2021年9月11日 00:00
動物界に起こる不可思議な現象、その多くに「寄生」という生態が隠されていました。
寄生生物で最も多い種が扁形動物(へんけいどうぶつ)で、消化器官や循環器官を持たない為、他の動物に寄生することで身を守り種を保存する能力を獲得したことをこれまでにお伝えしてきました。
今回はこの扁形動物である吸虫の一種である、「リベイロイヤ」というアメリカ西部で発見された恐ろしい生態を持つ寄生生物を紹介します。
「リベイロイヤ」は2010年にアメリカ西部地方の多くの池に奇形のカエルが大量に発生したことから研究され、その結果発見された吸虫の一種です。
その研究により解明された「リベイロイヤ」は、実に恐ろしい戦略を持っていました。
「リベイロイヤ」の最終宿主は水辺に住むサギなどの鳥類で、宿主の体内で生殖し糞に混ざって卵が排出されます。
この卵は藻にくっつき、巻貝が食べると巻貝の中で卵から孵り、その巻貝を今度は無生殖化してしまうのです。
つまりこれが、ある時期に世界中で同時多発的に報告された貝類のメス化現象です。
さて、「リベイロイヤ」の幼虫は貝類に摂り込まれると細胞分裂により自身のクローンを巻貝の中で大量に作り続けます。
つまり「リベイロイヤ」は、第一宿主である巻貝を自身の生殖マシンに作り変えてしまうのです。
大量生産された「リベイロイヤ」の幼虫は巻貝の排泄口から次々に水中に出て、次の宿主であるオタマジャクシを探し求めます。
「リベイロイヤ」の幼虫はオタマジャクシを見つけると体表にくっつき、体表からオタマジャクシの体内へもぐりこみます。
オタマジャクシにもぐりこんだ「リベイロイヤ」の幼虫は、成長しながらオタマジャクシの成長細胞を作り変えてしまいます。
その結果オタマジャクシからカエルになった時に足が複数、もしくは1本しかないという奇形のカエルが発生するのです。
この奇形のカエルの製造こそが、「リベイロイヤ」の最終宿主へ辿りつく恐怖の戦略だったのです。
「リベイロイヤ」によって製造された足が奇形のカエルは上手く泳ぐことができません、したがって水面でバタバタしているのですぐに水辺の鳥類の餌となってしまいます。
宿主を転々と変え、その宿主を次から次へと変異させてしまう「リベイロイヤ」、なんとも恐ろしい寄生生物ではないでしょうか?
1990年ごろから生物学者間で話題になっていた「巻貝の無生殖化」や「カエルの奇形」の大量発生は、すべて「リベイロイヤ」が齎した結果ということが解明されたのです。