2021年8月21日 00:00
動物界に起こる不可思議な現象、その多くに「寄生」という生態が隠されていました。
「アオムシサムライコマユバチ」に代表される他の昆虫の幼虫や蛹、更に成虫に寄生する寄生蜂として知られるコマユバチ科は現在世界で約500種が確認されています。
その多くの和名は寄生先の昆虫名が付いているので、どの昆虫を宿主にしているのかが解る仕組みになっています。
今回、「アオムシサムライコマユバチ」に続き、もう一種のコマユバチ科の寄生蜂を紹介します。
その寄生先である宿主はテントウムシ、そしてその寄生蜂の名は「テントウハラボソコマユバチ」といいます。
「テントウハラボソコマユバチ」は、ずばりテントウムシの成虫を見つけると脇腹に針を刺して卵を1つだけ産みつけます。
その時から、このテントウムシは「テントウハラボソコマユバチ」の支配下に置かれてしまいます。
支配の方法は、卵を産みつける瞬間に針からタンパク質状のホルモンを注入します。
このホルモンにより、寄生されたテントウムシは主食であるアブラムシを通常の倍以上と大量に食べ、生涯をかけて「テントウハラボソコマユバチ」の幼虫にエネルギーを供給し続けるのです。
そして、大きく育った「テントウハラボソコマユバチ」の幼虫は、テントウムシの腹の筋から外へ出てテントウムシに守られるように繭を作り蛹になります。
この繭の大きさはテントウムシよりも大きく、テントウムシはその繭の上に乗るような形になり孵化するまで守り続けるのです。
さて、この「テントウハラボソコマユバチ」の何が賢いかということなのですが、実は寄生先である宿主のテントウムシにはこの自然界には天敵がいないからです、つまり最強とも無敵とも言われている昆虫なのです。
あの小さな奇麗な模様をしたテントウムシですが、実はカメレオンなどの爬虫類やカエルなどの両生類に捕食されると足を閉じて硬く丸まり足の付け根から猛毒を出すのです。
この猛毒により捕食者は吐き出してしまうのです、そして二度とテントウムシを捕食することをしなくなります。
テントウムシの奇麗な模様は、その警告の為だということが近年の研究で解ってきました。
毒ガエルに毒キノコなどの猛毒を持つ生物は奇麗な目立つ色や模様を持っています、これらも同様の警告の為の生態であることが解っています。
つまり、他の動物に捕食されにくい無敵の昆虫ということを知っていて、あえてテントウムシの成虫に寄生する「テントウハラボソコマユバチ」は実に賢いと言わざるを得ません。
何故なら、寄生した瞬間に最強の防御服を得たのと同じなのですから。
さてテントウムシは、植物の天敵であるアブラムシを捕食することで世界的にも益虫とされています。
その益虫の成虫に寄生する「テントウハラボソコマユバチ」は、人間にとって害虫なのでしょうか?
いえいえ、実は「テントウハラボソコマユバチ」はテントウムシを凌ぐほどの益虫なのです。
よく考えてみてください。
寄生されたテントウムシは、寄生されていないテントウムシの一生にして倍以上ものアブラムシを猛烈に捕食するのですから。