2024年7月 4日 06:00
過日の死者が多数出た韓国での地下鉄火災事故、とっさの判断で逃げ延びた乗客が携帯電話で撮った映像が全世界のテレビニュースで流れました、同様に各種のテレビ番組での「重大事故」ニュースでの悲惨な映像が記憶に残ります。
これらの映像を見て何となく違和感を感じたことはないでしょうか、例えば韓国での地下鉄火災事故ですが車内に煙が立ち込め炎も上がっています、絶対に異常な状況であるにも関わらず多くの人は逃げようとはせずに座ったまま平然としているのです。
また大きな山火事や火山噴火などではすぐそこまで火や溶岩が迫っているのに逃げるどころか屋根に上ってただ呆然と迫りくる溶岩を見ています、警告音が鳴っているのに踏み切りの中で動けなくなってしまっています、結局この人たちは亡くなってしまいました。
これらの異常事態のとき何故逃げたり何らかの対処をせずにその場に居続けるのでしょうか、これには人間にしか備わっていないある種の危険な心理が働いています、それが「正常性の偏見」という心理です。
「正常性の偏見」という心理はある一定の危機感を超えた異常事態が自身の身に起こるとパニックを起こし身を危険にさらす状況を抑えるため、その異常事態を勝手に「これは正常なる平穏な状況である」と脳が認識してしまう機能です。
その結果において身体が固まってしまったかのように自らは何もしようとせず事が収まるのをただただ待っているだけという極めて奇異な行動をとります、つまり自分が危険にさらされるという状況を無視することで恐怖感から開放するように我が身に迫っている状況とは裏腹にリラックス状態になっているのです。
この心理状態のときの初期にはノルアドレナリンが大量に放出され次にこれをリセットするようにセロトニンが分泌されます、続いてドーパミンとエンドルフィンが多量に分泌されます、したがって熱いとか痛いとか怖いという感覚がなく、むしろハイな状態になって笑顔でいられるという実に怖い心理なのです。
この心理の持つ本当の怖さはビジネスなどの通常の生活シーンにも現れるということです、例えば倒産や経済破綻に追い込まれているような状況でこの心理が働いたとしたらどうなるでしょうか、また致命的な大きなミスを犯して生活が奪われてしまうような状況でこの心理が働いたらどうなるでしょうか。
これは決して架空の話しではありません、多くの倒産企業の経営者や自己破産者の多くは前日まで友人たちと楽しく飲んだりリラックス状態で熟睡しているのです、また致命的な大きなミスを犯してしまった人がそれに激怒されても自身の事ではないように上の空で聞き流し笑みまで浮かべて平然と事態をスルーしようとしてしまうのも同様です。
ビジネスでの新規事業の立ち上げ時は各種の不安が常につきまとい百戦錬磨のベテランの人でも熟睡できないという緊張状態が継続するのが当たり前なのです、もしも新規事業の立ち上げ時や有事の際に担当者が毎日熟睡でき通常の状態で過ごせているとしたら他者事とドライに割り切っているか、もしくは心理学的に観て相当危険な心理状況に陥っている可能性が極めて高いと言えます。
何れにしてもこのような状況の人に重要な任務を任せることは死活問題になります、だから経営者は常に担当者の心理状態を厳しくチェックしていなければならないのです、期限厳守や優先事項の判断ができないなどの危険を感じたら即日のうちに担当を有無も言わせず交代させることです、厳しいようですがビジネスでの采配ミスは多くの人の生活を奪います、事業と関係者の生活を守るという大義名分をもってステイディなランニング状態になるまでクール&ドライに徹することが肝要です。