忘れたころに連絡してくる20年来の後輩がいます、彼は頭がよく何でもすぐ理解しほとんどの業務を器用にこなし人当たりも良く誰からも好かれます。
会議では積極的に意見を述べそれが実に理にかなっているのです、ただ彼には大きな欠点があるのです、それは今まで一度も成功したことがないというものです。
信じられないことですが、これほどの能力と器用さがあるのにやり始めた事業はいつの間にか崩壊します。
いったいこれは何故でしょうか?
私が思うに彼は「他者の心の中を見ていない」からだと思うのです、確かに上下関係を意識して敬語なども使いこなし相手を気遣っているように見えます。
しかし私から言わせれば表面的なところを見ているだけなのです、その人の本質を理解して心を通わせる会話が全くできないのです。
誰と話しても同じような話し方で同じことをくどくどと話します、また自分の考えや意見が先行します。
いつの間にか「良い人なんだけど、それだけで利益にならない人」というレッテルを貼られてしまっているのです、だから自分では気がつかないうちに相手の人がフォードアウトしていくのです。
「何かを間違えている」、そんな思いでいつも彼と接しています。
ビジネスセンスは能力でも知識の豊富さでも人脈の多さでもありません、相手は生身の人間だということを忘れている人が多くなったと感じる昨今です。
2040年には高齢者人口が40%に迫る日本ですが、政府の憂いを尻目に着実にそれを予見した民間企業の動きが各所に見られます。
先日、商談で訪問した企業は何と平均年齢が70歳を超えており代表者は79歳で起業して現在87歳です。
最も若い社員が57歳の社内システム担当者で、事務の女性社員も60歳を超えていますが社内は活気に包まれています。
個人の投資アドバイスを行っているこの会社はクライアントも高齢者です、だから逆にクライアントとの飲み会やゴルフなどを毎週のように開催しては公私共に楽しめるのだといいます。
また、役員や社員の90%以上が年金を貰っているので報酬はお小遣い程度でも充分に満足してもらっているのだそうです、年金受給者は一定の収入があるとその分年金を引かれてしまうので報酬を貰っても年収は変わらず意味が無いのです。
それよりも退職後に家にいると毎日のように奥さんと喧嘩するようになり、家から逃げるようにこの会社に入社した人もいるそうです。
元銀行や証券に古物商と、自身の経験や人脈が生かされ毎日が楽しく生活に困ることは何もないそうです。
近未来の日本の企業の在り方を垣間見たような気がします、高齢になって益々元気で社会貢献をいつまでも担うことができる、本当に感激してしまいました。
経営状況もほぼ全員が成果給なので、固定費は極めて低く抑えられ資金繰りにも苦労することがありません。
高齢者による高齢者向けサービス、いろいろと考えられるのではないかと思考を凝らしている自分がここにいます。
一つのリフレッシュ方法の提案ですが私はよく節目を使います、節目を都合よく解釈して有益に活用しているのです。
なかなか纏まらない商談が発生した場合など「今月は流して来月決めにかかろう」とか、状況変化の「きっかけにする」と言うか一種の気分転換を行います。
面倒な事の先送りということにもなりますが、取り合えず落ち着く為の精神的なリセットになると考えています。
それによって疲れた頭を一旦リフレッシュするのです、その効果は絶大かと思います。
一つの物事に拘って集中しすぎると考えがどんどん狭くなります、そこで来月から再起動するという大義名分を作って一休みするのです。
そうすることによって第三者的に冷静に今の状況や問題が見えてくるようになります。
節目は何でも良いのです、日・週・月・年・期など都合よい時期を選べばよいのです、この先が善くなることであれば「自己都合」も悪いことではありません。
山ネズミは高速道路脇の剥き出しになったケーブル類を時々かじるそうです。
そのために信号トラブルを起こし、その修理費用は年間で大きな額になります。
それが電源ケーブルですと当然のこと山ネズミは感電します。
そして怖い思いをした山ネズミは二度とケーブルをかじらないそうです。
これが、本来の動物の防衛本能とも言うべき「学習効果」です。
対して人間はというと、本当に何度痛い思いをしても懲りない唯一の動物です。
どんなに痛い思いをしても、もう一度その痛さを味わいたいという人もいるくらいで本当に困ったものです。
ビジネスでも同じミスを不思議なくらい連発する人がいます、何度言っても1回は直りますが翌日には元に戻っています。
いったいこれはどういう心理なのでしょうか?
昔から一度身に着いた癖は何度注意しても治らないと言われます、注意するとしばらくは治るのですがそのうち復活してしまいます。
人間とは本当に1度では学習できない唯一の動物なのです。
ここには人間の持つある心理的作用が関与しています。
例えば、「怖かったけどもう一度あの経験をしてみたい」、「怒られたけど今度は怒られないかもしれない」、という再確認作用や希望的観測です。
人間とは思考する動物です、その思考能力が優れているが故にときどき不可解な行動をとることがあるのです。
痛い思いをしたら、興味本位で妙な考えを起こすのでなく二度としないように強く心掛けることが肝要です。
同じ轍を何度も繰り返し踏む人に成長も成功もありません。
預貯金1000万円の人と借金1000万円の人がいるとして、どちらの人が心理的に楽でしょうか?
多くの人は預貯金が1000万円の人と答えると思います、でも実際にどちらも経験してみると解るのですが実は精神的に気が楽なのは借金1000万円の人です。
この心理を経験上で説明します、預貯金1000万円の人の心理の多くは減ることの怖さです、更には万が一にも失ってしまうのではないかという不安が付きまといます。
事実、先の9.11テロで株式などに投資していた多額の資産を一瞬で失った経験があります、その額は都内のマンションが買えるほどでした。
また少しでも減りだすと永遠に減っていくのではないかという不安心理がよぎります、これは精神衛生上極めてよろしくありません。
対して借金がある場合の心理は面白いことに非常に前向きに捉えられるのです、例えば10万円でも借金額が減ると「もう少し頑張って早く完済させよう」という不思議な力が湧いてくるのです。
このことから常に考えているのがバランスです、それは借金が幾らあっても取り崩す資産で何時でも完済できる状況であれば事実上借金とはなりません、また目に見える借金があることで前向きにビジネスを考えていくことができます。
一病息災という言葉があります、これは何か小さな病気を常に患っていると大きな病気を発見でき長生きできるという意味です。
事実、人間ドックを毎年受けますし病院へ行ったついでに主治医に不安なところを聞いてみることもできます。
プラス要素だけよりもバランスが取れたマイナス要素は有効に作用するのです、またマイナス要素はいつでもプラス要素に転じることができる代物でもあると考えることが肝要です。