2021年9月26日 00:00
前回の「ハキリアリ」に続き、自身の都合のよいように相手を利用している「片利共生」を行っている別種のアリについてお話しします。
日本のほぼ何処にでも見ることができる「サムライアリ」というアリがいます。
公園の隅や校舎の裏やグラウンドの脇など、夏のある時期を狙えば探そうと思えば何時でも探し出すことができます。
この何処にでもいる「サムライアリ」はとんでもない「片利共生」を行っていました、その相手は同じアリの種である「クロヤマアリ」です。
なんと、「サムライアリ」の働きアリは女王アリの産卵時期に合わせて、「クロヤマアリ」の巣を襲って成虫や孵化する寸前の蛹を自分の巣に持ち帰るのです。
「サムライアリ」の巣に連れて来られた「クロヤマアリ」は、自分たちの蛹の世話をするだけではなく「サムライアリ」の女王が生んだ卵の世話を孵化するまで行うのです。
この行動は「奴隷狩り」と呼ばれ、トゲアリやアメイロケアリなどにも見られるアリ特有の行動です。
また「サムライアリ」の働きアリは奴隷狩りを行うことだけに専念し、奴隷狩り以外では巣から出ることもありません。
更には、巣の中での卵の世話から掃除、巣の拡張や修理、そして食料の確保など、その全てが奴隷として捕獲された「クロヤマアリ」に行わせているのです。
「サムライアリ」の巣の中で孵化した「クロヤマアリ」はそこが自分の巣だと認識して、せっせと「サムライアリ」の世話をするための働きアリとして一生を終えます。
何故このような洗脳が行えるのかなどはよく解っていませんが、アリの生態そのものにそういった遺伝子が組み込まれている可能性があります。
つまり、「サムライアリ」はその生態を知っており、巧みに自分たちの為に利用しているだけなのかもしれません。
この理不尽なる「片利共生」は極まっています、また同時に「クロヤマアリ」の立場で言えば一方的に害を受ける「片害共生」と言えます。
このように、「片利共生」の多くは見る立場を変えると「片害共生」となる例が多々存在しています。