2024年7月29日 07:00
1986年初頭に日本のオーディオ界に激震が走ります、世にいうアンプ798戦争の勃発です。
きっかけは、サンスイが高性能プリメインアンプのAU-α607を¥79,800で発売したことに起因します。
これに追従するかのように1986年以降は、ソニー・オンキョー・ケンウッド・ヤマハなど多くのオーディオメーカーが798でこれでもかとハイスペックな製品を投入してきます。
特にソニーは物量勝負をしかけます、大型トランスやコンデンサで電源を強化し非金属の1枚形成強化シャーシを使い、資金力にものを言わせての重量級製品を投入しました。
そんな中でマランツのとった戦略が実に素晴らしいのです、物量勝負ではなく他社製品と比べてもまったく劣らぬ高性能なアンプを80%程度の低価格で価格戦略を繰り出したのです。
その先兵がPM-80(1989年発売、6.5万円)で、なんとA級とAB級をスイッチで切り替えられるということもあってかクラシックファンからジャズやロックファンまで広く受け入れられ、あっという間にシェアを奪いました。
このPM-80は多くのファンを取り込んで空前の大ヒット&大ロングセラーを続けました、ただシェアを奪われたのはサンスイではなくソニーやオンキョーなど対サンスイ連合艦隊だったという皮肉な結果を生みます。
更にサンスイは1990年に入って798を脱し機能を強化し価格を1~2万円ほど上げてきました、これに対抗するかのように他社も同様に価格を徐々に上げてきます。
しかし、ここでもマランツは再度PM-80a(1994年発売、7.5万円)を投入し再度価格戦略で勝負をしかけます、これもまたズバリ的中しPM-80と同様の結果を齎します。
デノンのデジタル移行化戦略、マランツの価格戦略、こういったオンリーワン戦略を繰り広げたメーカーがオーディオ氷河期を自助努力で乗り越えられたことはあまり知られていません。
現在この両ブランドは資本提携によって共存共栄する一つの経営母体となりました、唯我独尊という経営戦略指向で意気投合するのは当然なのかも知れません。
道楽性の強いオーディオ製品もメーカーの経営にはシビアな経営戦略がものを言うのは当然のことです、こういったオーディオ史を学ぶと経営戦略という生きた学びも同時に得られるのです、私も事業推進や経営戦略策定に大いに参考にしたものです。