2024年7月27日 07:00
服とか靴とかを「ついで買い」した事はないでしょうか?
お目当てのもの以外をついでに買ってしまうということは、私の場合は極めて多いのです。
DVDを買いに行ってはCDもついでに買ってしまうし、オーディオ製品もそんなことは多々あります。
このオンキョーR-803(1993年発売、4.5万円)もその一台だったのです。
オンキョー R-803
当時出始めのユニバーサルプレーヤーをショップに買いに行ったときのことです、店頭に「処分特価!」と銘うってダンボールを縦積みされていたのを見て、何の考えも無しに買ってしまったのです。
ところが、このR-803はとんでもない傑作アンプだったのです。
全てが後から調べて解ったことなのですが、何とヨーロッパのオーディオファンが飛びつくように買い求め、30万台を越える空前の大ヒットを飛ばしたアンプだったのです。
その理由は、アンプ部は70年代からミドルクラスで名を馳せていたインテグラシリーズの回路をそのままに定格出力だけを40Wにダウンサイジングしたという代物で、当時流行りのICではなく本格的なディスクリート(トランジスタやダイオードなどの単一部品で構成したもの)アンプです。
更には、高性能なデジタルFMチューナーをドッキングさせています。
つまり、高性能なFMレシーバーという製品であり、ヨーロッパで売れるのは当たり前の製品だったのです。
レシーバーと言えば今ではCDレシーバーやネットワークレシーバーですが、この時代はFMがまだ貴重な音楽ソースの時代でもあったのです。
本機が安価に出来た理由は、これまでの資産をそのまま流用し新たな開発コストなどを抑えられた事によるものと考えられます。
日本で当時は1家に1台のホームオーディオ時代から1人に1台のパーソナルオーディオ時代への移行期です、エントリー製品として時代を先取りした戦略的製品だったのかもしれません。
90年代に入ると、ケンウッドはA-1001を引っ提げていち早くミニサイズのハイコンポに生き残りをかけ、ヤマハはAX-590などフルサイズに拘りハイスペックアンプを低価格で出す戦略を打ち出します。
そんな中、まだ方向性を決められないオンキョーが様子見で出したという市場調査的製品だったのかもしれません。(あくまでも憶測です)
それにしても、オーディオ新時代になんともレトロでノスタルジックなデザインです。
70年台ならまだしも、この時代にこのクラスのアンプで燻銀(いぶしぎん)カラーは逆に古さ(オヤジ臭さ)を感じてしまいます。
せめて、明るいホワイトシルバーとかシャンパンゴールドならもう少し見栄えが良くなり若者受けしたと思うのです。
FMチューナー部は高性能なデジタルチューニング方式を採用しており、40局ずつ6つのジャンルに分けて都合240局をプリセット可能でボタンひとつで選局できます。
肝心の音質はというと、オンキョーらしさを何とか出してはいるもののちょっと何か物足りないと感じる音質です。
それにしても、NFB(ネガティブフィードバック)のかけ過ぎなのか70年代の某メーカーのアンプのようにFM放送の女性キャスターの声が誰のを聞いても風邪引き声になるのが凄く気になります。
ダブルネガティブフィードバックのラックスマンのアンプでさえ、ここまで鼻つまみ声にはなりません。
SN比などの静的スペックなど捨てて実質的な音質を追求して欲しかったと思います、だってエントリークラスでもオンキョーなのだから。
ただ世の中不思議なもので、こういったボイスの音色が「聴き安く優しい声で好き」、という人もいるので、やはりオーディオの音質は好みの問題が大きいと思います。
3~4万円前後の同時期に発売されたA-905XやA-909Xなどのミニコンポの方が私的には好きな音質です。
そもそも、オンキョーのアンプは中音域の響きが最大の魅力でサンスイの音質とは対立するような音質なのですが、ある意味では合わせるスピーカーを間違えなければボーカルなどをリアルに表現して心地良い音質なのです。
オンキョーの最大の売りの中音域がイマイチだと、上手く鳴らし込むためのインテグラのノウハウが一切使えません。
あと、全体的な作りは安っぽくてスイッチ類の隙間から中が透けて見えるのです、更に各ツマミやスイッチの感触もイマイチです。
バックパネルも薄いトタンのような鉄板で錆やすいのも気になります、90年代アンプなのだからアルミを使ってほしい。
まあ、鉄板を使うのは防磁対策とか共通アースの取り易さなどメリットが有るからこそ使うのだとは思うのですが。
いろいろと酷評を書いてしまいましたが、逆にこういうアンプはある意味ではBOSEのスピーカーのように闘志に火が灯ります。
全欧で30万台の大ヒットを飛ばすほどの名アンプです、何か上手く鳴らす方法があるのではないかと思ってやまないのです。(DALIやKEFなどのヨーロピアンスピーカーと相性が良いとか?)
それと、多くの製品を処分した時も残しておこうと思ったということは何か大きな意味が在るのです。
私の場合、今は気付かないだけかもしれないけど結果的に後に大きな意味を持つことが多いので後々何かで使うのでしょう。
美容室や工場などではFMを流しているところが多いのです、その意味ではいまだに多くの大型FMラジオが生産され売れています。
そんな手軽なFMラジオよりも本機をメインにしたシステムを組めばその音色に驚くでしょう、まだまだ利用価値は高いカテゴリ製品だと思います。
※ピュアオーディオ&ピュアホームシアター製品の評価記事はこちらのブログを参照下さい。