
世界の三大オーディオ大国と言えばアメリカ・日本・イギリスです。
他にヨーロッパ各国にも存在していますが、この3ヶ国は歴史も古いし何せオーディオメーカーの数が半端ではありません。
現在生き残っている日本のオーディオメーカーには、オーディオメーカーを持たないアジアの国などから資本を受けるなど世界中から注目が集まっています。
日本人から見ればエントリークラスの製品でも、海外の評価では一流オーディオブランドの高級アンプの評価を受けます。
特に日本のオーディオ製品は、音質に加え壊れにくく錆びつきも少なく何十年も使えると大きな評価を受けて中古であっても高値で取引されているのです。
日本では数千円で取引されている過去のエントリークラスの製品でも、海外のネットオークションではびっくりするほどの高値で取引されるのは珍しいことではありません。
生まれながらにこんな素晴らしい環境が揃っている日本のオーディオ事情、オーディオマニアでなくても日本に生まれて良かったと思いませんか?
まあ、オーディオだけではなく自動車も他の家電も本当に日本製品は世界中で高く評価されています。
好きなように道楽を選べ、そして苦なくそれを実現できる、こんな国は本当に稀だと思うのです。
世界ブランドの優秀なオーディオ製品をポンと買える日本人、本当に幸せだと思うばかりです。

オーディオを道楽として愉しむ人は皆さん音質改善を工夫していろいろなことを行うようです、私も多分にもれず過去いろいろな事をやってきました。
自作フルレンジスピーカーの高音域が弱いといってツイーターとネットワークを買ってきて繋いでみたり、せっかくバイワイヤリング対応のアンプを買ったのだからといって音質特性の異なるスピーカーをダブルで鳴らしてみたりと、思いつくままにやってきました。
そんなことを繰り返しているうちにあることに気が付くのです、それは何もしない方が音質バランスが良いということです。
高音域が出ないスピーカーは、それなりのアンプと組み合わせて素直に鳴らした方が全体的なバランスが取れて聴き疲れしないのです。
悪いなりにも素のままの方が良いところも解ってくるのです、妙に変な事をしてしまうと本来の良さも見えなくなってくるのです。
音質改善のためのアクセサリー類の出費はけっこうな額となります、下手すれば新しい製品を何台も買えるほどにもなります。
それもそのはずで、同じユニットを使っているスピーカーシステムのユニットだけをバラで買うと倍近くになるのですから。
いろんなことをやってきて今更ながらに思うこと、それは完成された製品はそのまま使った方が音が綺麗だということです。
音の変化を愉しみたいならスピーカーに妙な改良を行うのではなく、スピーカーとアンプの組み合わせで行うべきかと思うのです。

ホームシアターと言えばサラウンドシステムですが、その基本は5.1Chであることは過日お話しした通りです。
5.1Chにフロントの上面(フロントハイ)にサラウンドを加える方式が「7.1Ch」で、ドルビーアトモスの誕生によって本格的になった方式です。
更に視聴位置の横上面(サラウンドサイドハイ)を加える方式が「9.1Ch」、更に後方サラウンドの上面(サラウンドハイ)を加える方式が「11.1Ch」、そして視聴位置の真後ろ(サラウンドバック)に2つのスピーカーを距離を置かずに加える方式が「13.1Ch」で現在最もチャンネル数の多いサラウンド方式となります。
さてサラウンドのチャンネル数が増えていくと何が変わってくるかということですが、7.1Ch以降は2次元から3次元に音場が広がってくるというのが解り易いでしょう、それを極めて行くと13.1Chにまで至ったということです。
ドルビーアトモスでの9.1Ch以上ともなると頭の真上に音が広がり、SF映画を立体音像の大迫力で愉しめるようになります。
ただ、これを実現させるにはかなりの部屋の広さと、ハイエンドAVアンプや高性能スピーカーなどそれなりの設備が必要になります。
逆に、6畳~10畳ほどの広さの部屋であれば後方のサラウンドスピーカーを1.5メートルほどの高さに上げてやると、フロントスピーカーの音が壁や天井に反射して、なんと5.1Chでも頭上から音がしてくる3次元音像が得られてしまうのです。
更には、7,1Chでフロントハイスピーカーかイネーブルドスピーカーを追加すればもう完璧です。
これが広い部屋で大きなスクリーンを使って行おうとすると反射による効果が期待できません、だから必然的に多チャンネルが必要になってくるのです。
一般的な家庭で本格的なホームシアターを愉しむのであれば5.1Chや7.1Chで充分です、否むしろ音の臨場感的には好ましいのです。
壁や天井反射によるハーモニック効果の方が、自然な3次元音場を得られやすいということ覚えておくとよいでしょう。
あくまでもホームシアターのサラウンド方式の基本は5.1Chです、まずは基本をクリアしてから更に高みを目指してほしいと思います。

