2021年9月18日 00:00
寄生生物、その多くは宿主を自分の都合の良いようにコントロールしていました。
しかし、寄生生物を逆に自分の利益になるように体内に寄生させて有効活用するツワモノの宿主も存在します。
この場合は、「片利共生」という共生パターンになります。
そのツワモノの代表格は猫です、そして一方的に利用される寄生生物は「トキソプラズマ」という単細胞原虫です。
10数年前、まだ仮設の段階の情報として「猫がネズミをある種のフェロモンによって自分に近寄らせて捕獲している」という報告を読んで私もブログなどに取り上げていた記憶があります。
その仮説がつい最近になり完全に解明され、そのメカニズムまで明確になったのです。
猫科の動物は、生まれるとほぼ同時に親から感染されて体内に「トキソプラズマ」を寄生させます。
「トキソプラズマ」は、猫の体内で原虫の卵であるオーシストを生成し猫の糞と一緒に排泄されます。
猫科の糞はすべてが未消化状態です、なのでこれをネズミなどの小動物が餌として食べます。
「トキソプラズマ」のオーシストは、ネズミの体内で孵化しネズミの嗅覚を支配して猫の尿を探し求めるようにコントロールします、更にはネズミの逃避本能まで麻痺させてしまいます。
「トキソプラズマ」が寄生したネズミは猫の尿の匂いを追いかけ、猫と出会っても逃げることなくじっと動かなくなります、したがって簡単にネズミを猫は捕獲できるのです。
ここで「トキソプラズマ」を中心に考えると、実は「トキソプラズマ」は本来の宿主である猫の体内に戻るために猫と共生しネズミをコントロールしているとも考えられます。
猫が「トキソプラズマ」を有効活用しているのか、それとも「トキソプラズマ」が猫とネズミをコントロールしているのか、何れにしても猫と「トキソプラズマ」は何らかの共生の関係にあるということです。
更に驚く事に、この「トキソプラズマ」はすべての哺乳類に寄生する事が解ったのです。
人間にも寄生し、世界的な統計ではどの国でも約30%の人が「トキソプラズマ」に感染しているという調査結果が出ています。
「トキソプラズマ」に感染するとネズミと同様に猫を怖がらず、むしろ猫の匂いまで癒される匂いだと感じるようになります。
猫と共に寝食を共にする小動物やインコや鶏などの鳥類などの例は、この「トキソプラズマ」の効果によって説明できます。
また、「トキソプラズマ」の宿主同士は異種の生命体であるにも関らず共に癒される関係が築かれる可能性も否定できません。
ただ人間の場合、エイズなどで免疫力が低下している人や免疫不全である生まれたばかりの乳幼児は「トキソプラズマ感染症」という身体の麻痺や脳障害を引き起こすことも報告されています。
更には、大人になってからの性格形成や思考などとの関連性も研究され始めています。
これは研究者が、あまりにも同じような症例や性格の人が世界同時多発しているという社会現象との因果関係に注目し研究を進めているのです。
私の推測ですが「類は友を呼ぶ」という現象、その一つの要因が「トキソプラズマ」もしくは別の機能を持った亜種である可能性を否定することはできません。
つまり一定の期間においてある種の人を意味も無く好きになったり嫌いになったり、その原因は本当に双方の性格だけによるものでしょうか?
離婚寸前の夫婦が、猫を飼ったことによって急に仲が良くなり子も授かったなどという話は猫ファンなら誰しも知っている事実です。
「トキソプラズマ」をはじめ、別種のまだ解明されていない単細胞原虫が人間に及ぼす研究は今まさに始まったばかりなのです。