技術系やサービス系ベンチャー企業経営者に多い勘違いがあります、「自分の会社は凄い物を作れる」、「凄いアイデア商法を持っている」という謳い文句、しかし本当にそれが凄い物なのかを調査してみたでしょうか?
インターネットでちょっと調べただけでも多くの企業が既に持っているものかもしれません、最悪は既に数社が事業化している場合もあります。
経営コンサルタントを行っていた頃は、年間数十社の上記のような事業売込み案件が持ち込まれました。
銀行からの紹介、ベンチャーキャピタルからの紹介、或いはビジネスパートナーからの紹介、サイトからの問い合わせとルートは様々です。
中には、それで上場したいと言う経営者までいました。
しかし、数時間調べただけで多くの企業が既に商品化していたり事業化したりしているものばかりです。
少なくても事業化する前に関連技術や商品の有無、また特許事務所に依頼して同様の特許の出願の有無については調査すべきです。
ただ彼らの気持ちは凄く解るのです、誰しも自分のものは凄い技術や他に無いサービスだと信じたいものですから。
ズバリ、技術系やサービス系ベンチャー企業においての経営の落とし穴の多くは「アイデアや技術に自惚れて胡坐をかくこと」です。
これは完全にプロダクツアウト型の発想です、良い物を作れば売れるという幻想に過ぎません、既にこの段階でいわゆる「ビジネス・パラドックスの罠」にはまってしまっているのです。
成功する企業はマーケットイン型、つまりは世の中が欲しているものを作ったりサービスする企業です。
ベンチャー企業の成功方程式は「良いものを作れる技術」では決してありません、ベンチャー企業とはいえ営利を目的とした法人です、決してボランティアではないのです。
そして投資家評価のポイントは、「利益を継続的に右肩上がりで出して行けるか」なのです。
凄い物を作れる企業や凄いことを考え出した企業なんて世の中に5万とあります、企業とは利益を出して行けるかが勝負です、そう考えて発想の転換をしていただきたいものです。
ただし、本当に他者にできない良い物やアイデアなら別です、これは自動的に利益に変わります。
本物かどうか、それを見切れる目を持つこと、これもまた成功する経営者には重要なことです。
ビジネスを考えるにあたり、重要なのは統計・ファンダメンタルズ(物事の原理原則)・人の心理(マインド)です。
これは株や為替などの経済的事項についても言えることで、「経済3原則」とも呼ばれています。
なかでも、「心理」(マインド)については最も重要且つ深い読みが入るので難しい事項です。
人の「心理」は研究すると実に面白いものです、例えば山での遭難事故も多くの場合に心理が大きく関与しています。
人は山で迷うと何故か無意識に下に向かって歩くのです、下りた地点が山に囲まれた谷であったらそこから抜け出すことは不可能に近くなります。
遭難したくなければ逆に登ることです、見通しが利く所でしっかりと降りる方向を確認すれば山深く入り込むことから回避できるのです。
船の転覆もそうです、傾いた方へみんなが移ってしまうのです、したがって転覆するのは当たり前なのです。
これは低い方が安全に海へ飛び込みやすいという心理からです。
冷静に考えたら高い方へ移れば傾きが直ることは誰にでも判ることなのに、パニック状態ではこのように通常では考えられない行動をとってしまうのです。
これを「群集心理」と呼びます、たった一人のパニック行動が周囲みんなに移ってしまうのです。
また、犯罪者は北(南半球では南)へ向かい逃げる、岐路でとっさに選ぶ道は右が多いなども心理的なものです。
これらは人間になる前からのDNAに仕組まれた生物の本能であると指摘する心理学者もいます。
これらの人の行動心理をしっかり理解した上でビジネスに生かすと、成功する確率がぐんと上がります。
例えば、待つ心理を応用した発売時期、天候や時間による商品入れ替え、進路(導線)による色や商材分けなど、同じ店舗で同じ商品なのに心理を取り入れただけで大幅な売り上げアップになった例は多々あります。
これからのビジネスは、人の行動心理を無視できない大きな要素となると言っても過言ではありません。
私がどんな関係にせよ、付き合うにあたって特に気をつけている人は他者の秘密を簡単にしゃべる人です。
触れられたくない私生活などは極一部の人しか知らないはずです、その触れられたくない他者の私生活や過去のことを簡単に第三者に得意げに話す人がいます。
こういうことは遅かれ早かれ本人の知るところとなります、おそらくこれを知った本人は二度とその人には秘密の話はしないようになります。
更に、どんな理由にせよお金を貰った上で知りえた他者の秘密や家族構成などの個人情報を他人に漏らすと、「個人情報漏洩」や「守秘義務違反」という法律に触れます。
弁護士や医者などは当たり前ですが、人生相談や資産相談などもその対象となるので注意を要します。
私は他者の秘密を簡単にしゃべるような人には知られてよい事以外は話しません、他者のことを私に話すということは私の事も同じように他者に話すということですから。
でもどうしてそういう人は、簡単に他者の秘密を話したがるのでしょう?
