「自己実現」という言葉をよく耳にしますが、これを本当によく理解していたら簡単には使えない言葉だと思うのです。
「自己実現」とは、アメリカの心理学者マズローが提唱した「欲求5階層」の頂点に位置する最も崇高な欲求を指しています。
そこから「自己実現理論」という言葉も発祥してきました、おそらく誰かがこの「自己実現理論」という言葉を何かで知り深く理解せずに使いだし、それを本や人伝に知り拡散し現在多くの人が簡単に使うようになったというのが真相でしょう。
さてマズローの「欲求5階層」とはいったい何なのかですが、私がある事業の出版段階において多くの関連書籍を読んでメモしている範囲で簡単に説明しましょう。
人間の欲求は自己の置かれている環境や状況から一つが満たされるたびに段階的に次の欲求が発祥するというもので、最も低いレイヤー1は「生理的欲求」で食・睡眠・排泄の三大欲が満たされる欲求であり、通常はこれは当たり前として他の4階層で示されます。
レイヤー2は「安全の欲求」で経済的・心身的な安全性を確保したいという欲求で、まともな暮らしへの欲求でありセーフティネットのお世話になっている人などはこの階層に当たります。
レイヤー3は「社会的欲求」で社会に必要とされている存在でありたいという欲求であり、起業やボランティアなどの行動はこの心理欲求に当たります。
レイヤー4は「承認欲求」で自身の価値を認めてほしいという欲求であり、尊重されたいという心理です、名声・尊重・地位・注目などの欲求はこれに当たります。
レイヤー5はレイヤー2~4全てが満たされて初めて達成可能と言われる欲求であり、これが「自己実現」ということになります。
この欲求は崇高であるべきで「自己能力を最大限化且つ具現化し、生まれてきた使命を全うする」という、最終欲求であるといわれ続けてきた階層です。
例えば経営者であれば売り上げ10億超企業の達成やオリジナルな学術文化の創出確立などであり、多くの人が「自己実現」として目的にしているものとは異なります。
多くの人は「自己実現」としているのは、レイヤー4の「承認欲求」に他なりません。
さてマズローはここで、「自己実現」を1度でも達成した人は、欲求階層が一過性の要因があってレイヤーが下がっても、他者に比べて極めて特徴的な思考行動が見られるとしています。
それは「現実知覚」・「自己・他者・自然の受容」・「自発性」・「課題中心」・「プライバシー欲求の超越」・「自律性」・「新鮮認識」・「神秘的体験」・「共同社会感情」・「心の広さ深さ」・「民主主義性」・「手段と目的、善悪の区別」・「哲学的ユーモラス」・「創造性」・「文化の超越」というものです。
つまり人生の成功者であり「神の領域」に存在する人なのです。
マズローは「自己実現」を一生かけても達成できる人は極めて少なく、世界の名だたる経営者など膨大なるサンプルを収集しての調査結果は全体の2%にも満たなかったと報告されています。
多くの人はレイヤー2~4を一生のうち何度も巡回しているとし、「自己実現」の達成は努力だけでは達成不可能であり協力者や運などのプラスアルファの何かが必須だということです。
またその後の発表では、「自己実現」を1度でも達成すると更に上の欲求が芽生えるとしています、それが「自己超越」という最高峰の欲求階層です。
「自己超越」の階層にいる人は「外見は極普通の人」で、「在るべきもの全てを尊重」し「謙虚・聡明」で「瞑想認知を好み」、「宇宙レベルの全視野的思考」になるといいます。
見かけは普通でも、一種独特の存在感を示す「オーラ」に包まれるそうです。
つまり自身の存在は宇宙に活かされているというのが基本思考であり、住んでいる世界こそ人間界であるが俗世界とは別次元で生きている人ということになります。
また、相応の年齢で多くの経験を通し万物を達観した人のみが達成できる段階であるとしています。
崇高な人生を求め欲求を表現するなら、「自己実現」などという中途半端で自己利益優先での邪な欲求ではなく「自己超越」という超人レベルを目標にしてほしいものです。
以上が私の「自己実現」という言葉に関しての知識です、冒頭に「簡単に使えない」と言った意味がこれらの事項からです。
簡単にこれを使うと、何も知らない「自己実現」には程遠い人だけが寄ってきて全てを達観している「自己実現」を達成するに不可欠な人からは距離を置かれてしまう危険性があるのです。