オーディオの歴史の中で、どうしてこういう製品を作ったのだろうかという世に言う迷機と呼ばれるオーディオ製品が存在しています。
例えば、バブル景気直前に日本のオーディオ界を引っ張ってきた高級オーディオメーカーであるラックスマンが経営不振でカーオーディオ大手のアルパインの傘下に入ります。
この直後に、それまでの高級路線から普及版の製品を突然出したのです、これが世に言う迷機で何と真空管とトランジスタのハイブリッドアンプだったのです。
プリアンプの初段にFET、最終段に真空管、そしてパワーアンプにハイパワートランジスタを用いたのです。
しかも、それまでのシャンパンゴールドからブラックフェースになり、高級感を誇ったラックスマン独特のフェースデザインもあたかも安っぽいデザインになってしまいました。
価格も普及版の価格で、当時の798戦争を意識した価格帯で勝負してきたのです。
これにはマニアもビックリ仰天です、面白半分で買ったマニアもいたくらいです。
こんな迷機と言われたアンプですが、最近になって真空管とトランジスタのハイブリッドが音色的に評価され始めたのです。
音色的に評価され、その作られた意味が理解され始めると途端に迷機から名機と謳われるようになるのです。
新たな試みは何時の時代もなかなか受け入れられないものです、でも技術に誇りを持って作られた物であれば何れは評価されるようになるのです。
オーディオ界には、このような突然誕生してくる世に言う迷機が多数存在しているのです。

私は大学時代のフォステクスのバックロードホーンの大型スピーカーキットのDIYに始まり、ラックスマンの真空管パワーアンプなど多くの市販キットでのDIYオーディオを愉しんできました。
また、真空管を使ったプリアンプやパワーICを使ったパワーアンプのオリジナルアンプもDIYで作ってきました、回路はオリジナルではなくオーディオ雑誌の回路をそのまま流用したものですが、オーディオの核心技術に触れられたことは大きな喜びでした。
そんな経験を持つ私と同年代の人達が、自身の音に対する拘りを具体化させるためにオーディオ関連の会社を立ち上げてしまう人が近年多数存在しています。
70年代中盤に日本で起こったオーディオブーム、その頃学生だったオーディオマニアは大学生時代という4年間に余す時間をオーディオに使い、思考そのものがオーディオを原点とするようになったのでしょう。
そんな人達の作ったオーディオ工房の数々、数年間は誰からも支持されずにきっと大赤字なのです、でも夢を実現させたことは人生において素晴らしいことだと思うのです。
「やって後悔するのは、やらずに後悔するより1万倍の価値が有る」
本当にこの歳になるとよく解るのです、「人生、全てが生きている間だけ」ということが。
そして、何もせずして終わる人とやりたい事全部やる人が綺麗に分かれるのです。
やる人は、どんな事でもやりたい事を次々とやってしまうのです。
もう一つ、全部やってしまう人に付いていく人もまたやってしまう人と同じ感覚の人です、やらない人はやる人についていくこともしません。
みんな自分で何かをやりたいのです、でも理由を付けてやらないのです、だからやっている人に敗北感を感じるからついて行かないのです、特に男性にはこの傾向が強く出ます。
人生観はこのくらいにして、自身でどんな物でもいいのです、キットではなく素材や部品だけを買ってきてゼロから作る事を一度でも経験すると解ります。
自分で作ったものって悪いなりにも、完成した瞬間は最高の喜びがあるのです。
オーディオでいえば、オリジナルな自分の理想とする音を作る喜び、これってきっと経験していない人には一生解らないのです、どんなに理解しようにも理解を越えたところに在る他者の喜びは家族であっても解るはずもないのです。
そんな喜びを知って45年が経とうとしています、忘れかけていた記憶が蘇ったのは何か意味が在ると思うのが私です。
強い思いは確実に実現する、今から何やらワクワクが止まらないのです、そして日々具体化するロジカルシンキングの数々、もう誰にも止めることなどできないのかもしれません。