
スピーカーユニットで、特にウーハーやフルレンジはしばらく使っていると自然に本来のユニットの持つ音質に変わってくると言われています。
これを、熟成させるという人もいますが正しくはエージングと言います。
靴は履き慣らして捨てる前が一番しっくりと足にマッチするように、スピーカーもエッジが劣化してきて破れる直前が一番良い音がするのかもしれません。
ただ、私的には硬く締まった音が好みですから、エッジが柔らかすぎるユニットは敬遠する傾向があります。
私の経験の中で、エージングによって最も音が変化したのは12Cm口径のフォステクスのスピーカーユニットFF-125です。
買ったばかりの頃は、中音域と高音域がうるさく感じて長く聴くことが出なかったのですが、数日鳴らし込んでみると低音域も伸びてきて全体的にバランスが取れて聴きやすい音に変化してきたのです。
正直、他のスピーカーで鳴らし込んで音が劇的に変化したという経験はほとんどありません。
ただ、数年間使ってなかったスピーカーを久しぶりに聞くと、ちょっと音が変わった気がするのは確かです。
これを、しばらく鳴らしているとまた元の音に近付いてきます。
スピーカー自体はパワーをかけて鳴らしていると熱を発します、この熱によってコイル近くのダンパー等が柔らかくなることが考えられます。
まあ、効果の程は解らないのですがエージングを日本語では「枯化(こか)」と言います、つまり枯らしているわけです。
音が良くなると言われて、音楽を聴かないのに数日間鳴らし込むというのはどうなのかとも思います。
もしかして、マニアの言葉を鵜呑みにしてスピーカーの寿命を縮めているだけなのかもしれません。

ホームシアターの道楽を行うにあたり、意外な落とし穴が総消費電力です。
普通のオーディオでの使い方では全く問題ないのですが、マルチアンプシステムなどハイレベルなオーディオになるとパワーアンプを3台使います。
100W程度の出力で消費電力は200W程度、ハイエンドのパワーアンプなどは3~400Wとなります。
これが3台に他の電力が加わるので相当な消費電力となります。
また、多チャンネルのAVアンプですと、ミドルクラスで4~500W、ハイエンドになると600W以上にもなります。
一般家庭では電力線を幾つかのブロックに分けて、それぞれの定格電流が15A(アンペア)ですから、使用可能最大電力は1500Wになっています。
同じ部屋や近くの部屋の別々のコンセントから電力を供給しても、同じブロックだと15A以上でブレーカーが落ちます。
プレーヤー類の使用中の電力シャットダウンは故障の原因になりますし、精神安定上好ましくありません、その為に電気工事までしてもらうオーディオマニアも少なくありません。
システムを構築しようと思う前に、総消費電力を入念に調べて計算しておくことが重要になります。
私は最大でも1000W以下になるように設計しますが、これだと同じ部屋でホームシアターを愉しんでいる時に赤外線ストーブなどを使うことができません。
突然のブレーカーが落ちるのを気にせず楽しむなら、一般家庭ではせいぜい700Wを目標にするのが望ましいでしょう。
ホームシアターのAVアンプは意外に消費電力が多いので注意です、7.1ChのミドルクラスのAVアンプと50インチ程度の液晶テレビだけで6~700Wはすぐに達してしまいます。
ただし、上記の消費電力は最大での話しで、A級アンプでない限り普通の音量で愉しむ分にはそれほど電力は食いません。
でも、やはり世の中何が起こるか解りません、電力計算は最大消費電力で計算しておくのが宜しいようです。

オーディオを通して生きたビジネス戦略を学ぶなどという人はほぼいないと思います、私はオーディオから多くのビジネス戦略をリアルタイムで学び、25歳で個人事業主での独立起業や28歳での法人設立しての企業経営に大いに活かしました。
ITで製品化を夢見ての独立&起業も大学時代に読んだオーディオ史を作ってきた多くの天才創業者伝記を読んでいたからに他なりません、更にはそういった創業者が執ったその時代の戦略は勝者と敗者に綺麗に分かれ、本当に多くをオーディオを通してリアルタイムに学び自身でも実践してきました。
特に85年のスピーカー598戦争やアンプ798戦争での各社の戦略、またその後に起きたデジタル大変革での戦略、更にはオーディオ氷河期での戦略、面白いように各社が繰り広げたユニークな戦略戦術が存在しています。
そして一時的に敗者になっても天の時を待ち次代の勝者となるなど、まさに生きたビジネス戦略の多くがオーディオ史に残っています、私のオーディオ道楽黄金時代は私のビジネス黄金時代とぴったり重なっています。
独立や起業、またその後の経営にこういったオーディオ各社から学んだことが大いに活かされたことは否めません。
一時的に王の座を奪っても新たな変化の時代に翻弄され、自流を通せなかった戦略なき企業はあっという間に衰退し崩壊していくのです。
オーディオとは私にとっては単なる道楽ごとです、しかしオーディオ業界の各メーカーは常に死活をかけたサバイバルを繰り返して今に至っています。
道楽というオフの次元で見るビジネスというオンの次元の熱き戦い、自分なりに冷静に他社の経営戦略をリアルタイムに垣間見れたことは極めて大きな生きた学びでした。
そういう意味で「私にとってオーディオは単なる道楽ではなく必然の道楽」、と思えてしまうのです、「オーディオに係る費用はビジネス戦略を学ぶ代金」、何故ならオーディオ各社の戦略戦術は見事なまでにその時代の音に現れているからです。
伝記を読んだだけでは実際の信念は読み解くことはできません、その時代の製品を実際に買って音を聴けばオーディオ各社がどんな戦略を以って未来を見ているのかが解るのです。
学ぶ人はどんな事からもどんな人からも学びます、そして確実に実践を重ねて自分流を編み出していきます、学ばない人は何度教えても頷くだけで何時まで経っても変わるわけでもなく行動の一つも起こさない、つまり何一つ学ばずルーティング人生で終わるのです。
子曰く「一つを学んだら、一つをやってみる」、知識は経験する事で知恵となり、重ねればノウハウとなり徳となるのです、孔子論語で最初に登場する教えが「学びの姿勢」です。
最初の学びが出来ない人に、その後に続く学びの本質を理解できないのは当たり前なのかもしれません。

