経営コンサルタントをしていた頃、当社の支援で法人化したクライアントさんからバッシングにより売り上げが大幅に減少して困っているという相談がありました。
バッシングされているのは例の匿名で投稿できるBBS、確かにそのクライアントの個人名やビジネススキームの名称で検索するとトップに出てきます。
売り上げ推移表を見るとそのスレッドがローンチした時期と同期しており、申し込み者からの解約や振り込みしてこない人も多くなったと言います。
弁護士を通じて掲載の削除を求めたが応じてくれないということで、生活に支障が出るほど深刻な状況でした。
本人は投稿されている内容の事実無根を私に訴えますが、問題意識の方向が違うのではないかと思うのです。
対策手段は別としてバッシングされた人が最も考えなくてはいけないことがあります、それはバッシングされている内容が真実か否かということではありません、重要なのはバッシングされたという事実なのです。
つまり重要な真実は、バッシングされるような恨みを人に持たれてしまったということです。
まず深く反省し、そして犯人の目星がついているというのであれば早期に会って面と向かって真摯に話し合うべきです。
こういった人間関係の縺れに際して、自身は表面に出ず他者を介して解決しようとする行為もまた極めて感心できません、そういうところが更に恨みを増長させてしまうのです。
潔く、起きた事実を真摯に受け止め、自身の起こした問題であれば自身の手で解決させるという覚悟と姿勢と行動が重要なのです。
結局自身に不都合な事実が起きるのは全てが自身が行動してきた結果なのです、これを素直に認めることです。
バッシング問題の相談は少なくありません、SNS投稿を見て「事実を知って裏切られた」というような内容のメールが毎日のように届いて精神的に参っているという相談もありました。
そのメールを読ませてもらいましたが、確かに厳しい内容ですが実に冷静に書かれています、決して悪意があるような内容ではありません。
公開した記事は誰が見ているか解りません、責任ある表示や投稿に心がけることは経営者としての責務として当たり前のことなのです。
思考分析は視点によっていろいろな分類方法がありますが、基本的な人間の思考は3つのタイプに分けられると思います。
私は思考の基本タイプを「思考回路」と呼んでいます、つまりこれは感性が決定されてしまった大人になった後では修正が非常に難しいという意味においてです。
回路とは部品と導線によって固定された電気の通り道です、たとえ部品を交換しても通り道である基板の導線を変更しなければ修正できません。
思考もこれと同じなのです、そういう意味で「思考回路」なのです。
以下、その3つの「思考回路」を示します。
思考回路1=スポット思考
1つの行動や考え事をすると全神経がそれに集中し他のことが全くできない、その行動や考えは他の行動などと全くリンクせずに単独で存在する。
思考回路2=線形思考
1つの行動や考えとその前後の行動などとのリンクができる、例えば「駅まで行くついでに銀行に寄ろう」という他の行動との連携が取れる。
思考回路3=帯状(リボン)思考
1つの行動や考えと他の行動や考えが複雑に関連できる、例えば「A=B、A=CならB=C」という行動や考えが即座にできる、また一つの行動を複数の行動に結びつけることができる、つまり同時に複数の考えを持って行動できる。
どの思考回路が優れてどれが劣るかの話ではありません、それぞれの「思考回路」に合った業務を与えることが適材適所だということです。
例えば、企画やソリューションは思考回路3の人が不可欠であり、芸術や精密加工などの繊細な業務には思考回路1の人でないと成し得ません、それぞれの「思考回路」に適応した職に就くことで真の自分らしさを追求できるのです。
ビジネスでは顧客や取引先、プライベートでは友人や恋愛相手、それらの間で真の相互信頼関係を築く過程には一定の共通点があるようです。
上手く信頼関係を築け、長期に渡って継続できている相手を改めて時系列的に考えてみたら見事な一致点があり、おおよそ以下の過程をたどるようです。
第一段階は「憧れ期」で、「あの企業をパートナーにできて良かった」とか、自分の理想に合った人や企業に対して憧れや期待感を膨らませる時期です、プライベートでは最も楽しいときです。
第二段階は「嫌悪期」で、理想の相手と仕事や付き合いが深まるにつれ今まででは知りえなかった側面や環境が見え隠れしてきます。
パートナーの周辺企業や真の実力、プライベートではその人の家族や友人関係、また問題が起きたときなどの非日常的な事項での考え方や行動などを知るようになります。
そしてそれらが自分が想定していた範囲を超えていると、本来なら何でもないことでも大きな障害と写るのです、これが嫌悪感に移行するのです。
第三段階は「許容期」で、嫌悪の部分の本質が理解できると今度は逆に急速に第一段階以上の親近感が発生します。
相手企業やその人の行動や思考を個性として認めたり、冷静に判断し相手に合わせた行動や思考を行えるようになります。
ここで最も私が強調したいのが、第2段階を得ずして経営統合や事業提携をしてしまった場合は、その後に第二段階を迎えると最悪の状況が生まれる可能性が高いということです。
逆説的に言うと、今まで上手く信頼関係を築けなかった場合の殆どが第一段階で最終的な結論を出してしまった場合です。
どんな人間でも生まれも育ちも違います、まして成長段階での経験の差など多くの相違点があるのが普通です。
また、成功したことがない人に多くみられるのが第二段階で常に引き返してしまうことです、このような人間関係に臆病な人は本当の信頼関係を築ける企業や人は皆無となるでしょう。
これは何もビジネスだけではありません、プライベートにも通ずるように思えてなりません。
技術系やサービス系ベンチャー企業経営者に多い勘違いがあります、「自分の会社は凄い物を作れる」、「凄いアイデア商法を持っている」という謳い文句、しかし本当にそれが凄い物なのかを調査してみたでしょうか?
