2021年9月25日 00:00
「片利共生」を考えるに最も興味深く多数種を調べた生物があります、その生物はアリです。
アリは調べれば調べる程に完全なる組織行動を行い、あの小さな体ながらも昆虫界にあってかなり知能レベルが高い昆虫です。
その生態は驚くものばかりで、「共生」の例を数多く見ることができます。
その中でも、完璧なまでに「片利共生」を行っているアリが「ハキリアリ(葉切り蟻)」です。
テレビでも時々登場するこの「ハキリアリ」は葉を細かく切り刻んで巣まで運び、ここで「アリタケ」というキノコに近いカビのような菌類を繁殖させ、そしてこれを餌にして幼虫や成虫のエネルギー源にしているのです。
この葉を刻んで運ぶ様子が列を成し整然と行われるので、非常にテレビ映えするアリだと思います。
また、組織学や生物の生態の題材として多くの異種カテゴリの研究者によって飼育され、各種の研究や論文のヒントとして使われています。
その組織体系はアリだけではなく、全ての生態系で最も進んだ完全なる役割分担を行っています。
組織は女王アリを筆頭にオスアリ、そして大型兵隊アリと大型働きアリ、中型兵隊アリと中型働きアリ、小型兵隊アリと小型働きアリ、更には細分化してこれまでに10種類以上の役割を持つ種類で体系化されていることが解っています。
大型働きアリは葉を切るだけで小型兵隊アリは葉の上で見張り役に徹し、中型働きアリは葉を運び、小型働きアリは女王アリの世話や幼虫の世話をするという具合に完全に役割分担が決まっています。
また、体型や体色は役割に応じて全く異なり、同じ兵隊アリでも大型兵隊アリと小型兵隊アリでは体長が5倍以上も離れています。
話しを戻しますが、この「ハキリアリ」が育てて利用している「アリタケ」ですが「ハキリアリ」の巣の中だけで生存が確認されているのみで自然界では一切生存が確認されていません。
つまり、「アリタケ」を「ハキリアリ」は何らかの方法で進化させ、「ハキリアリ」に都合良いように存続させていると言えます。
また、「ハキリアリ」が巣を移動した後に残された巣の残骸からは生きた「アリタケ」は確認されず、「アリタケ」単独では繁殖できないということが解っています。
巣の移動の際には、何枚かの「アリタケ」が繁殖した熟成葉を持ち出す事も研究の結果解りました。
「ハキリアリ」が一方的に都合良く「アリタケ」を利用している「片利共生」のように思えますが、もしかして「アリタケ」も「ハキリアリ」を利用しているという「相利共生」なのではないかと考えられなくもありません。
何故なら、「アリタケ」は「ハキリアリ」が存在しなくては種の保存が行えないのですから。