2024年11月28日 08:00
音とは空気の振動です、つまり波の性質を持っているのです。
音の波とは水面に発生する波と同様に、同じ位相でぶつかると倍になり、逆の位相でぶつかるとキャンセルされて消滅します。
また、空気の振動ですから空気が通過する素材であれば通過し、音そのものが消滅することはありません。
これを応用したのが、サランネットというスピーカーの前面に貼るユニットを保護するネットです。
サランネットは空気を通す素材であれば、付けても付けなくても音質に影響しません。
ところが、このサランネットに使われる素材とほぼ同じ素材で作った綿状の物質は、綿の中に入り込んだ音を繊維で複雑に乱反射させて消滅させ合い音を外に出さなくしてしまいます。
これを応用したのが吸音材で、スピーカーエンクロージャーの中や、ホール等の壁に仕込まれています。
また、空気を通さない金属は小さな穴をたくさん開ければ音質にほとんど影響しないどころか、小さな穴から出た音の波の合成によって指向性が高まります。
これを応用したホーン型スピーカーやPA用のスピーカーシステムが存在します。
音の科学、極めれば極める程に不可解な現象を目の当たりにします。
大きな音で聴いている時に、窓の外から大きな音が聞こえてきたり下の階から天井を突くような音が聞こえてくる事があります。
これらは全て、スピーカーから出た音の反射によるもので、特定の周波数で起きます。
また、突然グラスや灰皿がビリビリ音を立てて揺れる事があります。
これは共振という現象で、グラスや灰皿の固有振動数にスピーカーから出た特定の周波数が共振して大きく振動させてしまう現象です。
爆音で聴いている際にサイドボードのガラスがヒビ割れた、飾り物が棚から落ちたなどの怪奇現象も音という空気振動が起こす共振現象で全てが解決します。
空気の振動である音、これを上手に操るのがオーディオ道楽の喜びでもあります。
反射と吸音、そして共振、これを理解してそれぞれを体感してくると、同じ部屋で同じコンポを使っても置き場所や他の家具との相乗効果で音質はまったく別次元の音に変化するのです。
音質はオーディオ製品が決めるのではなく、聴く部屋が決めてしまう場合が多いということを覚えておくと、オーディオの楽しみも倍増し奥深い存在となります。
高級なアンプやスピーカーを買っても、部屋の音環境が悪ければどんなに頑張っても限界があります。
それよりも、愉音を楽しむなら部屋やスピーカーの置き方に意識を向けることが肝要です。
CDやレコードに記録された音情報は、アンプやスピーカーを通して最終的にはアナログである空気の振動となります、それを耳が拾って音として脳が認識するわけです。
つまり、スピーカーから発せられた空気振動がどのように振舞い耳に届くのか、これが音響工学の基本であり原点なのです。