数あるオーディオメーカーの中にあって、BOSEほどオーディオマニアから酷評を食らっているスピーカーメーカーはありません。
酷評の多くは、業務用の小型スピーカーをベタ置きして鳴らしてみての評価などです。
解っている人はこういった使い方もしないし酷評を上げることはしません、業務用と解っていてその有益な使い方を探る方の道を選びます。
ちなみに、BOSEの小型スピーカーを狭い部屋のラックにベタ置きしてニアリスニングで聴くと聴くに堪えない音色がします、特に何ともいえない低音域の響きが気になり音楽鑑賞になりません、更に高音域がほとんど出てこないのです。
ところが、同じフルレンジ一発の小型スピーカーを20畳ほどの部屋の天井の隅に設置すると豹変します。
あれほど気になっていたブーミーな低音の意味が解ります、低音域は大きな部屋だと部屋全体に響かなくなります、つまりあの独特な低音はこういった使い方を研究して作られた味付けなのです。
大きな部屋での空間ハーモニック効果によって出ていなかった高音域も綺麗に聴こえてきます、ボリュームを上げるとまるで大型スピーカーでも鳴らしているのではないかと思えるほどのぐいぐいと迫るパワーを感じます。
本来101や201などの小型スピーカーは天井の角に設置し、3方の壁の反射で空間ハーモニックス効果によって聴かすスピーカーです、そもそもBOSEスピーカーは直接聴くスピーカーではなく間接的なハーモニック音を聴かせる為の設計をしているのです。
こういった意味では、喫茶店やカラオケスナックなどでは天井吊り下げ型のBOSEスピーカーを使うのが当たり前で、どこでも快音で鳴っているのはよくご存じかと思います。
ちなみにハーモニック効果とは絶大で、他のメーカーのスピーカーだとハウリング(マイクを使うと「ピー」となる音)を起こすような狭い部屋でもBOSEだと起きないのです。
普通は酷評を食らうと慌てて「正しい使い方」的な情報をサイトに上げたりするものですが、BOSEは昔からこういったことを一切せずに大人の対応をしています。
ある意味では、宣伝も何もしなくても施工業者は音質的なトラブルが無く依頼主から文句の一つも出ないBOSEスピーカーを次々に購入しては設置しています、その意味ではプロの評価は最高レベルだと思います。
価格も昔は高額でしたが、価格変動が無いので今ではリーズナブルな価格帯でしかも競合だったダイヤトーンも事業閉鎖したこともあり、マイペースに事業推進しているのでしょう。
ときどきパーソナル使用やホーム使用でのスピーカーを出しますが、大きな宣伝もしませんし勝手に売れていくのを待っているという余裕が見られます。
王者の余裕は往年のJBLやアルテックを思い起こします、やはり王者は強い、その強さに支えられた余裕は更に企業を成長させていくようです。

2010年以降のマランツのAVアンプが凄いです、最新のミドルクラスは7.1Chの本格的な仕様でありながらコンパクトな薄型です。
型式名は「NR1601」に始まり、毎年マイナーチューニングを施され「NR1609」のあとは「NR-1710」と型式が変化していきます。
AVアンプは高級になればなるほどコネクタ類の数が多くなり、放熱効果も考えどんどん大型化するのが常識でした。
その傾向に逆行するかのような薄型AVアンプは、発売当初は価格の割に小型という印象も加わりオーディオファンの評価が低かったのも確かです。
その評価が5世代目辺りから一転してきます、そしてデノン・ヤマハなどのライバルを一気に抜き去り堂々の販売数1位を獲得します。
更に、生産が間に合わなかった半年間だけ2位に転じますが、その後はずっと1位の座を堅持しているのです。
また定格出力を抑え高音質化を目指した設計は、2Chステレオでの利用者数が25%とAVアンプの平均の10%以下に対して大きく差を広げています。
事実、AVアンプをピュアオーディオのメインシステムアンプに使うという人も多いのです、常に愉しむのはCD音源の2Chであり、同じシステムで時々DVDで5.1Chや7.1Chサラウンドを愉しみたいというニーズに合わせてAVアンプも高音質化してきています、その先駆けを作ったAVアンプとも言えます。
また型式の「NR」はネットワークレシーバーを意味していて、インターネットから高音質のハイレゾ音源をダウンロードしての再生や、ブルートゥースでモバイルオーディオと接続してのネットワークステーションとしての利用者も多いようです。
マランツは現在デノンと合わせて2大ブランドを持つエムアンドディホールディングスのオーディオブランドとなっており、ハイエンドからエントリークラスのAVアンプのデノンと上手く住み分けしています。
この薄型AVアンプ革命でホームシアター製品で優位に立ったマランツですが、現在オーディオのマランツに加えてホームシアターのマランツの名を欲しいままにしています。