2021年11月10日 00:00
「懐刀(ふところがたな)」とは武将が常に懐に入れておく保身のための短剣のことを指しますが、比喩として絶対的な信頼を示す身辺に常に置いておく部下に対して使われます、戦国時代には「御庭番(おにわばん)」や「草履番(ぞうりばん)」など日頃は庭掃除や来客の草履の管理をしているのですが裏では味方の武将や敵陣の密偵という任務を遂行する人だったのです。
豊臣秀吉は何故織田信長から重宝され先輩武将をゴボウ抜きで大出世を果たせたのでしょう、歴史を紐解けば若き時代の秀吉の役割が見えてきます、また徳川家康が草履番として採用した本田正信が何故ある日突然に側近に迎えられたのでしょう、これも「無駄飯食いの役立たず」と他の身内武将から言われ続けた若き日の正信の役割から想像するに易しいです。
日頃は庭掃除や草履の管理をさせるには意味があります、それは身内や客人として呼ばれた武将の顔を覚えさせるためです、顔が解らなければ密偵はできないわけです、秘密会議をしているのは誰と誰かなどが解らなければ密偵の意味をなさないからに他なりません。
こうした人材を「懐刀」と呼ぶのですが現代でも教育現場や病院、そして多くの企業にも存在しています、例えばアメリカの某保険会社では普段は社内の掃除や設備の修理などを行っています、どの部署にも自由に出入りできて作業を行っているにも関わらずまったく目立ちません、社員は不用意にも通路やトイレで秘密の話しを立ち話でしてしまうでしょう。
こうして社内の諜報活動(スパイ)を行い不正取引などの情報を事前に社内から得ているのです、その存在は社長の絶対的な信頼を得た人で何かと重用され報酬も正規の報酬以外に社長からダブルインカムで受け取れるのです。
社長への報告は社長が居るときの社長室の掃除の際に他なりません、秘書にもばれることもなく堂々と報告できますから、また諜報活動だけではなく会社を守る為の作戦行動も裏で密かに行います、まるでスパイ映画のような事が現実に企業内で行われているのです。
企業以外では、教育以外の事は何でも行う「学校用務員」がその役割を担っているかもしれないし、病院では「清掃係」や「設備係」がそうであるのかもしれません、それは表に出ることが一切ないだけに誰にも解らないことなのです。
「懐刀」は指示に忠実で自分の損得勘定や考えを一切入れずの完璧な報告を行うという絶対的な信頼感がなければ任されません、したがって社長自ら極秘裏に徹底教育した秘密兵器ともいうべき人なのです、そして誰もが務まる役職ではありません、表面上は「清掃係」や「設備係」などですから外見や立場など他者の目を気にするようなプライドが高い人はまず務まらないでしょう。