世の中は需要と供給のバランスで成り立っています、つまり他者の秘密を聞きたい人もまた多いと言うことなのでしょう。
それを話す人は「自分は信頼されているから他者に言えないことまで私には話をしてくれる」、と周囲に思わせたいのでしょう。
しかし思惑とは裏腹に、最初は興味本位で聞いていた人もその後は「自分のことも他者に話しているのではないか?」、と疑いに変わり徐々に離れていくのです。
あらぬ疑いをかけられたくないなら他者の秘密はできるだけ持たないことです、つまりは聞かないことにこしたことはありません。
経営者は常に考え事が複数あって頭の休まる日がありません、常に複数の考え事を抱えているために話しの焦点が定まらず話しがあちこちに飛ぶ人も珍しくありません。
往々にしてこのような状況が長期間継続すると、自覚が無いままに精神的ストレスが蓄積されていき気が付いた時には思考が停止してしまうことがあります。
私も起業したての数年間は、それまでの生活には無いほどの考え事が一気に発生し自身の思考コントロールに苦慮した記憶があります。
そんな体験によって徐々に解決策も見いだせるようになってきます、そして一度身に付けた解決策は無意識にその行動を取れるようになります。
私が自身で学んだ解決策の一つは問題を長期化させないことです、面倒で嫌な問題ほど短期決戦で素早く処理することが肝要です。
例えば、資金問題や人事問題は長期化すると各所に影響が出てきます、このような経営に直結する問題は他の事項を全て止めても最優先で全思考を集中させて解決するようにしなくてはいけません。
これらの優先すべき課題を残したまま他の事項を並行して考えても思考が集中できずにミスが連発し、そのミスによって更なる問題が発生するようになります。
もう一つは自身だけでは解決できない事項、例えば他者の意向や判断が必須条件になるような問題は、まず自分なりの解決策を相手に示しておくことが肝要です。
そのうえで相手からの反応が来るまでは他の事項に集中し、この事項に関してはできるだけ考えないようにすることです。
更には、完全に考えないようにするには第三者へのバトンタッチが有効です。
例えば互いに良く知る人に仲裁をお願いする、また法的に有効な事項であれば弁護士に依頼するなどです。
思考時間はお金では換算できません、お金でビジネスに直接関係ない問題を考えずに解決できるのであれば最も効率的な解決策となります。
人間には思考キャパシティ(容量)というものがあります、会社員時代には考えられないほどの思考しなければならない事項が起業したとたんに一気に押し寄せます。
経営歴、どんな状況であろうが長ければ長いほどこれらの対処方法を身につけていくのです。
経営歴が長い経営者同士はこれらを阿吽の呼吸で解ります、だから互いに無駄な思考や行動をしないようにさっさと解決する方向で話しがまとまります。
起業したての人は、時間的利益を最優先して考えるようにすることを念頭に入れてほしいと思います。
海外企業の社長さん達とよく日本のビジネスマンについて話すことがあります、海外企業から日本人ビジネスマンを見ると日本にいて思うイメージとは全く異なることに驚かされます。
常識だと思っていた事も離れて見るとその特異性もよく解ります、ちなみに彼等のイメージする日本人ビジネスマンは以下の通りです。
・契約など事業推進のスピードが恐ろしく遅い。
・契約前から求められるエビデンス(証拠書類)が多い。
・契約書などの書類の文章が極めて複雑である。
・どちらとも取れるような判断に迷う言葉を多く用いる。
・サンプルは無料だと思っている。
・メールしても電話しても返事がなかなか来ない。
・家庭や友人などのプライベートな話をしない。
と言う感じです。
しかしこれを悪いと言っているのではありません、あくまでも特徴を示しているだけです。
また具体的によく質問されるのは、日本のビジネスマンが「検討します」と言うのはOKなのかNGなのかという事項についてです。
なるほど確かによく使います、常識だと思っている事も一歩離れて冷静に考えることも重要ではないでしょうか?
そこには、成功するためのヒントが多分に隠されていることもあるのです。