インターネットでちょっと調べただけでも多くの企業が既に持っているものかもしれません、最悪は既に数社が事業化している場合もあります。
経営コンサルタントを行っていた頃は、年間数十社の上記のような事業売込み案件が持ち込まれました。
銀行からの紹介、ベンチャーキャピタルからの紹介、或いはビジネスパートナーからの紹介、サイトからの問い合わせとルートは様々です。
中には、それで上場したいと言う経営者までいました。
しかし、数時間調べただけで多くの企業が既に商品化していたり事業化したりしているものばかりです。
少なくても事業化する前に関連技術や商品の有無、また特許事務所に依頼して同様の特許の出願の有無については調査すべきです。
ただ彼らの気持ちは凄く解るのです、誰しも自分のものは凄い技術や他に無いサービスだと信じたいものですから。
ズバリ、技術系やサービス系ベンチャー企業においての経営の落とし穴の多くは「アイデアや技術に自惚れて胡坐をかくこと」です。
これは完全にプロダクツアウト型の発想です、良い物を作れば売れるという幻想に過ぎません、既にこの段階でいわゆる「ビジネス・パラドックスの罠」にはまってしまっているのです。
成功する企業はマーケットイン型、つまりは世の中が欲しているものを作ったりサービスする企業です。
ベンチャー企業の成功方程式は「良いものを作れる技術」では決してありません、ベンチャー企業とはいえ営利を目的とした法人です、決してボランティアではないのです。
そして投資家評価のポイントは、「利益を継続的に右肩上がりで出して行けるか」なのです。
凄い物を作れる企業や凄いことを考え出した企業なんて世の中に5万とあります、企業とは利益を出して行けるかが勝負です、そう考えて発想の転換をしていただきたいものです。
ただし、本当に他者にできない良い物やアイデアなら別です、これは自動的に利益に変わります。
本物かどうか、それを見切れる目を持つこと、これもまた成功する経営者には重要なことです。
ビジネスを考えるにあたり、重要なのは統計・ファンダメンタルズ(物事の原理原則)・人の心理(マインド)です。
これは株や為替などの経済的事項についても言えることで、「経済3原則」とも呼ばれています。
なかでも、「心理」(マインド)については最も重要且つ深い読みが入るので難しい事項です。
人の「心理」は研究すると実に面白いものです、例えば山での遭難事故も多くの場合に心理が大きく関与しています。
人は山で迷うと何故か無意識に下に向かって歩くのです、下りた地点が山に囲まれた谷であったらそこから抜け出すことは不可能に近くなります。
遭難したくなければ逆に登ることです、見通しが利く所でしっかりと降りる方向を確認すれば山深く入り込むことから回避できるのです。
船の転覆もそうです、傾いた方へみんなが移ってしまうのです、したがって転覆するのは当たり前なのです。
これは低い方が安全に海へ飛び込みやすいという心理からです。
冷静に考えたら高い方へ移れば傾きが直ることは誰にでも判ることなのに、パニック状態ではこのように通常では考えられない行動をとってしまうのです。
これを「群集心理」と呼びます、たった一人のパニック行動が周囲みんなに移ってしまうのです。
また、犯罪者は北(南半球では南)へ向かい逃げる、岐路でとっさに選ぶ道は右が多いなども心理的なものです。
これらは人間になる前からのDNAに仕組まれた生物の本能であると指摘する心理学者もいます。
これらの人の行動心理をしっかり理解した上でビジネスに生かすと、成功する確率がぐんと上がります。
例えば、待つ心理を応用した発売時期、天候や時間による商品入れ替え、進路(導線)による色や商材分けなど、同じ店舗で同じ商品なのに心理を取り入れただけで大幅な売り上げアップになった例は多々あります。
これからのビジネスは、人の行動心理を無視できない大きな要素となると言っても過言ではありません。