません。
手軽にホームシアターを経験してみたいという人にはお薦めの製品かもしれません、またベッドルームで高音質でテレビや映画を愉しみたいというニーズには手軽で良いかもしれません。
ただし、AVアンプと複数のスピーカーを使ったサラウンドシステムとは次元が異なる効果しか期待できないという事だけはお伝えしておきます。
サウンドバーのような使い方でもBOSEのテレビ用アクティブスピーカーはテレビの下に平べったい箱を敷くタイプで、エンクロージャの容積を稼ぎテレビの音質を向上させるものでありサウンドバーとは異なる目的の製品です。
しかしテレビの音質がガラッと良くなり、それなりの音質で映画やライブを愉しむことが可能です。
補足ですが、BOSEの家庭向け製品の多くは独特の籠った感じの低音域でパンチのある音色は期待できないものです、人によって好みがはっきり別れる音色だということだけはお伝えしておきます。

オーディオ黎明期の60年代~70年代には真空管アンプで、70年代後半以降のトランジスタ時代になっても常に高級ハイエンド製品で日本のオーディオ界を牽引してきたラックスマン、2000年以降も真空管アンプの復活や話題性に満ちた製品を出し続けています。
そんなラックスマンの栄誉ある道のりの途中には屈辱的な試練の時代も在ったのです、独占的な60年代とは打って変わり60年代後半からオーディオブームに乗って大手家電メーカーは勿論のこと、それまで無線機や電気部品を作っていたメーカーがこぞってオーディオ業界になだれこんできます。
70年代中盤にはラックスマンの牙城であった高級ハイエンド製品を各社が揃って出してきます、特に70年中盤に起きた各社一斉に投入したプリアンプとパワーアンプでのセパレートアンプ戦争はオーディオマニアは狂喜乱舞でしたがメーカー各社は戦国時代の真っ只中です。
そんな70年代の戦国時代を制したのが、後にオーディオ御三家と呼ばれるサンスイ・トリオ・パイオニアでした。
この御三家の快進撃の裏で経営的に窮地に立ったのがラックスマンでした、70年代最後の年に対抗策として赤字覚悟でのL-400などのライバル会社と同額程度のリーズナブルなアンプを出すも更に経営を圧迫することになります。
そのラックスマンを救ったのが当時カーオーディオ界で栄華を誇っていたアルパインです、1981年に名門ラックスマンはカーオーディオキングのアルパインの経営傘下に入ります。
しばらくは低価格ながらもラックスマンらしい製品を作り続けるのですが、1985年にアンプ798戦争が勃発するや、なんと高級ハイエンドで地位を固めていたはずのラックスマンはALPINE/LUXMAN(アルパインラックスマン)のブランドで製品を出すのです。
その製品とはラックスマンの冠には相応しくないブラックフェースで、プリアンプがFET、パワーアンプの初段が真空管、パワーアンプの終段がMOS-FETという何とも中途半端なハイブリッドアンプを創出し798戦争に参戦したのです。
この時の製品がLV-105とLV-103という製品で、しばらく続作も出しますがイマイチぱっとしない製品で終わってしまいます。
並行してLV-102という中段に真空管を使わずFETのみのシンプル設計のプリメインアンプも出しており音的には私はこちらの方を高く評価しています、また真空管を中途半端に使うよりも故障も少なくて音質的にも解っている人はこちらを選んで買ったことでしょう。
結局90年代に入り本来のラックスマンの姿に戻りますが、この85年からの5年間はラックスマンの長い歴史にあってもっとも屈辱的な時代ではないかと思うのです。
いまだにLV-105とLV-103は「名機じゃなく迷機」と言われています、ちなみにマニアが注目しなかったLV-102はコストパフォーマンスが極めて高くラックスマンらしい音質を伝承した隠れた逸品です。
しかし面白いもので迷機の数々はラックスマンの屈辱的遺産としてマニアの間で後に静かなブームを生みます、今もなお中古をオーバーホールしては高値で取引されているのです。