小型PAスピーカーの実力の程は?-1~ダイヤトーン DS-103V
2024年1月19日 08:00
オーディオ&ホームシアターの道楽において、常に安心感を与えてくれる存在がツール&予備機としての製品群です。
ツールはDIYの音出し試験に使ったり、設置の際の位置決めや音質調整用に使ったりと、何かと使用頻度が高くてそれなりの音質が求められます。
そしてすぐ壊れない頑丈なものでないと使えません、そんな意味ではこの業務用スピーカーであるダイヤトーンDS-103V(1990年発売、セットで5万円)は、長い期間を通して最高の頼れるツールスピーカーとなっています。
ダイヤトーンの業務用スピーカー DS-103V
壊れてないかの音出し試験中なのでベタ置きしてます。
ホームシアターが一つの市民権を得始めたのが1986年ごろです、当時はトールボーイ型スピーカーもサラウンド専用スピーカーも、勿論センタースピーカーやサブウーハーなどという今では当たり前のスピーカーがほとんど存在していません。
ですから、初期のホームシアター用スピーカーは自分で工夫して対応せざるを得ませんでした。
私はサラウンド用スピーカーとして当初はJBLの小型モニタースピーカーを対応させていましたが、設置方法に難を見い出してから1990年以降は業務用の小型スピーカーをサラウンド用スピーカーとして多用するようになりました。
そんな頃に購入したのがこのダイヤトーンDS-103VやDS-109(1987年発売、セットで3.4万円)などです。
このDS-103Vは小型ながら10Cmフルレンジと同じユニットのコーンだけを使った10Cmのパッシブラジエーターで構成された一応の密閉型(ラジエーターを使っているので正確な意味での密閉型とは異なる)、どこにも穴が無く外装も硬質プラスチックで一体成型された極めて頑丈な作りのスピーカーです。
飲食店やカラオケで水をかけられても壊れないように設計されたのでしょう、とにかく何をしても壊れた事がありません。
また、定格入力が80Wと10Cmフルレンジとしては驚異的な電流耐性を誇り、音圧も89dBと小型スピーカーとは思えない数値で、大音量でガンガン鳴らし込むには最適です。
と言うか、そもそもパッシブラジエーターを備えたスピーカーはある程度のパワーを入れないとパッシブラジエーター自体が上手く駆動せずに持ち味が出てきません。
サードギアで6,000~7,000回転というレッドゾーン近くまで引っ張るとターボが作動していきなり馬力が上がりだすという80年代のスカG(愛称・ジャパン)のようです。(これ、解る人いますかね?)
90年代に入るとサラウンド専用スピーカーなどが徐々に充実してきてDS-103VはDS-109と共にお役目御免となります。
その後、しばらく使っていなかったアンプの音出し確認用に、小型で使いやすかったのでツールとして現役復帰となったのです。
音が歪むようになったアンプのメンテナンス中に、電解コンデンサがいきなり飛んでスピーカーから爆音を発した事件があったのですが、そんな過電流が流れてもびくともしないのには驚きました。
そんな事が有って以来、益々安心して使えるツールスピーカーとしてオーディオ道楽封印するまで長期間愛用していました。
音質ですが、小音量時はパッシブラジエーター独特のこもったような音質の低音域ですが、音量を上げていくと中高音域の張りがあってサラウンド用やBGMシステムには充分使える音質になります。
小音量時の音は最悪でラジカセの音です、つまり低音域も高音域も伸びずに中音域のみが聞こえてきます。
逆に大音量で聴くと同じスピーカーとは思えない音質に変貌します、やはりパッシブラジエーターはある程度の音量でないと駄目ですね。
天井近くに設置して音量を上げていくと突然良い音で鳴りだすのでびっくりします、とても10Cm口径の小型スピーカーの音とは思えません。(天井近くに設置する場合は天地を逆にしてパッシブラジエーターの方を上にする)
普通にベタ置きではまったく良さが出ません、やはり業務用は部屋の隅の天井近くに浮かせるように設置して始めて力を発揮します。
その意味では、Boseの小型スピーカーを酷評する人は試しにベタ置きから天吊りに変えて試してほしいと思うのです、別物に豹変しますから。
そもそもBoseの小型スピーカー類はカラオケや飲食店向けの業務用です、それを無理くりホームオーディオに使ってベタ置きしては本来の音が出るはずもないのです。
Boseの小型スピーカーは必ず3つの壁の角に浮遊させるように吊るす事、この3つの壁の反射によって空間ハーモニックス効果で鳴らす特性になっているのです。
本来の使い方をせずして、音が悪いと酷評するのは如何なものでしょう。